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影が薄いけど魔法使いやっています

りょう

第7話アルカンディア防衛戦

 大軍とも思えるそれが迫る中、とりあえず僕は心を落ち着かせた。正直前回のウルフとの戦いは、シレナが言った通りのことをしたまでで、僕自身は何もできていない。まさか魔法があそこまでの威力を発揮するとは思ってもいなかった。
 だけど今この戦いは、半分自分の意志で戦うようなもの。通用するかは分からないけど、ここまで来たならやるしかない。

「大丈夫ユウマ、私もいざとなれば戦うから」

「いざじゃなくて、最初から戦ってほしいんだけど」

「え? でも私地上の敵相手じゃ」

「そこは何とか工夫して闘って。そもそも行こうと誘ったのはセレナなんだから」

「頑張ってはみるけど……」

 何故か戦う気力を見せないセレナ。人を誘っておいて、自分は戦わないなんて、そんなのは無しだ。たとえ攻撃が当たらなくたって、考え方を変えればうまくいく。

「アリスは……元からやる気満々か」

「汚物は皆消毒する。ユウマも含めて」

「狙うのは敵だけにしてもらえませんかね?」

 そう会話しているうちに、魔王の軍団は僕達冒険者達の目の前で足を止めた。その数は遠目で見た時よりも遥かに多く、いきなり最終決戦にでもなりそうな雰囲気だった。

「貴様らがこの街の冒険者とやらか。これよりこの地は我々が支配する。大人しく引き下がれば、命だけは許してやろう」

 そんな軍団を率いていたの、銀の鎧をまとった兵士。見た感じは普通の兵士だが、その鎧から溢れ出ている邪悪なオーラは別格のものだった。

(狂戦士みたいなやつか)

 ああいうタイプは普通は理性など保てないはずなのだけど、奴は普通に言葉も話している。もしかしてその強大な力を、制御できているというのか。

「誰がお前らなんかにこの街を渡すものか」

「そうよ。ここは私たちの大切な場所なのよ」

 狂戦士の言葉に対して、冒険者達がすかさず反論をする。何ともお決まりな展開にも見えるけど、ここいう展開はすごく胸が熱くなる。まだこの街に来たばかりの僕が何か言える立場ではないけど、ここは一言言ってやろうじゃないか。

「そうだぞ。ここは僕達の……」

「この豚め」

 アリスさん、あなたは本当にブレないですね。

「誰だ今豚などと言った奴は」

「豚に豚と言って何が悪い。魔王の兵なんてただの豚でしょ」

「貴様ぁぁ」

 アリスの言葉にブチ切れた狂戦士さん。アリスとの一気に距離を詰めてその命を奪わんとする。同時に他の兵達も動き出し、冒険者達はそれを迎撃する。

「消えろ!」

「近寄らないで、体が腐るわ」

 その距離数メートルのところまで来て、狂戦士が大剣を振りかざす。だがその一撃をアリスは簡単に受け止めた。いや、受け止めたというよりは、あの怖い人形で防御したに近い。

「くっ、貴様人形使いか」

「話しかけないで。酸素が勿体無い」

「貴様、絶対に許さないぞ!」

 アリスの言葉に更に怒りを露わにする狂戦士さん。マズイ、これ以上怒ると、本当に理性を失ってアリスも危ないかもしれない。

「ユウマ、皆魔王の兵に押されている。何とかしないと」

 こちらも兵と対峙しているセレナが僕に助けを求める。僕はというと、まだ何も動けずにいた。

(何とか……何とかしないと)

 ■□■□■□
『ユウマ、この数相手だとシャインじゃ辛いと思う。だから』


「分かってる」

 シレナの声が聞こえるけど、そんなのはとっくに分かっている。しかもあの威力の魔法だと、味方を巻き込んでしまうに違いない。だから僕は……。

「レイズデッド」

 魔王軍を包むように、蘇生魔法の光を全ての敵にかざした。その規模の大きさはどんな物なのかは分からない。けど、闇の敵には光が有効だと思い、蘇生魔法用の光をこのエリア全てに照らしてみた。

『ユウマ、私魔法をまともに教えきれていないのにどうやって……』

「なぁっ、光魔法だとぉぉ。か、体がぁぁ」

 狂戦士の悲鳴が聞こえる。どうやら効果は抜群らしく、他の兵達も一気に消し去ることに成功。

「す、すごい。なんて優しい光なの」

「この光……どうして」

 セレナとアリスが声を漏らす。正直僕も成功するとは思ってはいなかった。うまくいく確信なんてどこにもなかったし、魔法を覚えてまだ二日。そんな簡単に事は運ばないと思っていた。

(しかもこれだけの威力なのに、全然疲れていない……)

 ウルフの時もそうだったけど、慣れない魔法を使ったのに、疲労を感じる事がなかった。何でだろう……。

 まあ、とにかくこれで一件……。

「まだだ、まだ終わらないぞ魔法使い」

 落着させてくれないですよね。

「まだやる気?」

「人形使い、貴様にはもう用はない。今から狙う首はお前だ光の魔法使い」

「なっ」

 一瞬の油断で狂戦士に一気に距離を詰められる。まずい、これを避ける事なんて今の僕には……。

「ユウマに手は出させないわよ」

 傷を負うのを覚悟したその瞬間、僕の体は宙に浮いていた。一体何が……。

「全く、油断も隙もないんだから」

「セレナ……」

 助けてくれたのはセナだった。恐らく自分の浮遊能力を使って、僕をギリギリの所で助けてくれたのだろう。

「さあユウマ、今がチャンスよ」

「うん」

「き、貴様ぁぁ」


 浮いている状態をセレナにキープしてもらい、僕は空中から狂戦士に向かって光の魔法を放つ。前回のあの威力、初級魔法とは思えないけど威力は確かだ。

「喰らえ、シャイン!」

「くそぉぉぉ」

 その魔法は一つの巨大な柱となり、敵に降り注ぎ殲滅させた。

「や、やったの?」

「すごい、ユウマ!」

 こうして僕の初めての魔王軍との戦いは、幕を閉じたのであった。

 後から聞いた話では僕が魔法を放った場所は巨大な穴が開いてしまい、元に戻すのはすごく苦労してしまったらしいけど、それはご愛嬌という事で。

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