運命(さだめ)の迷宮
二組の夫婦の盛大な結婚式が始まります。
先に、沙羅が、父親がわりで、紫の父でもある保によって、ゆっくりとヴァージンロードを歩く。
そして続いては、カランが、義理の弟である春の国公主のロウディーンのエスコートで歩く。
そして、お互いに新郎に手を取って貰うのだが、カランの手を取っている祐司は、普段は大人しいが、今日は大好きな母と、入籍済みの自分のパパになった祐司の結婚式で嬉しくてはしゃぎ回るショーンを肩車している。
結婚式に……と周囲は不快に思うことはなかった。
逆に、いつもは公の場では大人しく、ショーンをもじって、
『小心者』
とか、
『役に立たない小僧』
等と陰口を叩く者の前で、母親を待っている間は義父を見下ろし、
「パパ!!凄いよ~!!一杯、パパと母上と沙羅お姉ちゃんとゆかりんおじさんのお祝いに来てるよ~!!えへへ!!パパと母上たちは主役!!」
「何言ってるんだ?ショーンも主役だぞ?パパと母上と3人だ!!」
本当は、ショーンには3人の姉がいるのだが、そのうち二人は元々トウリャン国は一夫多妻で、側室として後宮に入ってきた。
しかしハウリスは、
「自分は、カラン以外要らない。それに、10才程の子供を後宮に入れるな!!」
と一喝し、
「この二人は俺の娘として育て、将来的には嫁がせる!!」
と後宮で育てられるようになった。
現在結婚している。
そして、一番年の若い少女のスイレンは、5才で後宮に連れてこられ、こちらもまた養女となり、婚約している。
歩き出した両親に、
「パパ、母上。僕、姉上たちの所に行った方がいい?」
「何で?」
「そうよ~?祐司さんとショーンの笑顔がとっても素敵よ?」
カランは微笑む。
他の三人とも祐司は仲良くなり、
「4人の父!!それは本気で嬉しい!!でも、嫁に出していた!!お父さんは悲しい!!」
と嘆き、娘たちも笑う。
「でも、お父様……と呼んで良いのかしら……」
ためらう娘たちに、
「パパでも、父さんでも良いぞ~!!父様とかはちょっと緊張」
その言葉にクスクス笑う。
「お母様。素敵なお父さんですね!なさぬ仲なのに、私たちにまで……」
「なさぬ仲じゃないぞ!!カランの子供は父さんの子供!!」
祐司はにっこり笑い、
「まぁ……頼りない父さんだけど、相談なり、愚痴なり聞いてあげるから、気楽に……仲良くしてほしい」
その一言で、カランの子供たちは一気に義父を大好きになり、なついている。
そんな夫が嬉しくも誇らしくもあるカランである。
「良いわねぇ。肩車。ショーン。見てどう?」
「うん!!回りが良く見えて、すごく面白い!!パパありがとう!!でも、パパ……重くない?」
「そんなわけはないだろう?これでも、一応柔道とか、格闘技は一通りやってるんだ」
「へぇぇ!!僕も頑張ろうっと!!」
笑顔の息子を見上げ、
「ショーンはパパたちの子供だから絶対に強くなるぞぉ?」
「本当!?じゃぁ、一杯頑張る!!僕」
祭壇前になると、ショーンをおろし、5人で並ぶ。
そして誓いの言葉を述べて、指輪交換……。
その時に、祐司はショーンには指輪ではなく、ネックレスを首にかける。
「これは、ハウリスがくれた、指輪なんだ。パパの指には小さくて、ショーンの指には大きい。合うようになるまではこうして身に付けていてほしい。そして、この、青い石はトルコ石と言う。最近は発掘されないので、ハウライトという白い石を青く染めて売っている。これはそれではなく正真正銘のトルコ石。これは、パパからショーンにだよ。大事にしてくれ」
「あ、ありがとう!!パパ!!大好き!!」
手を繋ぎ式場を出ていくと、ブーケトスである。
