影が薄いけど魔法使いやっています
第4話二人のステータス
移動に使った馬車は、光の中へ消え去ってしまったため、僕とセレナはそこから徒歩で目的の街へと向かう事になった。
「ねえ本当にユウマは魔法使い見習いなの?」
「そうだけど」
「絶対嘘よ。あの威力はおかしいし、それにあの光の魔法は……」
「光の魔法は?」
「ううん、何でもない。それよりユウマのステータスカード見せてくれない?」
「ステータスカード?」
そんな物持っていないと言おうとしたけど、ここに来る前にあの女神様に渡された一枚のカードの事を思い出す。
(確かこっちに来れば分かるって言ったけど、それの事かな)
あの個人情報筒抜カードをポケットから取り出す。
「やっぱり駆け出し魔法使いなんだ。ふーん……って、ちょっと待って、何これ」
「ん?」
この世界に来てまだ見てなかった僕は、セレナと共にそれを見る。どうやらステータスの振り分けについて書いてあるらしいけど、よく見ると変だった。
高坂悠馬 駆け出し魔法使い
魔法攻撃力  カンスト
光属性魔法 全習得済み
その他のステータス 零
自動発動スキル
ステルス
高速詠唱
魔法威力倍増
「ど、どうしてこんな振り分けの仕方したの?  そもそもカンストって、絶対初期のステータスとしてあり得ない。一体どうなっているの?」
「えっと、それは僕にも……」
聞けるならどこかで見ているであろう女神様に聞いてもらいたい。確かにこのステータスは初期のものとは思えないのは僕にも分かる。それが先程の戦闘にも現れている。
ただ、どうしても気になる事が一つある。
「ねえ、このステルスっていうスキルは何?」
「それは敵から察知されないスキルなんだけど、本来なら自動発動スキルじゃない筈なんだけど」
「なるほど」
あの女神、故意的にこれを付けたな。
『こ、故意になんてそんな。ただ、ユウマにピッタリのスキルだと思って』
どこからか言い訳が聞こえる。それが故意的だと本人は理解しているのだろうか。
「まあ、これでさっきの魔法の威力の原因は判明したけど、他のステータスが零なのは危険ね」
「それはつまり、下手をすれば一撃で死ぬとか」
「その辺りをステルスがまかなっているんだと思うけど、それだと逆に私が危険になるのよね」
「僕としてはそれの方が助かるけど。いい囮になってくれるし」
「ねえ、それ本気で言っているの?」
そんなセレナの言葉を無視して、僕は歩き始める。ウルフの襲撃地点からだいぶ歩いたおかげで、前方には森の出口が見えていた。セレナが言うには、この森を抜ければ目的地へたどり着くらしい。
「私騎士と言ってもそんな盾みたいな役割じゃないわよ。聞いているのユウマ」
さあ、もう一踏ん張りだ。
■□■□■□
始まりの街 アルカンディア
長い森を抜けた僕達を待っていたのは、始まりの街とは思えないくらいの大きさの、一種の都市みたいな場所だった。
「アルカンディアはこの世界エトワールの中でも、三本の指に入るくらいの大きさを誇る街なの。そしてここは、冒険を始める人達の為の初期装備を売っていたり、冒険者ギルドがあったり、設備がかなり整っているの。だから皆から始まりの街と呼ばれているの」
セレナが隣で説明をする。なるほど、いかにも異世界の街って感じがする。二日目にしてようやくこの世界の名前を聞いたのは内緒だけど、ここでならいろいろ探す事ができそうだ。
「とりあえず最初はギルドに向かって、冒険者としての登録を済ませないと」
「登録?」
「今のユウマはどこにも所属していないただの冒険者。たとえ仕事をしても報酬ももらえないの」
「要は登録していないと、お金も手に入らないし生活もできないってこと?」
「そう。登録していると、私のこのカードのように」
そう言ってセレナは自分のステータスカードを僕に渡してくる。そこには僕のカードとは違って、何かの烙印が押されていた。それが登録している証なのだろう。
セレナ 中級騎士
物理攻撃力 60
物理防御力 50
ステータスは僕のように特殊なものは感じられない。いかにも騎士って感じで、ステータスは平均的。だけど幾つか気になるものが目に入った。 
浮遊力 70
スキル
空中連撃
斬撃数 +3
(浮遊力?)
「セレナ、もしかして飛べるの?」
「ちょっと、勝手に人のステータスを見ないでよ。恥ずかしいでしょ」
「そうは言われても、さっき僕のも見られたし……」
スキルを見る限り対空中用の物が多いけど、浮遊力ってどちからと言うと、飛ぶというよりは浮くに近いのでは?
