超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』
ダンジョンキーパー
―――翌日―――
「……と言うわけなんだ」
僕は放課後、大浴場にタナカくんを呼び出し、昨日の出来事を話した。
もちろん、ドラゴンという存在を公にするわけにもいかず、大幅にカットした編集した話である。
「まさか、忠告した当日に襲われるなんて……」と動揺を口するタナカくんへ僕は感謝を言葉を送った。
「あぁ、助かったよ。実は半信半疑だったけど……事前に話を聞いてなったら、何もできずにパニック状態になっていたと思う」
まぁ、結局は、何もできなかった事にはかわりないのだけど……
「いや、そうではなくて……」
「?」
「アレが幽霊じゃなくて、人間で…… 21層に踏み入れた人間を問答無用で襲い掛かっているとしたら……」
「下手に本物の幽霊よりも危険って事かい?」
「うん、何とかしないと」
「何とかしないとって言っても……」と僕は頭を捻って、悩んだ。
「やっぱり、タナカくんも幽霊少女を討伐する方向で考えている?」
「いや、彼女は幽霊じゃない。人間だからね。もっと穏便に出ていってもらいたい」
「……穏便か」とタナカくんの言葉を反復する。そのキーワードにドラゴンとの会話を思い出す。
「僕が優しい……ねぇ」
「え?何か言ったかい?」と訝しがるタナカくんに「あっ、いやなんでもない」と苦笑しながらも誤魔化した。
少しだけ…… ほんの少しだけ積極的に、解決に向けて動き出そうと思った。
昨日の幽霊少女の様子を思い出す。 会話すら成立していたかどうかすら怪しい。
交渉して出ていってもらうのは、正直言って難しいと思う。
……とすると、やっぱり力ずくで追い出す方法になるんじゃないだろうか?
力ずくでありながら、穏便に? 嗚呼、ダメだ。矛盾してるな。
兎にも角にも、彼女の目的は、自身の父親に関する事であり、そのためにダンジョンにいる。
だったら、父親探しを優先するべきではなかろうか?
それが僕の意見だったが、タナカくんは同意しなかった。
その理由は単純であり、合理的だった。
「まず、自分たちがすべき事は単独で動くことじゃないよ。まずは状況を広める事。先生への報告をおろそかにしてはいけない」
「ん?あぁ、確かにそうだね」
「闇雲に動いた結果、僕とサクラくんの消息が途絶えたら、誰もこの事件を知る人はいなくなるのだからね」
そう付け加えられたタナカくんの言葉に、自分の立ち位置を再認識して震えが起きた。
たぶん、恐怖からの震えだ。
――――職員室――――
「確かに、特殊な魔法なり、能力でダンジョンに忍び込んだ不届き者の前例は多いからなぁ」
まずはサンボル先生に状況報告を行った。 先生はいつもに増してやる気がないみたいだ。
片肘を机について頬杖であくびを1つ。
しかし、いきなり「本物の幽霊に襲われた」と言っていたら、サンボル先生はやる気がないどころか動きさえしなかっただろう。
最も、その報告を行っているのが、クラスの優等生で秀才で模範生のタナカくんの信頼度の高さはプラスに働いているのだろう。
もしかしたら理由は、断るのが面倒になったからじゃないだろうか?
