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影が薄いけど魔法使いやっています

りょう

第30話仲間の形

 その後僕は肝心の話が聞けないものの、この歳でかくれんぼを楽しんだ。特に面白かったのが、

「ハルカはあそこに隠れた」

「ちょっと何勝手にか教えてるの?!」

 何故か行われた味方同士の裏切りあい。特にアリスに関しては油断できず、鬼側からすればとてもありがたいのだが、隠れる側にとってはえらい迷惑だった。
 あとヒアラさんがワープを使って街の外に隠れるなど卑怯な手を使ったりして、皆に怒られたりとにかく楽しんだ。
 そして一番楽しんでいたのは子供のラティで、日が暮れた頃にはセレナにおぶられながら寝息を立てていた。

「寝ちゃったね、ラティちゃん」

「一番はしゃいでいたからね」

「私も楽しかった」

「いい思い出になったねぇ〜」

 ラティが寝てしまったという事で、かくれんぼは終わり、僕達はあの森へと帰ってきた。

「今日は何度もお世話になりました」

「いいのいいの、じゃあワープでイヅチちゃんのところに送るから、また来てねぇ」

 そしてイヅチ様の家に帰る時も、ヒアラさんの魔法のワープで帰してもらう。
 はずだったのだけれど、

「あれヒアラさん、どうして僕だけ」

「ユウマ、私も」

 何故か僕とアリスだけワープされていない。失敗したのかと思ったのだけど、

「二人にはちょっと残ってもらいたかったの」

 急に真面目な口調になって僕達にそう告げたヒアラさんを見て、意図的にやった事なのだと気がついた。

 ーーもしかして僕が異世界の人間だって、ばれた?

 ふとそんな事を考えてしまう。でもそれなら僕一人だけでいいのに、どうしてアリスまで……。

「アリスはともかく、ユウマ君は分からないよね? どうして自分が残されたのか」

「はい。と言うより、僕の方に原因があるのかと思いました」

「と言うと?」

「あ、いえ、何でもありません」

 どうやらそういう事でもないらしい。つまりアリスの話で、僕が残されたという事になる。

(アリスの話って、何かあったっけ)

 かくれんぼの時にハルカが何かを言いかけた事以外に、特に無さそうな気もするけど……。

「ごめんユウマ」

 ふとアリスがそんな言葉をつぶやいたのが聞こえる。アリスが何を謝ったのか僕にはサッパリ分からない。

「でも私は間違った事はしていないと思ってる」

「やっぱりまだそう思っているのね。昼間の反応をみて分かった」

「私は守らなければならないものがある。ただそれだけ。あなたには関係ない」

「関係ない、ならそこにいるユウマさんも同じ?」

「え?」

 突然僕の方に話を振られたので、動揺する。さっきから二人がどんな会話をしているのか僕には分からない。

 間違った事?

 アリスが何かを……。

「ユウマはーーこの話には関係ない。だからユウマに何かを話すつもりもない」

「アリス、どうして」

「その選択、変えるつもりはないの?」

「元より」

 急に突き放された僕は、もう何が何だか分からなくなっていた。確かに僕はまだ出会って一ヶ月しか経っていない仲間もしれないけど、色んな事を一緒に経験して少しでも距離が近づいたと思っていた。

「なら、こんな事をしても構わないよね、アリス」

  ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
 アリスの最後の言葉を聞いたヒアラさんは、何かの魔法を唱える。

「何を」

 したとアリスが言う前に、それは突然として起きた。
 息苦しい。
 何かが体から抜けて行く感覚。
 何か大事なものを奪われる感覚。
 僕の体を一度にそれら全てが襲いかかり、僕は立ち上がれなくなる。

「ユウマ!」

「本当はこんな事なんてする必要もなかった。だけど光と闇の魔法がいつしか重なってしまった時、確実に世界は滅ぶ。だからその前に、片方を排除する」

「なっ、世界が崩壊ってどういう……」

「その意味は知らなくていいよ。だってもうあなたは」

「やめ……て」

「アリス?」

「やめて!」

 アリスが今までにないくらい感情的な声を出す。僕はというと、ヒアラさんの魔法の反動で、立っていられなくなりその場に倒れ込んでしまう。
 ヒアラさんはというと、僕にかけていた魔法をやめ、アリスの元へと無言で立ち寄り、アリスを冷たい目で見ながらこう言った。

「やめるのはどっちか分かって言っているの?! 後悔したくないって気持ちも分かる。だけどあなたはその力で人を殺しているの、分かる?」

「でもそれは不幸な事故で」

 アリスを僕は擁護する。彼女が死の人形使いと呼ばれているのは不幸が重なっての事だと僕はこの前証明した。そしてアリスはそれをありがとうって言ってくれた。

 だからそれでいいじゃないか。

 他の知りたくない事実を知らなくたっていいじゃないか。

「禁忌の属性魔法、闇魔法。それは全てのものを闇に包み込む魔法。生命も木々でさえも滅ぼす危険な魔法。
 アリスははそれを人形との契約によって使えるようにした。そしてそれが」

 そこで言葉を詰まらずヒアラさん。何か辛そうな顔をしていて、僕とアリスは黙っている。

「それがーー私の弟子の命を奪ったの。あなたの親友でもある子のね。そして今もそれを平然として使おうとしているでしょ? あなたはその人形と魔法で、どれだけの命を奪うつもりなの?」

