超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』
ドラゴンの視点 その③
『ギフト』
魔法と同じように、肉体の内面から作られる力を利用したものである。
しかし、魔法とは違う。魔法のように個人差があれ、ある程度は学べば誰でも使える技術的な力ではなく……
もっと原始的な力。 そして、何より……魔法よりも強烈。
例えば、歴史に名前を残すほどの武人ならば、必ず1つ……多くて2つは『ギフト』を所持してる。
だったら、私は? ラスボスであるドラゴンの私は幾つ所持していると思う?
答えは……ありません。
『ギフト』を持っていないという意味ではなく、人間のように数で縛られる事はないと言う意味です。
おそらく、体内では1000個の『ギフト』が瞬時に生まれ、同時に同数が失われています。
私は目を閉じ、対峙する少女へ向けて、無手の構えを取りました。
この僅かな時間、新たに生まれた1000の『ギフト』の特殊効果を全て把握。
『ギフト』が失われないように、相手に有効だと思う300の『ギフト』を使用状態にして固定化。
さらに複数の『ギフト』の同時使用や『ギフト』の重ね掛け、それら戦闘に使用するコンボを組み立てました。 それは、無限に等しい攻撃方法の誕生と同意語です。
「逃げた方がいいですよ」
そう言われた彼女は「ん?」と不思議そうな表情を浮かべている。
どうやら、事の重大さに気がついていないみたいようですね。
「あなたが何者で、なぜサクラさんを襲ったのか?私にはわかりませんが、私の内面は怒り心頭で大荒れです。しかし、サクラさんに明確な危害を加えたわけではないので、そのまま死刑執行というには大人げないと思いませんか?だから、逃げれば――――― 追いかけませんよ?」
私は暴発限界の体と感情を抑え込みます。
一時の感情に身を任せて、殺戮と凌辱を行う。それは知性を有す者の行いではありません。
だから――――
「いいですか?まずは、結界を利用して、あなたを逃げれないように覆います。さらにあなたに実像を与えます。精巧な肉体を作り、その内部へあなたを封印して痛覚を開通させます。いいですか?まだ、聞く必要ありますか?……ここからは拷問ですよ?」
少しだけ、解放した感情を少女に向けました。
ようやく、自分の置かれている立場というものを理解したのでしょうか?
一瞬、少女の表情が崩れ、怯えが見えました。 彼女の姿は歪み、消えていきます。
「今日の所はさようならだよ。お姉さんは怖い。でも、お兄さんは優しい?また、今度は遊ぼうよ」
「……」と私は怒気を維持したまま、少女を軽く睨みつけました。
少女は、もう一度だけ「ビクッ」と怯えを見せて消え去ってしまいました。
姿だけではない、気配も魔力の流れも消滅しています。
どうやら、私の警告が通じたみたいです。
よかった。よかった。
私は倒れたサクラさんを抱き起します。
「おーい サクラさん。起きてくださいよぉ」
へんじがない。どうやら、ただの失神のようだ。
「ねぇ、あなた?お・き・て・く・だ・さ・い」
軽く揺さぶっても、軽く耳元へ息を吹きかけても、起きる様子はありません。
残念。しかし、同時にチャンスでもあります。 寝ているの良い事にサクラさんを楽しみます。
内容は公にできない、淑女の遊びです。
「ふぅ……」
サクラさんを楽しみながら、同時に回復系の魔法を使います。
私の分析能力でサクラせさんの状態の確認を行います。
「意識を失っているだけで……よし、問題はないみたいですね」
さて、どうしましょう?
このまま、この場所に放置するのは問題外として……ダンジョンから出た方がいいでしょうね。
私は、大量の魔力を外部へ放出していきます。
この場所へ来た時と同様に、時空の歪みを作り、我が家への帰り道を作りました。
最初の時とは違って、精神的な余裕があるからでしょうか? それとも2回目の作業でコツがつかめたのでしょうか? 随分と簡単に扉が具現化されました。
扉の先には、娘が待っている家があります。
「それでは、サクラさん。今日の冒険は、これまでとしておきましょうね」
意識のないサクラさんへ、できるだけ優しく語りかけて、扉の中へ――――
ダンジョンから日常へ帰るとしましょう。
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