「もしかしてあの時僕を踏み台にしたのって……」
そう言いながら試しに彼女の足元を見る。すると、僅かながら彼女は浮いていた。
「ふ、踏み台にしたのは勢いよ。わ、私はその……しか戦う事が出来ないのよ」
「え? 今なんて?」
「だーかーら、私は地上では戦うことは出来ないの。体が浮いちゃっているからさっきのウルフ相手にでも剣が当たらないし……。熊だって、そこそこ大きい相手だったから、ユウマを踏み台にして顔を狙ってみたのよ」
「それってつまり、何もしてなくても体が浮いちゃうの? 今みたいに」
「うん……」
それでよく騎士になったなと僕は思ってしまう。空中の敵ってどちらかと言うと、僕みたいな魔法使いが狙う敵なのに……。それを騎士である彼女が倒してしまうのだから、役割が滅茶苦茶になってしまう。
「なるほど、だからセレナはボッ……」
「それ以上言ったら、私怒るよ?」
僕の初めての仲間は、浮遊感を与えられちゃった騎士でした。
「ねえ本当にユウマは魔法使い見習いなの?」
「そうだけど」
「絶対嘘よ。あの威力はおかしいし、それにあの光の魔法は……」
「光の魔法は?」
「ううん、何でもない。それよりユウマのステータスカード見せてくれない?」
「ステータスカード?」
そんな物持っていないと言おうとしたけど、ここに来る前にあの女神様に渡された一枚のカードの事を思い出す。
(確かこっちに来れば分かるって言ったけど、それの事かな)
あの個人情報筒抜カードをポケットから取り出す。
「やっぱり駆け出し魔法使いなんだ。ふーん……って、ちょっと待って、何これ」
「ん?」
この世界に来てまだ見てなかった僕は、セレナと共にそれを見る。どうやらステータスの振り分けについて書いてあるらしいけど、よく見ると変だった。
高坂悠馬 駆け出し魔法使い
魔法攻撃力  カンスト
光属性魔法 全習得済み
その他のステータス 零
自動発動スキル
ステルス
高速詠唱
魔法威力倍増
「ど、どうしてこんな振り分けの仕方したの?  そもそもカンストって、絶対初期のステータスとしてあり得ない。一体どうなっているの?」
「えっと、それは僕にも……」
聞けるならどこかで見ているであろう女神様に聞いてもらいたい。確かにこのステータスは初期のものとは思えないのは僕にも分かる。それが先程の戦闘にも現れている。
ただ、どうしても気になる事が一つある。
「ねえ、このステルスっていうスキルは何?」
「それは敵から察知されないスキルなんだけど、本来なら自動発動スキルじゃない筈なんだけど」
「なるほど」
あの女神、故意的にこれを付けたな。
『こ、故意になんてそんな。ただ、ユウマにピッタリのスキルだと思って』
どこからか言い訳が聞こえる。それが故意的だと本人は理解しているのだろうか。
「まあ、これでさっきの魔法の威力の原因は判明したけど、他のステータスが零なのは危険ね」
「それはつまり、下手をすれば一撃で死ぬとか」
「その辺りをステルスがまかなっているんだと思うけど、それだと逆に私が危険になるのよね」
「僕としてはそれの方が助かるけど。いい囮になってくれるし」
「ねえ、それ本気で言っているの?」
そんなセレナの言葉を無視して、僕は歩き始める。ウルフの襲撃地点からだいぶ歩いたおかげで、前方には森の出口が見えていた。セレナが言うには、この森を抜ければ目的地へたどり着くらしい。
「私騎士と言ってもそんな盾みたいな役割じゃないわよ。聞いているのユウマ」
さあ、もう一踏ん張りだ。
■□■□■□
始まりの街 アルカンディア
長い森を抜けた僕達を待っていたのは、始まりの街とは思えないくらいの大きさの、一種の都市みたいな場所だった。
「アルカンディアはこの世界エトワールの中でも、三本の指に入るくらいの大きさを誇る街なの。そしてここは、冒険を始める人達の為の初期装備を売っていたり、冒険者ギルドがあったり、設備がかなり整っているの。だから皆から始まりの街と呼ばれているの」
セレナが隣で説明をする。なるほど、いかにも異世界の街って感じがする。二日目にしてようやくこの世界の名前を聞いたのは内緒だけど、ここでならいろいろ探す事ができそうだ。
「とりあえず最初はギルドに向かって、冒険者としての登録を済ませないと」
「登録?」
「今のユウマはどこにも所属していないただの冒険者。たとえ仕事をしても報酬ももらえないの」
「要は登録していないと、お金も手に入らないし生活もできないってこと?」
「そう。登録していると、私のこのカードのように」
そう言ってセレナは自分のステータスカードを僕に渡してくる。そこには僕のカードとは違って、何かの烙印が押されていた。それが登録している証なのだろう。
セレナ 中級騎士
物理攻撃力 60
物理防御力 50
ステータスは僕のように特殊なものは感じられない。いかにも騎士って感じで、ステータスは平均的。だけど幾つか気になるものが目に入った。 
浮遊力 70
スキル
空中連撃
斬撃数 +3
(浮遊力?)
「セレナ、もしかして飛べるの?」
「ちょっと、勝手に人のステータスを見ないでよ。恥ずかしいでしょ」
「そうは言われても、さっき僕のも見られたし……」
スキルを見る限り対空中用の物が多いけど、浮遊力ってどちからと言うと、飛ぶというよりは浮くに近いのでは?
「もしかしてあの時僕を踏み台にしたのって……」
そう言いながら試しに彼女の足元を見る。すると、僅かながら彼女は浮いていた。
「ふ、踏み台にしたのは勢いよ。わ、私はその……しか戦う事が出来ないのよ」
「え? 今なんて?」
「だーかーら、私は地上では戦うことは出来ないの。体が浮いちゃっているからさっきのウルフ相手にでも剣が当たらないし……。熊だって、そこそこ大きい相手だったから、ユウマを踏み台にして顔を狙ってみたのよ」
「それってつまり、何もしてなくても体が浮いちゃうの? 今みたいに」
「うん……」
それでよく騎士になったなと僕は思ってしまう。空中の敵ってどちらかと言うと、僕みたいな魔法使いが狙う敵なのに……。それを騎士である彼女が倒してしまうのだから、役割が滅茶苦茶になってしまう。
「なるほど、だからセレナはボッ……」
「それ以上言ったら、私怒るよ?」
僕の初めての仲間は、浮遊感を与えられちゃった騎士でした。
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