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影が薄いけど魔法使いやっています

りょう

第37話種族の垣根を越えて 前編

「道がない」

「もしかして私達、分断されたの?」

「多分構造が変わった」

 ユウマ達に一階の捜索を任せ、ハルカと一緒に二階の探索をしていた私は、途中で元来た道がなくなっていた事に気がついた。

「ど、どうするの? このままここから出られないとかないよね?」

「多分どこかで繋がっている」

 少し怯え気味なハルカの先頭に立って、私が先へと進む。

(モンスターハウス、まさか存在するなんて)

 噂では聞いた事があった。魔物が住む家があって、その家自体も魔物という話を。ただそれはあくまで噂に過ぎなかったけど、まさかこんな形で遭遇するなんて。

(ユウマ達、大丈夫かな)

 分断された以上二人の事が心配になる。二人の事だから、無事なのは分かっているけど、ハルカのためにも早くに合流したほうがいい。

「ねえアリス、こんな時に聞く事じゃないと思うけど、一つ聞いていい?」

「何?」

 怖さを和らげるためにハルカが話しかけてくる。先程から声の端々が震えているけど、そんな状態で何を聞いてくるのかと思っていると、

「アリスはユウマの事どう思っているの?」

 何とも不思議な事を聞いてきた。少し前にもセレナに同じような事を聞かれたような気がするけど、どうして私の仲間はそういう事ばかり聞いてくるのか。

「どうって、どういう事?」

「最近色々あったから、何考えているのかなって思って」

「それを言うならハルカだって同じ」

「わ、わ、私は別に何とも思ってないし。昨日だって別に、で、デートだなんて思ってないし」

「デートしようって誘ってた」

「ち、ち、違うわよ」

 何故か聞いてきた本人の方が動揺するという不思議な事が起きながらも、私は歩みを進める。

 ちなみにだけど、私は決して動揺なんてしない。確かに色々な事があったけど、そこはちゃんと線引いている。

「男の中ではマシな人間、くらいにしか思ってない」

「アリスがどうしてそこまで男嫌いなのか私には分からないけど、そんなに嫌なの?」

「男は嫌い。ユウマがマシなだけ」

「へぇ」

 私の横まで歩いてきたハルカは、こちらをずっと見ながらニヤニヤしてる。

「ハルカ、気持ち悪い」

「酷っ!?」

 私達二人の家の捜索はまだまだ続く。

 ■□■□■□
 二階に上がれないことが分かった以上、僕とセレナは一階を探すしかないのだけど、ほぼ調べつくしてしまった為にどうしようか悩んでいた。

「ねえユウマ、そもそもこの魔物の核は存在するの? 家を壊さないと倒さないとか」

「うーん、そうなのかな。でもこうして建物の構造が変わった以上、何かあるんじゃないかな」

 不動産の人はここは人が住める家だと言っていた。なら考えられるのは、この家が魔物というわけではなく何らかの原因で魔物に変わってしまった可能性もある。

「ね、ねえユウマ、さっきから何か音がしない?」

 そんなと考えているとセレナが僕の腕を掴んでそんな事を言ってきた。僅かに触れた肌の感触にドキッとしながらも、僕は聞き耳をたてる。
 すると少し先から何かが歩いてくる音がした。

「アリス達かな?」

「足音一つだよ?」

「じゃあ他に誰かいるの?」

 僕達はあえて動かずにその足音が近づいてくるのを待つ。そして奥の角からその姿が現れる。

「え?」

「お客さん?」

 現れたのは赤いワンピースを着た一人の女の子。僕達は身構えてしまう。こんな家に一人でいる女の子。魔物の罠かと思えてしまうくらい、怪しかった。

「君は誰?」

「お兄ちゃん達こそ誰?」

 こちらに寄ってくる女の子。僕は一応自己紹介をしたものの、少女は名乗らずに僕達の目の前までやってきた。

「お兄ちゃん達は私を倒しにきたの?」

「倒しにきた?」

「この家は私の仲間が住んでいるの。お兄ちゃん達はさっき私の仲間、倒していた」

「仲間って事は君も魔物なの?」

「マモノ? 私マモノ?」

 本当に言葉の意味を理解していないような顔をする女の子。確かに見た目はどう見ても人間だし、魔物には到底見えないけど、ならどうして人間の女の子がこの家に?

「ユウマ、これってどういう」

「分からない。でもこの子が鍵を握っているのかもしれない」

「え?」

「ねえ、この家は変な構造しているけど、何でなの?」

「それはこの家の中心にいる私のお母さんが魔法でそうしてるの。お兄ちゃん達みたいな人のための対策だって」

「お母さん? その人は人間なの?」

「ニンゲン? 私分からない」

 再び困惑する女の子。この子の言う母親が、この家の構造を変える力があるなら、もしかしたらそれがこの家の核。つまりこのモンスターハウスの本体の可能性がある。

 でもそれを破壊するということは、この子の母親を倒すという事になる。

「ねえ、よかったらそこまで僕達を案内してもらえないかな。僕達仲間ともはぐれて困っているんだ」

「お兄ちゃん達、お母さんも私と一緒に殺すの?」

「それは……」

 この目で見てみないと分からないとしか言えない。彼女の母親らしき人が、果たしてどちら側なのか見てみないと、判断が難しい。

「殺さないからお姉ちゃん達を連れて行ってくれないかな?」

 返答に困る僕に対して、セレナが堂々とそう答えた。

「本当? じゃあ案内するー」

 女の子は陽気に歩き出す。僕とセレナはそれについて行くのだけど、やはり少しだけ心が痛んだ。

(もし彼女の母親を倒さなければならなかったら、その時僕は……)

 この剣を手に取れるのだろうか。


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