沙羅は、すぐに車イスで式に出席していた咲夜の元に向かい、ブーケを握らせる。
「えっ!い、いいんですか?沙羅お姉さん!?」
「えぇ。咲夜ちゃんのお陰で私は幸せよ。義理の姉妹になれて嬉しいわ!!」
そして、カランのブーケトスは、離れていた琉璃の体で跳ね返り、百合の手にすっぽりとはいる。
「琉璃!!これ、これ!!」
「手の中に入ったのは百合ちゃんだから百合ちゃんのだよ?次のお嫁さん!!」
「わぁぁ……ありがとうございます!!カランさま!!」
「うふふふ。素敵な人と結婚してね!!でも、祐司さんよりもいい人は早々いないわよ~♪遼さんくらいかしら?」
つい、ノロケる妻に、額にキスを返し、
「カランほど素敵な女性も早々いないけどな。ショーン?眠くなったのか?」
手を引いていたショーンがぐずるように、祐司の足にしがみつく。
「そうだよなぁ……あんなにはしゃいでいたし」
抱き上げ、頭を撫でる。
「すぐに下がってもいいけれど、一人で置いておくのも心配だし……」
「あ、私が見ていますよ」
亮の声に、
「ありがとう。でも大丈夫か?」
「えぇ、うちの息子も寝ちゃったので、一緒に休ませます」
「申し訳ない」
「いいんですよ。ショーンはうちのこの子のお兄ちゃんのような存在なんです。息子は少し体が丈夫じゃないんですが、ショーンは優しい子で、息子の体力を考えて遊んでくれますし、とても賢いこです。でも、大人ばかりが周囲にいて、トウリャン国の後継者のショーンのことを考える大人は多くても、子供のショーンを見る人は少ないんですよ」
亮は微笑む。
「なので、祐司さんのような父親ができて本当に嬉しいんです」
「……でも、君も、ショーンのことを心配している……ショーンは幸せだ」
「ありがとうございます」
微笑む強さに驚いた。
意識も、意思も普通の青年の持っている気迫ではない。
まだ25であるのに……いや、25にして、この強さを得るために本当に努力したらいったいどれ程かかるのだろう……。
「じゃぁ、よろしくお願いする。もし起きてぐずったら、私とカランが必ず迎えに来ると伝えてほしい」
「えぇ。必ず」
歩き出した夫に、
「どうしたの?」
「いやぁ、遼はいいとして、紫たちに見習ってほしいと思って」
「あぁ、亮さんね?あの方はすごいと思うわ。努力家だし、天才って言うのとは違う人よ。努力して努力して得た才能を開花させた秀才ね」
「俺ももっと頑張ってればなぁ……」
ぼやく。
「何よ?」
「うーん、ハウリスと、カランの取り合いをしておけばもっとよかったと思う……ハウリスは、俺が、カランやショーンの傍にいて、喜んでくれるだろうか?」
「それは喜ぶでしょう」
カランの妹、モクランと、双子を連れて歩いてきたロウディーン。
「良く言ってましたからね。『俺は、本当に良かったんだろうか?地位や立場を振りかざす人間は大嫌いなのに……俺はそんな人間になってしまった……』とね」
「あいつはそんな人間じゃない!!ハウリスは、カランを大事に愛していたし、カランもそうだった。俺が勇気がなかっただけだ……」
唇を噛む祐司に、
「祐司お兄様?愛情と言うものは、消えていくことはありません。消えるのは偽りの囁きです。残るのは、愛おしい、恋しい、大切にしたい……という、想いです。お兄様は、一度身を引いたのは、ハウリスお兄様と御姉様を大事にすればこそです。でも、不幸にもハウリスお兄様は亡くなりましたが、お兄様は、ハウリスお兄様も御姉様も、ショーンを大事に思っていて、全部を慈しみたいと思っているんじゃないですか?」
「カランとショーンと娘たちは俺の家族だ。絶対に守る!!」
