運命(さだめ)の迷宮
本質は采明ちゃんは甘えっ子です。
痛み止を噛み、骨を入れると、きつく布を巻き、
「しばらく歩くのも禁止だ。そうだな……杖か、何か……」
「はい!!」
痛みに涙ぐんでいたものの、采明は、手をあげ、
「こんなの作ってください!!」
「なにをだ?」
紙を取り出した采明は、必死に紙に書くと、差し出す。
「何だ?これは」
「松葉杖と言います。この上の部分は、脇で挟むようにして、ここが手で握る部分です。そして、下にはそれぞれ布を巻いて、付いて歩くんです。そうすれば歩けます」
「馬鹿者!!怪我人が動いてどうする!!姉上と休んでいろ!!」
横たえる。
昨日も感じたが本当に小さく華奢な少女である。
「で、でも、もっと仕事!!」
「寝てろ!!でないと、だっこして出仕や、背中に背負って、馬に乗るが?」
「いやぁぁ!!無理!!恥ずかしい!!死ぬ!!」
身もだえる少女に、神五郎は、
「大怪我をした嫁が動き回るのほど見るのが辛いものはない。大人しくしていろ」
「でも、少しでも出歩くので……」
その意味を気がついた橘樹に、
「欅?」
「は、お嬢様」
傍に静かについていた、青年は近づく。
「あぁ、欅兄上がいらしたか」
神五郎は、微笑む。
そして、
「采明。この方が、私の兄上同然のかただ」
「め、滅相も!!」
首を振ろうとする欅に、采明は、
「あっ!!時々、橘樹姉上と一緒にいたのに、迷った私を助けてくれた、お兄さんです!!いつもありがとうございます!!お礼を言う前にいなくなるので……とっても残念で……お会いできて嬉しいです。あ、采明です。お兄さんは欅さまと言うんですね!!覚えました」
「おい、こら。夫のことは覚えずに、欅兄上は覚えるのか!?」
「神五郎さまはウロウロそこら辺にいますので、覚えなくても大丈夫です」
主夫婦のやり取りに、プッと吹き出す。
「し、失礼しました……」
何とか言葉を発するが、そのあとは言葉にならない。
「兄上まで……笑われるんじゃなかった」
「大丈夫です。神五郎さまは私よりお子さまですので、欅兄上、沢山お説教をしてくださいね!!」
「こら。采明!!」
姉まで加わって笑い出すのを見つめ、
「そんなに情けないですか!?」
「……采明に、采明に、お説教を受けているなんて、本当に……あははは……」
「本当に、こんなのですよ!!兄上、姉上!!こんなのひどいですよ。これで直江家の当主でどうするんですか!!お説教です!!」
采明の言葉に、二人は笑い、神五郎は、
「それは止めてくれ!!嫁に頭が上がらないと周囲に知られたらどうするんだ!?それでなくとも!!」
「いいんです。旦那さまはお馬鹿さんですって周囲の噂ですよ」
「それが困るんだ!!」
と必死に訴えても笑う姉達に、
「姉上!!兄上も!!笑わなくても!!」
「采明に家に来て貰えて良かったわ、ね?欅」
「そうですね……」
目を細める。
その顔に、采明は、
「姉上」
「なぁに?」
の言葉に、
「姉上、采明はお兄さん欲しいです。欅兄上もお家に来て欲しいです」
「家にいるでしょう?」
の次の瞬間には、爆発する。
「姉上と兄上と結婚してください。お姉さまとお兄様!!采明はお兄さんが、欲しいです。夢なんです。采明は一番上だったので、お兄さんとお姉さまが、欲しかったです。姉上が、お姉さまなので、お兄様も欲しいです。……駄目ですか?」
おねだり……に、堕ちたのは、神五郎だけでなく、二人……。
「あ、あの、私はね?今はもう、全く気にしていないのだけど、出戻りなのよ……だから、欅に申し訳ないと思うわ……」
「そんなことはありません!!お嬢様になんの落ち度があったのです?あちらは、神五郎よりも馬鹿で愚かだったんです!!お嬢様のことを、貶めるなど許されることではありません!!あれは汚点でもなんでもありませんよ!!」
「じゃぁ!!お兄様になっててくださいね!!嬉しいです!!」
きゃぁ!!
