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影が薄いけど魔法使いやっています

りょう

第9話アリスと過ごす昼下がり

 行列に並ぶこと三十分。僕とアリスは無事にクレープを購入して(並んだついでに僕も買ってみた)、近くのベンチに座っていた。

(やっぱり思った通りクレープだよね、これ)

 商品名は違えどイチゴや生クリームと言ったものがしっかりとトッピングされていて、明らかに日本のものだった。

「食べないの?」

「そっちこそ」

「ユウマに食べているところ見られたくない」

「恥ずかしいんだ」

「そ、そうじゃない。こういうの一人で食べる事が多いから、な、慣れてない」

「へえ、結構食べるんだ」

 意外だなって思わず思ってしまった。アリスってどちらかというとそういうタイプのキャラではないので、ちょっとギャップが見れてにやけてしまう。

「今失礼なことを考えた。さっきも失礼なこと言ったし、やっぱり豚以下の存在ね」

「豚以下なの?! で、でもそういう一面僕は嫌いじゃないんだけど」

「もう話したくない。私の半径百キロ圏内に入らないで」

「ご、ごめんって。そ、そんなに嫌なの? 自分の他の一面を見られるのが」

「……別にセレナとかに見られるのは悪いと思わない。ただ、男に見られるのは私として許せない」

 いつの間にか黙々とクレープを食べながら、そんな事を語るアリス。それに吊られて僕も一緒にクレープを口にする。

「ぶっ」

「何、汚い」

「な、何だこれぇぇ」

 僕がクレープにトッピングしたのは、確か生クリームのはずだ。本来ならそういうのは甘いはずなのに、ど、どうしてこれはこんなにも……こんなにも……。

「私は一度も甘いのが好きとは言っていない」

「どうなっているんだこの世界のクレープ!」

 こんなにも激辛な味なんだ!
 いや、クレープが悪いというよりはこのイチゴに似たものといい、生クリームまがいなものといい、僕の知っているものではない。

(あとでクレープ屋にクレーム入れておこうかな……)

「あ、アリスってこんなにも辛いもの、平気なの?」

「そんなに辛い? やっぱり男は皆辛いの苦手なのね」

「とりあえず全世界の辛党の男性の方々に謝ろうか」

 まだ一口しか食べていないのに、この辛さだと完食する事なんてきっと出来ない。それをアリスは平然とした顔で食べていくので、味覚を疑いたくなってしまう。

「これ本当においしいの?」

「ユウマには分からない味」

「うーん、確かに僕には理解できない味ではあるよ」

 アリス以外に行列に並んでまで買う方々を見る限り、どうやらこれは大人気商品らしい。

「ちなみに店員に言えば、普通に甘い物も作ってくれる」

「何でそれを今になって言うの?! 買う前に教えてよそれ」

「教えない方が面白い」

「僕は全然面白くないんだけど!」

 もしかしてアリスって、毒舌というよりドS?

 ■□■□■□
 結局僕のクレープは、アリスがおいしくいただき、僕達はその足でギルドへとやって来ていた。皆朝まで飲んでいたからか、ギルドの中はまだ寝ている人が多かった。

「あら、ヒーローさん。今日はアリスと一緒なの?」

「その呼び方やめてくださいよ、ミナさん」

 ギルドの受付ではミナさんが何かの作業をしながら、やって来た僕達に話しかけてくる。昨日の事からミナさんは僕の事をそんな呼び方をし始め、僕は少し恥ずかしくなる。

「……おはよう、ミナ」

「もうお昼過ぎだけどね。どう? 今から依頼でも受けない?」

「依頼?」

「ほら、ユウマ君はギルド連盟に加入したからギルドを介して仕事を受けるようになっているの。ほら、そこにボードがあるでしょ?」

 ミナさんが指を差した方を見ると、数え切れないほどの紙が貼られたボードがある。そういえばセレナも言っていたけど、冒険者として登録したら、お金がもらえる仕事を受けられるようになるっていたけど、この事だったのだろう。

「とは言っても、いきなり危険な依頼に行くのも危ないと思うから、今日は私の依頼を受けて欲しいの」

「ミナさんの?」

「そう。折角だからそこのアリスと一緒にね」

「わ、私がどうして一緒に」

「そんな事言って、本当は一緒に行けて嬉しいんでしょ? 皆あなたの事は避けてばかりだから」

「え?」

 それはどういう……。

「み、ミナ! 余計な事を」

「だったら行ってきなさい。あなたのその力は、ユウマ君の力になれると思うわ」

「……分かったわよ」

 それだけ言ってアリスは、どこかへ行ってしまう。

「あ、ちょっと」

「大丈夫よユウマ君、アリスは家に戻って準備しに行っただけだから」

「それならいいですけど。でもそれよりも」

「さっきの話が気になる?」

「はい」

 確かにアリスは初めて会った時も、今日街中で会う時も一人でいる事が多かった。セレナやミナの知り合いはいるとはいえど、もしかしたらあの毒舌が原因でもあるのかもしれない。

「『死の人形使い』」

「え?」

「アリスは他の冒険者からそう呼ばれているの」

「誰がそんな事を」

「私も最初は酷いと思ったけど、実際アリスと仕事に行くと、誰かが死ぬという事件が何度も起きているの。だからアリス自身もそれを認めるようになっちゃって、誰かと組むどころか仕事に行く事もなくなっていたの最近」

「そんな事が……」

 そんな事を抱えているなんて思わなかった。ただのデマならともかく、実際に起きてしまっていたら本人も認めざるおえなくなってしまう。だから彼女はあんなにも毒舌で……。

「あ、毒舌は元からよ」

「あれは元からなんですか」

 人が寄り付かなくなるのって、そっちが原因でもあるんじゃないかな、もしかしたら。

「だからユウマ君、アリスを救ってあげて。あの子はきっと、一番の寂しがり屋だと思うから」

「僕にできる事なんてあるんですか?」

「死ななければいいのよ」

「何で単純な」

 僕も簡単に死にたくないけどさ。

「とにかくアリスをお願いね。ヒーロー君」

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