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影が薄いけど魔法使いやっています

りょう

第17話暑い季節にピッタリの

 僕がこの世界にやって来てから間もなく一ヶ月。この世界にも夏の季節がやって来ていた。

「暑い……」

「もうユウマはそればっかり。ろくに外にも出ないで、どうするつもりよ」

「だって暑いもんは暑いんだから、仕方ないじゃん」

 ギルドの机の一角で、僕はセレナと冷たい物を飲みながらうなだれていた。

「この世界の暑さは異常だって。身体中の水分が抜き取られそうだよ」

「私は慣れているんだけどなぁ」

 この世界の夏は、僕がいた地球の暑さよりも、段違いの暑さを誇っていて、言うなれば毎日砂漠にいるようなものだった。当然ながらこの世界にはクーラーや扇風機といった文明の利器は存在していないので、水の魔法でも習得しようかなって考えている。

「そういえば今日、アリスが仕事を持ってきたんだけど、折角だから行かない?」

「アリスが?」

 四人のパーティになって間もなく二週間。その間、暑さと戦いながらもお金の為に仕事はこなしていた。とは言っても、先日セレナが言っていた通り、そっち系の仕事ばっかりで、暑さも相まって普段以上に疲れる仕事が続いていた。

 そしてそれらを持ってくるのは大体セレナとかなんだけど、今日は珍しくアリスが持ってきたということなので、僕は珍しいなと思った。

「もしかしてまた、そういう仕事とかじゃないよね」

「見せてもらったんだけど、そういうのじゃなくてこの季節にぴったりの仕事なの。それがこれ」

「なになに」

 セレナに渡された依頼書を見る。中身はこうなっていた。

『冒険者の力で祭りを盛り上げてほしい』

 どうやら毎年、アルカンディアから南に行った先にあるフュリーナという町では、毎年夏にちなんで祭りが行われているらしい。しかし町の住人の高齢化で、そういう行事を行う気力がもう無いらしい。しかしフュリーナの祭りは毎年多くの人が見にきてくれているらしく、簡単に中止なんてできないということ。

「そこで冒険者の力を借りたい、そういう事か」

「アリスがこんな仕事を持ってきたのがすごくビックリしたけど、内容はすごく面白そうでしょ」

「確かに今までのに比べたら面白そうだし、僕はこういう仕事を待っていたんだよ」

「その言い方だと、まるで私がまともな仕事を持ってきてない言い方だけど」

「僕は何一つ間違った事を言ってないけど?」

「よーし分かった。この次の仕事はとびきり怖い仕事を選ぶからね」

「それで一番怖がるのはセレナでしょ」

 先程も言ったが、そういう系統の仕事を持ってくるのはセレナなんだけど、その仕事で一番怖がっているのはセレナだったりする。先日なんて、

『ユウマ、あ、明日の仕事が怖くて寝れないんだけど」

 と、仕事に行く前から怖がるという始末。結局仕事に行くには行ったんだけど、結果は言うまでもなかった。

「わ、私、こ、怖がってないわよ」

「まだ依頼受けてすらいないのに、怖がっているのはどうかと思うんだけど」

 ■□■□■□
 と言う事で、僕達は翌日にフュリーナへ向かう事に。距離はそこそこあるという事で、移動手段は馬車。僕達四人は少し狭めの馬車に詰めるように乗っていた。

「お祭り……私の村ではやってなかったけど、楽しいの?」

 その道中、祭りと言うものを知らないらしいハルカが尋ねる。

「祭りにも種類があるから一概に楽しいとは言えないけど、大体の祭りは楽しいと思うよ」

「へえ、ユウマはそういうの好きだったりするの?」

「嫌いではなかったかな」

 日本には祭りは沢山存在していたので、僕も小さい頃とかよく祭りは参加していた。夏といえば祭りだったし、ラムネとか綿あめとかは夏祭りの定番だった。

(でもこの世界にはそんなのないし、どうやってもりあげればいいんだろ)

 魔法で盛り上げるにしても、大雑把すぎるしその辺の具体的な案はちゃんと考えないといけないかもしれない。

「そういえば気になってたんだけど、どうしてアリスがこういう仕事を持ってきたの?」

「悪い?」

「悪くはないけど、珍しいなって思って。そういうの好きそうには見えないし」

「ユウマ、それは失礼よ。アリスだってそういう趣味があったりしてもいいじゃない」

「だから別に悪い意味で言ったんじゃなくて」

 確かにアリスは、こう見えてスイーツという名の激辛クレープが好きだったりするし、人は見た目によらないのは僕も承知している。

「私、こういうのは協力したい」

「祭りが好きだから?」

「違う。フュリーナは」

「おーい到着したぞ」

 アリスが何かいいかけたところで、馬車は到着する。また肝心な話を聞けなかったのは悔やまれるけど、とりあえず僕達四人は馬車を降りて村へと向かう。

「高齢化が進んでいるから、もう古い街なのかと思っていたけど」

「わあ、すごく綺麗」

「へえ、ミナに話は聞いていたけど、本当水が透き通ってて綺麗な街ね」

「また来れてよかった」

 水の都フュリーナ。
 そこはこの暑い季節をこの街だけでも乗り切れそうなくらい、水がこの街に溢れていて、水の都の名としてふさわしい街だった。

「僕ここに住んでもいいかな」

「それは今がすごく暑いからって理由だったら、私怒るからね」

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