「取りあえず、キーパーと連絡だな」とサンボル先生は立ち上がり、魔力を使う通信機を手にした。どうやら、どこかに連絡をするつもりのようだ。
「キーパーって?」僕は小声で隣のタナカくんへ聞いた。
「ダンジョンキーパーの事だと思うよ」
「あっ、そうか」
ダンジョンキーパーは教師とは別に、この学園に雇われている職員だ。
探索者育成を目的とする教師。
それに対して、ダンジョンの整備が職務としている職員もいる。
例えばダンジョンの10層。 あのオーク王の上洛まで安全地帯と言われた階層だ。
ダンジョンでありながら人の手で整備され、魔物の出現を拒む空間を作るのもダンジョンキーパーの仕事の1つ。今も10層では多くのダンジョンキーパー達の手で安全地帯の修復が進んでいる。
彼らは普段、ダンジョンに潜っていて、学園内にいる事の方が珍しい。
戦闘能力自体は、国中から集められたエリート探索者集団である教師たちには遠く及ばないまでも――――
ダンジョンに潜り続け、ダンジョンで生活する彼らは、教師陣よりも遥かにダンジョンに精通している。
「今、学園で待機しているダンジョンキーパーは1人か……あぁ、ゲンゴロウさんね」
通信機から『チーン』と高い音が鳴り、通信が終了した合図が聞こえた。
「……と言うわけなんだ」
僕は放課後、大浴場にタナカくんを呼び出し、昨日の出来事を話した。
もちろん、ドラゴンという存在を公にするわけにもいかず、大幅にカットした編集した話である。
「まさか、忠告した当日に襲われるなんて……」と動揺を口するタナカくんへ僕は感謝を言葉を送った。
「あぁ、助かったよ。実は半信半疑だったけど……事前に話を聞いてなったら、何もできずにパニック状態になっていたと思う」
まぁ、結局は、何もできなかった事にはかわりないのだけど……
「いや、そうではなくて……」
「?」
「アレが幽霊じゃなくて、人間で…… 21層に踏み入れた人間を問答無用で襲い掛かっているとしたら……」
「下手に本物の幽霊よりも危険って事かい?」
「うん、何とかしないと」
「何とかしないとって言っても……」と僕は頭を捻って、悩んだ。
「やっぱり、タナカくんも幽霊少女を討伐する方向で考えている?」
「いや、彼女は幽霊じゃない。人間だからね。もっと穏便に出ていってもらいたい」
「……穏便か」とタナカくんの言葉を反復する。そのキーワードにドラゴンとの会話を思い出す。
「僕が優しい……ねぇ」
「え?何か言ったかい?」と訝しがるタナカくんに「あっ、いやなんでもない」と苦笑しながらも誤魔化した。
少しだけ…… ほんの少しだけ積極的に、解決に向けて動き出そうと思った。
昨日の幽霊少女の様子を思い出す。 会話すら成立していたかどうかすら怪しい。
交渉して出ていってもらうのは、正直言って難しいと思う。
……とすると、やっぱり力ずくで追い出す方法になるんじゃないだろうか?
力ずくでありながら、穏便に? 嗚呼、ダメだ。矛盾してるな。
兎にも角にも、彼女の目的は、自身の父親に関する事であり、そのためにダンジョンにいる。
だったら、父親探しを優先するべきではなかろうか?
それが僕の意見だったが、タナカくんは同意しなかった。
その理由は単純であり、合理的だった。
「まず、自分たちがすべき事は単独で動くことじゃないよ。まずは状況を広める事。先生への報告をおろそかにしてはいけない」
「ん?あぁ、確かにそうだね」
「闇雲に動いた結果、僕とサクラくんの消息が途絶えたら、誰もこの事件を知る人はいなくなるのだからね」
そう付け加えられたタナカくんの言葉に、自分の立ち位置を再認識して震えが起きた。
たぶん、恐怖からの震えだ。
――――職員室――――
「確かに、特殊な魔法なり、能力でダンジョンに忍び込んだ不届き者の前例は多いからなぁ」
まずはサンボル先生に状況報告を行った。 先生はいつもに増してやる気がないみたいだ。
片肘を机について頬杖であくびを1つ。
しかし、いきなり「本物の幽霊に襲われた」と言っていたら、サンボル先生はやる気がないどころか動きさえしなかっただろう。
最も、その報告を行っているのが、クラスの優等生で秀才で模範生のタナカくんの信頼度の高さはプラスに働いているのだろう。
もしかしたら理由は、断るのが面倒になったからじゃないだろうか?
「取りあえず、キーパーと連絡だな」とサンボル先生は立ち上がり、魔力を使う通信機を手にした。どうやら、どこかに連絡をするつもりのようだ。
「キーパーって?」僕は小声で隣のタナカくんへ聞いた。
「ダンジョンキーパーの事だと思うよ」
「あっ、そうか」
ダンジョンキーパーは教師とは別に、この学園に雇われている職員だ。
探索者育成を目的とする教師。
それに対して、ダンジョンの整備が職務としている職員もいる。
例えばダンジョンの10層。 あのオーク王の上洛まで安全地帯と言われた階層だ。
ダンジョンでありながら人の手で整備され、魔物の出現を拒む空間を作るのもダンジョンキーパーの仕事の1つ。今も10層では多くのダンジョンキーパー達の手で安全地帯の修復が進んでいる。
彼らは普段、ダンジョンに潜っていて、学園内にいる事の方が珍しい。
戦闘能力自体は、国中から集められたエリート探索者集団である教師たちには遠く及ばないまでも――――
ダンジョンに潜り続け、ダンジョンで生活する彼らは、教師陣よりも遥かにダンジョンに精通している。
「今、学園で待機しているダンジョンキーパーは1人か……あぁ、ゲンゴロウさんね」
通信機から『チーン』と高い音が鳴り、通信が終了した合図が聞こえた。
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