運命(さだめ)の迷宮

ノベルバユーザー173744

咲夜ちゃんは超絶美少女で、看護師さんの中ではとても好感度も高いです。

所で、咲夜さくやは、とても礼儀正しい。
看護師さんは、余り男性ではなく女性の看護師さんが対応する。
すると、柚須浦ゆすうら氏の娘であり、世界的に有名になりつつある百合ゆりの妹だと言う、それだけでも凄いのだが、本当に儚げな美貌の咲夜ではあるのだが、とても物言いなどは少年のようである。

しかし、それは荒いものではなく、

「おはようございます。山田さん。本当にいつもありがとうございます。この香りは、とてもいい匂いですね。花の匂いは大好きです」
「重くてすみません。中村さん。いつも手伝っていただいて、感謝しています。もう少し、自分で動こうと思うのですが、駄目ですね。頑張りますので、もうしばらく、よろしくお願いいたします」

丁寧にそしてハキハキとした物言いが、本当に愛らしい顔立ちの美少女に似合わないようで似合っていて、お姉さま方に萌えを与える。

「今日は咲夜さんに、にっこり笑われて!!何て可愛いし、美少女なのかしら……宝塚ではないのだけれど、どう見ても娘役の外見なのに、とてもしっかりした物言いで!!」
「本当よ!!いやぁ!!あんな可愛い、咲夜さんに近づけるなんて素敵だわぁ!!」
「羨ましいわぁ!!」
「何をしているのかしら?」

その声に、慌ててバタバタと動き始める。

「山田さん?どう言うことかしら?」

化粧の濃い高級ブランドに身を包んだ女性に、この特別患者を収容する病棟の主任看護師の山田沙羅やまださらは、

「あぁ、お久しぶりです。副院長の奥様。患者さんのことについて、引き継ぎですわ」
「あら?引き継ぎにしては、大騒ぎしていたようだけれど?ここは仕事場のはずでしょう?何しているの?」
「申し訳ございません。奥さま。注意致します」

一瞬ムッとしつつ頭を下げる。
元同僚であり、全く仕事をせず、金持ちの患者あさりをして、最終的には副院長の妻の座に着いた彼女のことを好きになれない。

「まぁいいわ。それよりも、テレビで大騒ぎしている小娘はどこにいるの?」
「首相命令により、その方の情報はお答えしないようにと、院長、副院長の念押しがございます。例え奥さまでもお伝えできません」
「何ですって!!」
「申し訳ございません。私どもには、それを違えることは出来ません。副院長にお伺いくださいませ。失礼致します」

さっさと立ち去る。
この気に入らない彼女より、咲夜と話している方が楽しい。
今日はどんな話をしようかと歩いていく。

「何なの!!あの女!!この私に対して、あの物言い!!許せないわ!!辞めさせてやろうかしら!!」
「何を言っているのかな?」

背後から声がする。

「あーん。貴方ぁ!!あの山田さんたらね?仕事もせずにだらだらとお話ししていたのよぉ?そんな怠け者に、この病棟の主任って任せられるのかしら?」
「山田くん?彼女より気の利く看護師を君は知っているのか?」

ゆかりの一言に、うふっと笑い、

「あそこの二宮さんとか、結城さんとか、とても気が利くのよ?」

その一言に、呼ばれた二人は内心やったと思うのだが、紫はちらっと見て、

「山田くんには敵わないね。彼女は私や院長先生が特に信頼している主任の一人だ。彼女をリーダーとして信頼の厚い看護師たちには、今本当に辛い怪我と戦う少女を任せている。それなのに別の人に変えるのは、絶対に出来ない。諦めなさい」
「何ですって!!私が、言っているのに!!」
「黙りなさい!!絵莉花えりか!!君はもうすでに看護師の仕事を外れ、家庭の仕事がある。その仕事ひとつせず、フラフラ遊び回り、その癖、夫の仕事に、重要な仕事に口を挟むな!!」

紫の厳しい声に、普段は温厚でにこにこと穏やかな副院長が、絵莉花に対しての鬱屈うっくつやイライラが溜まっているのが良く解る看護師たち。
しかし、絵莉花は、

「私が、悪いって言うの!?」
「……帰れと言っている。ここは特別病棟だ。関係ないものは立ち入り禁止!!帰れ!!」

紫の声に、

「紫先生。おはようございます!!」

ハキハキとしているが可愛らしい物言いが響き、山田看護主任に車イスを押してもらいながら、膝にはクローバーと言うテディベアをだっこしている。
長い髪を、片側に寄せて三つ編みをして、優しいベイビービンクのナイトドレスと上にはカーディガンを着ている。
その愛らしい姿に、看護師たちはわぁぁと声をあげる。

少女の着ているブランドは『LiuLi』ナチュラルだが、上品で、おでかけや、ちょっとしたところに来ていける、値段はお手頃だが、現在世界中で人気のブランドである。
コンセプトは家族。
その点も人気の秘密である。

「おや、咲夜さん。今日は?」
「えっと……」

照れたように頬を赤くする少女は、

「じ、自動販売機に、甘いジュースがあると教えてもらったので、自分で買いたいなって、思ったのです。山田さんには大変で申し訳ないなと、思うのですが、とても、山田さんは優しい方です。いつも親身になって相談に乗って下さるので。ご迷惑をお掛けしてばかりです」
「そうなの。よかったね?咲夜さん。山田くん。咲夜さんをよろしく頼むよ。咲夜さんは、話下手と言うか、緊張すると言えなくなるから、話を聞いてあげてくれると助かるよ」
「はい、ありがとうございます!!副院長。では、咲夜さん?行きますか?」
「はい。看護師の皆さんもお疲れさまです。頑張ってくださいね」

