幽霊になって弟のお世話をしています!

宮藤小夜

幽霊になって弟のお世話をしています!【後編】

ーそしてあれから5年後ー

そう、私が死んでから5年がたちました。
あの後、私と弟がどうなったかというと・・


「ねえさま?どうしたの?」

(きゃぁぁぁぁ!可愛いわ!なにこの子!天使!?)

きょとん、としたとてつもなく可愛い顔でこちらを見てるのは私の弟。名前はエルリック・レジェスティ・ローグ。私はエルって呼んでいるの。エルにはやっぱり私が見えていて、ねえさまと呼んで慕ってくれてる。あぁ、ほんっとに可愛い!あの時呪わなくてよかったわ!そもそもできなかったけどね!

あとね、エルはとっても天才なのよ!私が小さい頃から必死で学んでいた王になるための勉強を、この年で全て理解しているの!すごいでしょ!ポロッ・・はっ!な、泣いてなんかないわよ?これはあれよ!あ、あくびよ!・・・・ぐすん。

あっ、ちなみに王妃様はこのとっっても可愛いエルを知らないのよ?何故知っているのって?実はね、ほんとは会ってる所を見ないでって言われていたのだけれど、こっそりと王妃様とエルが話してる所を見ちゃったの。その時、エルが王妃様の前では無表情で無機質な喋り片をしていたわ。私、とてもびっくりしてしまったの。だっていつも私の前ではいつも笑顔なんだもの。だからほんの少しだけあの時のエルは怖かったわ。あっ、これ内緒よ?


私が色々と回想していると、横からつんっ、と服を引っ張られて、下を見るとエルがそわそわしながらこちらを見ていた。

「あら?どうしたの?エル」
「あのね!ねえさま、その・・い、いっしょにおそといきたいな・・ダメ?」
「っ貴方とならどこへでも!」

頬がほんのりと赤く染まり、上目遣いで首が横にこてんッて!!あああ可愛い!エルのためなら姉様はなんでもできるわ!国だろうと世界だろうと征服してあげる!どんとこいよ!うふふ♪

「ねえさま!て、つないでこ?」
「・・っええ!!喜んで!」

微笑みあい、ぎゅっと手をつないで、私たちは庭園へ向かった。




「わぁぁー!!たくさんきれーだねー!!」
「ほんとうに・・すごいわね」

庭園についたとき、キラキラとなにかが光っていた。よく見ると色とりどりの花が咲き乱れ、水やりのあとの水滴だろうか?太陽の光を浴びて反射し、光っていた。さっきの光はこれだったのね。・・とてもきれい。

横を見ると、エルがはわ~っとした顔で花を見ていた。・・きゅんっ。

「うふふ、エルは可愛いわねぇ」
「むぅ、僕かわいくないもん!ねえさまのほうがとーってもかわいいもん!」

かぁぁぁ///か、可愛いなんて…エルの方がと〜っっっっっても!!可愛いわよ!!!!ああでも、今、顔が真っ赤な自信があるわ。な、何か他の話題を・・あ!

「ねぇエル。この赤い花、知ってるかしら?」

セレシアが指をさした先には、燃えているような、濃い鮮やかな小さな赤が群れている花があった。

「ううん、しらない・・」

エルがそう言うと、セレシアは穏やかな笑みを浮かべて喋りだした。

「あのね、この花はサルビアと言うのよ。私の一番好きな花。でね、花言葉は家族愛なの。まぁ、他にもあるのだけれどね。前はこの花好きじゃなかったのだけれど、エルが生まれてきてくれて、一緒に過ごして、家族っていいなぁって初めて思えたの。だからありがとう、エル」

お父様と話したことはほとんどないし、お母様は私が物心つくまえに死んでしまったし・・ね。

「っねえさま!」
「わっ、・・えっと、どうしたの?エル」

エルは真剣な顔をして、セレシアの両手を握った。そしてーー。

「ぼくもねえさまとかぞくなのうれしいよ!だからねえさま、ぼくのねえさまでありがとう!これからも、ずっといっしょにいてね!やくそくだよ?」

エルにそう言われて、胸が嬉しさで満たされ、ポロッと、少しだけ目から涙が溢れてしまった。セレシアはエルを抱き締めると大声で言った。

「っっっ!エル、大好きよ!!」





私がエルに抱き付いて泣いてしまった後、エルはねえさまのすきなものはぼくもすき!といって、サルビアの花を摘んで侍女に部屋に飾らせた。それを眺めながら二人で話していると、コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。

「なんだ」
「エルリック様。王妃様がお呼びです」
「わかった。すぐにいくからすこしまっていろ」

また、あの顔・・。エルを見ていると、それに気付いたのか、すぐに満面の可愛い笑顔で私に話しかけてきた。

「ねえさま!ほんとはものすっごくいきたくないけど、あとがめんどくさいからいってくるね!」

・・見間違いかしら?
笑顔なんだけれど、背後に黒いなにかが見えた気が・・。

「ぼくがかえってきたら、またいっしょにおはなししてね!」
「・・っあ、ええ、楽しみにしてるわ。行ってらっしゃい。エル」





うふふ、今日はとても楽しかったわ。
エルはとても可愛かったし。まぁ、いつもだけれど!
帰ってきたらなんのお話しをしようかしら!
とっても楽しみだわ!エルが来る前に何か考えておきましょう。好きなお菓子は?好きな動物は?好きな・・・




ー ニ時間後 ー



エル、遅いわねぇ。ふわあぁ、・・眠い。少しだけ、いいわよね?



・・おやすみなさい、エル。










タッタッタッバタッッ!

「ただいま!おそくなってごめんね!ねえさっ・・・・え?」

エルが帰ってきたときには、部屋には誰もいなかった。

「・・ねえさま?」

呆然と名を呼び、あたりを見渡す。奥にある机の上には、セレシアが好きだといったサルビアの花がただ、ゆらゆらと風に揺れていたー。

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