嬉しそうな声ではしゃごうとする采明を慌てて押さえ込みつつ、にやっと笑う弟。
「姉上も、欅兄上も、これで……」
「年貢の納め時と言うんですよ!!決断の時って言う意味です。でも、もっと仲良しになってくださいね。お兄様、お姉さま。なんなら、これ、贈答用にお届けします」
「こら。旦那を何だと思っているんだ!?」
「いりません~!!お姉さま!!お姉さまの衣合わせたいです!!なのでお兄様!!連れていってください!!ね?」
その言葉に、
「欅。行きましょう。采明は怪我人だから……神五郎よりも冷静な貴方なら大丈夫でしょう。こちらに」
「はっ!では、旦那様、後程」
「では、行ってきます!!お仕事に行ってくださいね!!」
欅にそっと抱き上げられ、手を振って立ち去った采明に、悔しげに、
「敵が増えた!!負けるか!!采明は俺の嫁!!」
と叫んだのだった。
「しばらく歩くのも禁止だ。そうだな……杖か、何か……」
「はい!!」
痛みに涙ぐんでいたものの、采明は、手をあげ、
「こんなの作ってください!!」
「なにをだ?」
紙を取り出した采明は、必死に紙に書くと、差し出す。
「何だ?これは」
「松葉杖と言います。この上の部分は、脇で挟むようにして、ここが手で握る部分です。そして、下にはそれぞれ布を巻いて、付いて歩くんです。そうすれば歩けます」
「馬鹿者!!怪我人が動いてどうする!!姉上と休んでいろ!!」
横たえる。
昨日も感じたが本当に小さく華奢な少女である。
「で、でも、もっと仕事!!」
「寝てろ!!でないと、だっこして出仕や、背中に背負って、馬に乗るが?」
「いやぁぁ!!無理!!恥ずかしい!!死ぬ!!」
身もだえる少女に、神五郎は、
「大怪我をした嫁が動き回るのほど見るのが辛いものはない。大人しくしていろ」
「でも、少しでも出歩くので……」
その意味を気がついた橘樹に、
「欅?」
「は、お嬢様」
傍に静かについていた、青年は近づく。
「あぁ、欅兄上がいらしたか」
神五郎は、微笑む。
そして、
「采明。この方が、私の兄上同然のかただ」
「め、滅相も!!」
首を振ろうとする欅に、采明は、
「あっ!!時々、橘樹姉上と一緒にいたのに、迷った私を助けてくれた、お兄さんです!!いつもありがとうございます!!お礼を言う前にいなくなるので……とっても残念で……お会いできて嬉しいです。あ、采明です。お兄さんは欅さまと言うんですね!!覚えました」
「おい、こら。夫のことは覚えずに、欅兄上は覚えるのか!?」
「神五郎さまはウロウロそこら辺にいますので、覚えなくても大丈夫です」
主夫婦のやり取りに、プッと吹き出す。
「し、失礼しました……」
何とか言葉を発するが、そのあとは言葉にならない。
「兄上まで……笑われるんじゃなかった」
「大丈夫です。神五郎さまは私よりお子さまですので、欅兄上、沢山お説教をしてくださいね!!」
「こら。采明!!」
姉まで加わって笑い出すのを見つめ、
「そんなに情けないですか!?」
「……采明に、采明に、お説教を受けているなんて、本当に……あははは……」
「本当に、こんなのですよ!!兄上、姉上!!こんなのひどいですよ。これで直江家の当主でどうするんですか!!お説教です!!」
采明の言葉に、二人は笑い、神五郎は、
「それは止めてくれ!!嫁に頭が上がらないと周囲に知られたらどうするんだ!?それでなくとも!!」
「いいんです。旦那さまはお馬鹿さんですって周囲の噂ですよ」
「それが困るんだ!!」
と必死に訴えても笑う姉達に、
「姉上!!兄上も!!笑わなくても!!」
「采明に家に来て貰えて良かったわ、ね?欅」
「そうですね……」
目を細める。
その顔に、采明は、
「姉上」
「なぁに?」
の言葉に、
「姉上、采明はお兄さん欲しいです。欅兄上もお家に来て欲しいです」
「家にいるでしょう?」
の次の瞬間には、爆発する。
「姉上と兄上と結婚してください。お姉さまとお兄様!!采明はお兄さんが、欲しいです。夢なんです。采明は一番上だったので、お兄さんとお姉さまが、欲しかったです。姉上が、お姉さまなので、お兄様も欲しいです。……駄目ですか?」
おねだり……に、堕ちたのは、神五郎だけでなく、二人……。
「あ、あの、私はね?今はもう、全く気にしていないのだけど、出戻りなのよ……だから、欅に申し訳ないと思うわ……」
「そんなことはありません!!お嬢様になんの落ち度があったのです?あちらは、神五郎よりも馬鹿で愚かだったんです!!お嬢様のことを、貶めるなど許されることではありません!!あれは汚点でもなんでもありませんよ!!」
「じゃぁ!!お兄様になっててくださいね!!嬉しいです!!」
きゃぁ!!
嬉しそうな声ではしゃごうとする采明を慌てて押さえ込みつつ、にやっと笑う弟。
「姉上も、欅兄上も、これで……」
「年貢の納め時と言うんですよ!!決断の時って言う意味です。でも、もっと仲良しになってくださいね。お兄様、お姉さま。なんなら、これ、贈答用にお届けします」
「こら。旦那を何だと思っているんだ!?」
「いりません~!!お姉さま!!お姉さまの衣合わせたいです!!なのでお兄様!!連れていってください!!ね?」
その言葉に、
「欅。行きましょう。采明は怪我人だから……神五郎よりも冷静な貴方なら大丈夫でしょう。こちらに」
「はっ!では、旦那様、後程」
「では、行ってきます!!お仕事に行ってくださいね!!」
欅にそっと抱き上げられ、手を振って立ち去った采明に、悔しげに、
「敵が増えた!!負けるか!!采明は俺の嫁!!」
と叫んだのだった。
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