咲夜は頭を下げる。

「何よ、あんた!!」

山田に車イスを押され立ち去りかけていた咲夜の前に回り込み、

「私に対しての挨拶は!?無礼ではないの!?」

咲夜は、絵莉花を見ると、

「私は、知らない人とお話は苦手で……それと、山田さんにいただいた、唇につける『リップバーム』と言う柔らかい甘い匂いは大好きですが、その匂いは強すぎて苦手です。すみません。そんなに化粧をして大丈夫ですか?前に采明あやめお姉さまに伺いましたが、化粧をしすぎると、肌が荒れたり、シミが出たりするそうです。私の母も、院長先生の奥さまの葉子様も淡くて優しい化粧でした。派手な化粧はやめた方がいいと思います。肌のた……」

絵莉花の手のひらが翻り、咲夜の頬を打った。
頬にみみずばれが浮かび、じわっと血がにじみ始めた。
絵莉花の爪はネイルチップが貼られており、それがかすめたのである。

「咲夜さん!!」

山田の声に頬に手を当て、ぬるっとした感触に、

「あの、紫先生。このままにしておいても大丈夫ですか?」
「駄目に決まっているだろう!!山田くん!!病室に!!そして、中村くん、吉野くん!!治療ケースを!!」
「はい!!」
「そして、絵莉花を……他の手の空いた、看護師の人たち。院長室まで」
「はい!!」



はるかは、特別室の隅で、チマチマと何かをしていた。
すると、扉が開き、手で頬を押さえた咲夜をのせた車イスと、それを押して先程出ていった専属看護師の山田が入ってくる。

「どうしました?」
「そ、それが!!本当に申し訳ございません!!」

半泣きの山田の代わりに、咲夜を抱き上げベッドに横たえる。

「咲夜さん?」
「すみません。ご面倒をおかけします」
「いや、ご面倒とかそう言うのは良いんだよ?それよりも、その頬の傷を見せてくれないか?」
「えっと……」

飛び込んできた紫は、手当てを始める。

「ごめんね!!側にいたのに、止められなかった。本当に本当に申し訳ない!!」
「どうしたんです?兄上」
「遼!!」

言いかけようと口を開きかけると、扉が開き、

「あら、礼儀も知らない小娘の癖に、こんな部屋に住んでいるの?身分不相応じゃないの?きゃはは」
「そうですね。自分でもそう思います」
「あら、そう思うなら、この部屋から出ていきなさいな!!無礼を謝罪しなさいよ!!」
「ほほぉ……無礼の謝罪ですか?」

ツカツカ近づいた遼は義理の姉の右手を掴み、付け爪を調べる。

「あ、ここに、咲夜さんの……。無抵抗な、怪我人に対する暴力により、現行犯逮捕します」
「な、何ですってぇぇ!!義理の姉よ!!姉に何て口の聞き方なの!!」

暴れようとする絵莉花に、外から入ってきた警察官に、

「この人が、咲夜さんに暴力を振るった。手の爪に、破片が残っている場合がある。確認しろ」
「はっ!!」
「このような場合は、臨機応変に対応しろ!!身内ではあるが、院長夫人や、院長、咲夜さんの家族は構わないが、それ以外は入室許可を得てからにしてくれ」
「かしこまりました!!」

追い出された義姉に目をくれず、咲夜の傷の手当てを見つめる。

「大丈夫ですか?」
「ほんの少し……!!い、痛い~!!」
「消毒液で、傷を綺麗にしているんだよ?少し我慢して?ごめんね……本当に。女の子に傷が残ったら……」
「大丈夫です!!ちょっと……でも、奥さまは大丈夫でしょうか?」

咲夜の一言に、紫は、

「……えっとね。すでに……離婚話が出ていて、離婚届を渡している。周囲にも伝えているんだよ。現在別居中でね。それもあったんだ。ごめんね!!本当に……」
「そうなんですか……寂しいのかも知れないですね。でも、紫先生を困らせるのは駄目ですね。ちゃんとごめんなさいって言えたらいいですね」
「言えるような性格ではね……」

苦笑する。

「それよりも、これはチクチクするからね?ガーゼを付けておくから、外さないようにね?遼。頼むよ?」
「えぇ。大丈夫です。山田さんも、気を付けてくださいね?」
「あ、ありがとうございます。遼さん」
「じゃぁ、行ってくるよ」

看護師たちと出ていったのを見送った咲夜は、ポツッと呟いた。

「山田さんと結婚されているのかと思いました」
「元々、大学の先輩後輩でとても仲が良かったのだけど、山田さんは片思い、兄上はそれに疎くてね……」

苦笑する。

「もう、別居して一年だし、離婚して、再婚も良いと思うんだよ」
「私も山田……沙羅さんが幸せになってほしいです」
「私もそのために、準備中なんだ」
「準備中?ですか?」

咲夜の警護と二十四時間待機のため、同室の端で仕切りを作って、ベッドに荷物を置いている中で、持ってきた物は……。

「これは?」
「テディベアだよ。一応趣味と言うか、何回かコンテストに出品しているんだ。本名で出すと、刑事がと言われるから、別名で出品しているんだけどね」
「手と足……これは?」
「頭で、この部分を繋いでこの体に綿を詰めている。そうすることで手足も動くし、目を付けると表情も出て可愛いんだ」

遼は微笑む。

「これを内緒で作っているんだ。特に沙羅さんが喜んでくれると嬉しいね」
「……お、お手伝い出来ませんか!?私も、少し裁縫出来ます!!」
「それはありがとう!!一緒に作ってくれると嬉しいよ」

遼はかなり、いかついなりをして可愛いものが好きらしい。

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