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影が薄いけど魔法使いやっています

りょう

第28話母は子を想う

「ユウマよ、裸になれ」

 事は遡る事数分前。セレナ達の到着を待つ間、落ち着かない空気の中でも何とか会話をして空間を保っていた。
 けどそれを破ったのが、イヅチ様(名前はさっき教えてもらった)の一言。

「ーーえ? 今なんて」

「だから裸になれと言うとる。ならぬなら、我が脱がしてやろうぞ」

「いやだからどうして急に」

「どこの国の言葉でもあるじゃろ、『脱がぬなら 脱がしてしまえ ホトトギス』とな」

「そんな言葉は絶対にないと思いますけど?!」

 どう紆余曲折したらそんな言葉が生まれるんだ。織田信長さんも真っ青だよ。

「とにかく脱げ。今のお主にはそれ以外の選択肢などあらぬ」

「拒否する選択肢はないんですか!」

「ない」

 と言うと同時に、イヅチ様は何かを唱える。

 そして数秒後。

 僕の服は跡形もなく引き裂かれた。

「いやん」

「何でそれをイヅチ様が言うんですか?」

「気分じゃ気分。それよりいい体しておるのう、ほれラティも一緒に」

「親子で何をしようとしているんですか!?」

 先程まで重苦しかった空気は、カオスな空間に変わってしまった。

 裸体にされた僕。

 それをマジマジと見る小学生と背がほとんど変わらない雷神様。

 そしてその光景に対して、何も言わずにじっと見ているラティ。

 この光景、他の人からどうなるか。

「ゆ、ゆ、ユウマが小さい子に裸を」

 こうなって、

「落ち着いてセレナ、これは違うから」

「そこ、小さい言うでない。これからユウマと我は宵の伽に入るのじゃ。邪魔するでない」

「ほらやっぱり。まさかラティちゃんにまで手を出すつもりじゃ」

 こうなり、

「とりあえずセレナは落ち着こう。ちゃんと話を聞いて」

「帰ろうハルカ」

「ユウマ、今までパーティを組んでありがとうね」

「二人も本当に待って! お願いだから」

 こうなりました。

「この人は雷神様だから! 僕は脱がされただけだから!」

「こんな小さい子を手篭めにしようなんて……。しかも雷神様って神様でしょ? もう取り返しのつかないことをーー雷神様?」

 とにかくおかしな状況になってしまうので、皆さんも修羅場になった時は、気をつけましょう。
 一番大事なことは落ち着いて話を聞いてもらうことです。

  ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
「ユウマが」

「三日間だけ」

「イヅチ様の婿にー?」

 ようやく全員が落ち着いて話ができるようになってから五分後、僕は改めて三人にイヅチ様から頼まれた事を話した。

「む、婿ってつまり結婚でしょ?」

「そこの線引きはどうなっているか僕には分からないけど、そうなるのかな」

「結婚ーーユウマにはまだ早い」

「何でそれをアリスが決めるの?」

 別に結婚するわけではないけどさ。

「ユウマは我の婿にするには、よい人材じゃ。別に生涯結婚しろとは言っておらん。三日でよいのじゃ」

 イヅチ様はあの痺れるお茶を僕達に出しながら言う。そういえば僕も気になっていた事が一つあった。

「そういえばそもそもどうして三日間なんですか? 何か特別な事があるから、とかですか?」

「そういえばまだ説明しておらんかったのう。この度ユウマに我の婿になってもらいたい訳は、実は娘にあってのう」

「ラティに?」

「今見ての通りわかると思うが、この子には訳あって父親がおらぬ。主らと触れ合って今は元気じゃが、その前までは殆ど喋らなくてのう」

「それが父親がいない事と関係あるって事ですか?」

「分からぬ。じゃがラティに寂しい思いをさせているのも確かじゃ」

 つまりイヅチ様の言葉を要約すると、三日間僕が彼女の父親になって、ラティを元気付けて欲しいという事らしい。

(でもその原因の一つって……)

 イヅチ様本人にもあると僕は思う。彼女は言っていた。いつも怒ってばかりの母親が嫌いだと。だから家を飛び出したと。

 なら今彼女に必要な事って……。

「でもどうしてそこまでしようとするんですか?」

 ハルカが尋ねる。確か最初試練だとかなんだとか言っていたけど、こんな回りくどい事をしなくてもよかったのでは? と思う。
 それに子供のためとはいえ無理しすぎなのではと思ってしまう。

「それもこれも、この子がいつか我の後を継いだ時のためでもある。そういう意味でなら、理解してくれるかのう」

「ああ、そういう事なら」

 ラティがイヅチ様の子供なら、ラティもいつしか雷神にならなければならい。だからその時のためにも、今この時からできる事はしておきたいのだろう。

「それなら僕達で協力するよね、皆」

「そういう事情なら、ユウマ一人に任せられないし私達も手伝うよ」

「子供のための人形用意する」

「わ、私子供の相手できるか分からないけど、協力する」

 僕の言葉に各々が反応する。でも誰一人として反対するものはいなく、満場一致で親子の協力をする事になった。

「手間をかけるが我の大事な一人娘を頼む」

 改めて頭を下げてくるイヅチ様。
 最初は雷神と聞いてとても怖いイメージを持っていたけど、イヅチ様はとても子供想いのいい母親だった。だから僕達も自然と協力をする事を決めた。

(何かいいな、これ。異世界っぽくて)

 まさか神様にこうして頼み事をされるとは思っていなかったけど、これもやっぱり異世界らしさなのかと思う。

『ねえ私を忘れていない? 最近出番がないから本当に忘れていない?』

 もう一人の神様とは大違いだ。

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