影が薄いけど魔法使いやっています
第20話前夜の独白
その後も祭りの準備は順調に進み、何とか水神祭には間に合うところまできていた。
「ふう」
二日目ももう直ぐ終わり、明日からは水神祭が始まる。僕達の力でどれだけ盛り上げられるかは分からない。けどやれる事は精一杯やったし、あとは明日にならないと分からない。
「寝ないの?」
皆が明日に向けて寝静まった中、なかなか眠れなかった僕が、外でボーッと空を眺めていると後ろから声が聞こえた。
「こういう事をするのは初めてだから、緊張してなかなか寝付けないんだよ。アリスは?」
「人形の調節してた。もうすぐ寝る」
「本当に使うつもりなんだ、人形」
「盛り上がる、絶対」
「その自信、僕にも分けて欲しいよ」
あの人形見てお客さんが減ってしまうか少しだけ心配だ。
「そういえばさ、ここに来た時に聞きそびれたけど、どうしてアリスは今回の依頼、引き受けたの?」
僕はずっと思っていた疑問を口にする。アリスはそれには答えずに、何故か無言で僕の隣に来た。
「ユウマは知りたい? 私の事」
「え、いや、まあ、知りたいといえば知りたいかな」
あの時何かを言いかけていたので、それを知りたい気持ちはある。
『フュリーナは私の……』
そこまで彼女は言っていた。恐らく次に繋がる言葉は故郷かもしくはお世話になった場所という言葉に繋がるだろうけど、その真意は分からない。
「知りたいなら教える。フュリーナは私の」
「私の?」
「私達の思い出の地。ここで私は沢山の思い出を作らせてもらった、だから恩返しがしたい」
「思い出の地、か。じゃあ水神祭にも」
「何度か参加した事がある」
「へえ」
いつものような毒づいた言葉ではなく、どこか懐かしげで、でも少しだけ悲しげな顔をして話すアリス。
彼女がそこまで言うのなら、よほどの場所なのだろうけど、僕には一つだけ引っかかる事があった。
「私達、ってもう一人誰かいたの?」
「……」
「アリス?」
多分これ以上は語りたくないのだろう、それより先の言葉をアリスは発しない。彼女もまた、セリスやハルカと同じように何かを抱えて生きているのかもしれない。
だから僕はそこには触れない。誰だって何かを抱えて生きているのだから。
こんな僕だって……。
「ユウマ」
「ん?」
「ユウマは私みたいな人間は嫌い?」
ふとアリスはそんな事を聞いてきた。まさか彼女からそんな事を聞かれるとは思っていなかった僕は、一瞬戸惑うもすぐに答える。
「嫌いじゃないよ。少しキツイ所はあるけど、それもアリスだって僕は思っているから」
「でも私は、ユウマも含めてこの世界中の男の人が全員嫌い」
「知ってる」
「それでも嫌いじゃないの?」
「うん。僕は仲間だからね」
アリスが何の意図があってこんな事を聞いてきたのかは分からない。けど恐らくその根には、きっとさっきの話が関係しているのかもしれない。
「仲間……」
「アリス?」
「寝る。おやすみユウマ」
「あ、ちょっ」
強制的に会話は終了され、アリスは自分の寝床へと戻っていってしまう。何とも不自然すぎる彼女に、僕は何処となく違和感を感じていた。
(これはツンデレがデレた時と一緒なのかな)
流石にそれはないか。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
「ユウマと何を話ししていたの?」
寝室へ戻ると、いつから起きていたのかセリナが話しかけてきた。
「少し昔話」
「昔話、ねえ。珍しい事もあるのね」
何故か私を見ながらニヤニヤしているセレナ。何かおかしな事でも言ったのだろうか。
「何?」
「いやぁ、アリスも変わったなと思って」
「変わった? 私が?」
「だってアリスってそういうの話すの嫌いな方でしょ? なのにユウマにだけは話したんだなと思って」
「……」
私はベッドに横になり、無言で布団にくるまる。
(私が……変わった?)