「私にはそんなつもりはない」

「なら何度も言うけど、その魔法と関わる人形を捨てて。もしあなたにそのつもりがないなら、ね」

 そう言うと何故かヒアラさんはワープの魔法でどこかへと消えていってしまった。

 残されたのは僕とアリスの二人。

 ワープを使えるヒアラさんがいない為、僕達はこの場所で一晩を過ごす事になってしまった。

  ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
 残された僕達を待っていたのは、とにかく気まづい空気。おまけに僕は先程の件で、まだ体の感覚が戻っておらず、なかなか動かせない。
 アリスはといえば、自分の人形をずっと見つめているだけだ。

『あの魔法使い、多分本気でユウマから魔法を奪うつもりだったわよ』

 ふと頭の中に声が聞こえる。僕はそれに対して、アリスに聞こえない程度の声で答えた。

「どうしてヒアラさんはそこまでして」

『簡単な話、世界を守る為』

「世界を守る?」

『いつかは分かると思う、あなたも。この世界を覆う闇とそれを照らす光、その二つが何をこの世界にもたらすのか』

「シレナはそれを知っているの?」

『知りたくなくても知っているの。それにこうなるなら、あなたに光の魔法を授けたのは、ある意味では失敗だったのかもしれない』

「ちょっ、それはどういう」

 根本的な事を否定され、僕は思わず聞き返すがそれ以降シレナからの声は聞こえなくなってしまった。

(神様があんな事言って、大丈夫なのかな……)

 でも僕には未だに分からない。どうしてヒアラさんはあそこまでアリスに冷たく当たったのか、そしてアリスはそこまでして何を貫き通したいのか。
 分からない事だらけだった。


「ユウマ」

 シレナとの会話を終えてからしばらく、ずっと黙っていたアリスが急に僕の名前を呼んだ。

「どうしたの、アリス」

「ユウマは」

「え?」

「ユウマはーー私とパーティを組むのは嫌?」

 あまりに唐突な質問。恐らくさっきのヒアラさんの言葉が気になっているのかもしれない。でも僕の答えは決まっている。

「嫌なわけないよ。まあ毎日毒を吐かれるのは辛いけど」

「なら私の言う事を聞いてくれる?」

「言う事?」

「私を殺して」

「え?」

 一瞬何を言ったか分からなかった。でも彼女は今確かにこう言った。
 殺してと。

「そんな事できるわけないよ」

「でもそれでしか私は罪を償えない。あの魔法使いが言う通り、私はこの力で沢山の人を傷つけてきた。数え切れないくらいに」

「でもそれは」

「それだけじゃないの」

「それだけじゃない?」

「私が死の人形使いと呼ばれている理由、それだけじゃないの」

 その言葉と共に、アリスから……正確には彼女人形から黒いオーラが放たれる。それは今日僕が見たあの闇と同じものだった。

「あ、アリス、それは」

「私は全てを失ったあの時、この魔法を授かった。この力がどんなものなのかも知ってる。だから人をずっと遠ざけてきた。そうすれば誰かを失わずに済むから」

 今までにないくらい喋るアリス。多分ずっと我慢してきたのだろう。僕にはまだその魔法がどのようなものなのかは分からない。世界を破壊しかねないものなら、確かに危険なものなのかもしれない。

 だけど、

「でももうその人生も終わりにしたい。あの魔法使いが言う通り、これは世界にいらないもの。だから私もろともその光で消して」

「そんな事できないよ!」

「お願いユウマ」

 アリスはアリスだ。僕はそれを信じ続けるし、誰かが否定し続けようとも僕は彼女を受け入れる。

「いつしか私が世界を壊す前に……終わらせて」

「僕はまだ無知な事が多い。もしかしたら今から僕がしようとする事も間違っているかもしれない」

 僕は何とか立ち上がり、アリスの元へと向かう。彼女が心から思っている本当の気持ちを受け入れるために。

「でも、僕はそれを胸を張って言うよ」

 僕は彼女の目の前にやってくる。彼女を纏っているのは、闇の魔法と思われるもの。だから僕は自分の手にわずかに光の魔法を宿し、その手を闇の中へ入れ、彼女の手をつかんだ。

「何をしてるの? 早く私をこの魔法ごと」

「そんな事はしないよ。そんな事、僕も……セレナもハルカも望んでいないから」

「ーーえ?」

 家の外でこそこそしている二つの影に呼びかけるように僕は言う。それに気づいたのか、アリスも少し驚いた反応を見せた。

「まだ僕達は出会って一ヶ月の仲なのかもしれない。だからアリスの事は知らない事が多いから、勝手な事を言っているかもしれない」

 そして僕は掴んだ腕を引き寄せた。僕の身体も闇に包まれる。けどそれをうまく光の魔法で相殺しながら、僕は彼女に告げた。

「でもこれだけは分かってほしいんだ。毒舌でも闇の魔法を使っていたとしても、アリスは僕達の大切な仲間だって」

「ユウ……マ……」

「すぐに話さなくてもいい。でもこれから少しずつ僕達はアリスの事を知っていくから、今はアリスの事も僕達の事を受け入れてほしいんだ」

「う……うぅ……」

 僕の言葉と共にアリスから闇が無くなり、そして彼女はその場に崩れ落ちた。

「本当に……いいの?」

「うん。ヒアラさんが何て言うか分からないけど、僕達は僕達の在り方でこの先も一緒にパーティでいよう」

「ユウマーーありがとう」

 僕はこの夜に起きた事を忘れない。それはきっとアリスも同じだろう。外にいるセレナ達も。
 多くは言葉を交わさなかったけど、僕達は改めてこの四人のパーティの形を再認識した。

 とても歪な形でもいい。

 世界から嫌われる事になってもいい。

 それでもこの仲間の形は、きっと崩れない。何かあったら今日みたいに支え合えばいいのだから。

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