そんな事はない。私は相変わらず男が嫌いだ。それは彼に対しても同じ事が言える。出会って一ヶ月ほどしか経っていないのに、いくら酷い事を言っても、彼は勝手に私に構ってくるだけだ。
だから決して、私が彼にどうこう思っているわけではない。
「……セレナは、ユウマの事をどう思っているの?」
「え? それは大切な仲間だって思っているよ」
「私も?」
「勿論。ハルカだってそうだし、私達は一つのパーティであると同時に、大切な仲間なんだから」
「仲間……」
その言葉を聞いて私は、一人の親友を思い出した。冒険者の自分とは違って、学校の先生を目指していた私の大切な親友。
「セレナ」
「何?」
「ありがとう」
「どうしたの、そんな改まって」
「何でもない」
「あ、ちょっと」
そのあとセレナは何か色々と言っていたけど、私が何も答えなかったからか諦めて何も喋らなくなった。
(ありがとうなんて、私らしくない……)
どうしてか分からないけど最近、自分でも分かるくらい私はおかしくなっていた。今みたいにありがとうなんてそんな言葉、口にしないのに、自分の事を誰かに話したりしないのに、ついそれらを口にしてしまう。
その原因を作っている人物は……。
(考えたくもないけど、事実かもしれない)
私が世界で一番嫌う人種だ。
「ふう」
二日目ももう直ぐ終わり、明日からは水神祭が始まる。僕達の力でどれだけ盛り上げられるかは分からない。けどやれる事は精一杯やったし、あとは明日にならないと分からない。
「寝ないの?」
皆が明日に向けて寝静まった中、なかなか眠れなかった僕が、外でボーッと空を眺めていると後ろから声が聞こえた。
「こういう事をするのは初めてだから、緊張してなかなか寝付けないんだよ。アリスは?」
「人形の調節してた。もうすぐ寝る」
「本当に使うつもりなんだ、人形」
「盛り上がる、絶対」
「その自信、僕にも分けて欲しいよ」
あの人形見てお客さんが減ってしまうか少しだけ心配だ。
「そういえばさ、ここに来た時に聞きそびれたけど、どうしてアリスは今回の依頼、引き受けたの?」
僕はずっと思っていた疑問を口にする。アリスはそれには答えずに、何故か無言で僕の隣に来た。
「ユウマは知りたい? 私の事」
「え、いや、まあ、知りたいといえば知りたいかな」
あの時何かを言いかけていたので、それを知りたい気持ちはある。
『フュリーナは私の……』
そこまで彼女は言っていた。恐らく次に繋がる言葉は故郷かもしくはお世話になった場所という言葉に繋がるだろうけど、その真意は分からない。
「知りたいなら教える。フュリーナは私の」
「私の?」
「私達の思い出の地。ここで私は沢山の思い出を作らせてもらった、だから恩返しがしたい」
「思い出の地、か。じゃあ水神祭にも」
「何度か参加した事がある」
「へえ」
いつものような毒づいた言葉ではなく、どこか懐かしげで、でも少しだけ悲しげな顔をして話すアリス。
彼女がそこまで言うのなら、よほどの場所なのだろうけど、僕には一つだけ引っかかる事があった。
「私達、ってもう一人誰かいたの?」
「……」
「アリス?」
多分これ以上は語りたくないのだろう、それより先の言葉をアリスは発しない。彼女もまた、セリスやハルカと同じように何かを抱えて生きているのかもしれない。
だから僕はそこには触れない。誰だって何かを抱えて生きているのだから。
こんな僕だって……。
「ユウマ」
「ん?」
「ユウマは私みたいな人間は嫌い?」
ふとアリスはそんな事を聞いてきた。まさか彼女からそんな事を聞かれるとは思っていなかった僕は、一瞬戸惑うもすぐに答える。
「嫌いじゃないよ。少しキツイ所はあるけど、それもアリスだって僕は思っているから」
「でも私は、ユウマも含めてこの世界中の男の人が全員嫌い」
「知ってる」
「それでも嫌いじゃないの?」
「うん。僕は仲間だからね」
アリスが何の意図があってこんな事を聞いてきたのかは分からない。けど恐らくその根には、きっとさっきの話が関係しているのかもしれない。
「仲間……」
「アリス?」
「寝る。おやすみユウマ」
「あ、ちょっ」
強制的に会話は終了され、アリスは自分の寝床へと戻っていってしまう。何とも不自然すぎる彼女に、僕は何処となく違和感を感じていた。
(これはツンデレがデレた時と一緒なのかな)
流石にそれはないか。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
「ユウマと何を話ししていたの?」
寝室へ戻ると、いつから起きていたのかセリナが話しかけてきた。
「少し昔話」
「昔話、ねえ。珍しい事もあるのね」
何故か私を見ながらニヤニヤしているセレナ。何かおかしな事でも言ったのだろうか。
「何?」
「いやぁ、アリスも変わったなと思って」
「変わった? 私が?」
「だってアリスってそういうの話すの嫌いな方でしょ? なのにユウマにだけは話したんだなと思って」
「……」
私はベッドに横になり、無言で布団にくるまる。
(私が……変わった?)
そんな事はない。私は相変わらず男が嫌いだ。それは彼に対しても同じ事が言える。出会って一ヶ月ほどしか経っていないのに、いくら酷い事を言っても、彼は勝手に私に構ってくるだけだ。
だから決して、私が彼にどうこう思っているわけではない。
「……セレナは、ユウマの事をどう思っているの?」
「え? それは大切な仲間だって思っているよ」
「私も?」
「勿論。ハルカだってそうだし、私達は一つのパーティであると同時に、大切な仲間なんだから」
「仲間……」
その言葉を聞いて私は、一人の親友を思い出した。冒険者の自分とは違って、学校の先生を目指していた私の大切な親友。
「セレナ」
「何?」
「ありがとう」
「どうしたの、そんな改まって」
「何でもない」
「あ、ちょっと」
そのあとセレナは何か色々と言っていたけど、私が何も答えなかったからか諦めて何も喋らなくなった。
(ありがとうなんて、私らしくない……)
どうしてか分からないけど最近、自分でも分かるくらい私はおかしくなっていた。今みたいにありがとうなんてそんな言葉、口にしないのに、自分の事を誰かに話したりしないのに、ついそれらを口にしてしまう。
その原因を作っている人物は……。
(考えたくもないけど、事実かもしれない)
私が世界で一番嫌う人種だ。
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