「それでいいんですよ。その想いが、ショーンを家族を思えるんです」
「それで、いいんでしょうか……」
「それ以外何が必要ですか?戦いやいさかいなどは悲しみしか生み出さないでしょう?先程のショーンと貴方は本当に嬉しそうでしたよ。ショーンも貴方も本当にお互いを大事に思っているんですね」
ロウディーンの言葉に、頬を赤らめる。
「本当に、息子として育てます!!そして、仲良く幸せな家庭を築きます。ショーンへの、そしてカランへの約束です」
「ありがとう……」
瞳を潤ませるカランは夫に抱きつき、頬に唇を寄せたのだった。
そして続いては、カランが、義理の弟である春の国公主のロウディーンのエスコートで歩く。
そして、お互いに新郎に手を取って貰うのだが、カランの手を取っている祐司は、普段は大人しいが、今日は大好きな母と、入籍済みの自分のパパになった祐司の結婚式で嬉しくてはしゃぎ回るショーンを肩車している。
結婚式に……と周囲は不快に思うことはなかった。
逆に、いつもは公の場では大人しく、ショーンをもじって、
『小心者』
とか、
『役に立たない小僧』
等と陰口を叩く者の前で、母親を待っている間は義父を見下ろし、
「パパ!!凄いよ~!!一杯、パパと母上と沙羅お姉ちゃんとゆかりんおじさんのお祝いに来てるよ~!!えへへ!!パパと母上たちは主役!!」
「何言ってるんだ?ショーンも主役だぞ?パパと母上と3人だ!!」
本当は、ショーンには3人の姉がいるのだが、そのうち二人は元々トウリャン国は一夫多妻で、側室として後宮に入ってきた。
しかしハウリスは、
「自分は、カラン以外要らない。それに、10才程の子供を後宮に入れるな!!」
と一喝し、
「この二人は俺の娘として育て、将来的には嫁がせる!!」
と後宮で育てられるようになった。
現在結婚している。
そして、一番年の若い少女のスイレンは、5才で後宮に連れてこられ、こちらもまた養女となり、婚約している。
歩き出した両親に、
「パパ、母上。僕、姉上たちの所に行った方がいい?」
「何で?」
「そうよ~?祐司さんとショーンの笑顔がとっても素敵よ?」
カランは微笑む。
他の三人とも祐司は仲良くなり、
「4人の父!!それは本気で嬉しい!!でも、嫁に出していた!!お父さんは悲しい!!」
と嘆き、娘たちも笑う。
「でも、お父様……と呼んで良いのかしら……」
ためらう娘たちに、
「パパでも、父さんでも良いぞ~!!父様とかはちょっと緊張」
その言葉にクスクス笑う。
「お母様。素敵なお父さんですね!なさぬ仲なのに、私たちにまで……」
「なさぬ仲じゃないぞ!!カランの子供は父さんの子供!!」
祐司はにっこり笑い、
「まぁ……頼りない父さんだけど、相談なり、愚痴なり聞いてあげるから、気楽に……仲良くしてほしい」
その一言で、カランの子供たちは一気に義父を大好きになり、なついている。
そんな夫が嬉しくも誇らしくもあるカランである。
「良いわねぇ。肩車。ショーン。見てどう?」
「うん!!回りが良く見えて、すごく面白い!!パパありがとう!!でも、パパ……重くない?」
「そんなわけはないだろう?これでも、一応柔道とか、格闘技は一通りやってるんだ」
「へぇぇ!!僕も頑張ろうっと!!」
笑顔の息子を見上げ、
「ショーンはパパたちの子供だから絶対に強くなるぞぉ?」
「本当!?じゃぁ、一杯頑張る!!僕」
祭壇前になると、ショーンをおろし、5人で並ぶ。
そして誓いの言葉を述べて、指輪交換……。
その時に、祐司はショーンには指輪ではなく、ネックレスを首にかける。
「これは、ハウリスがくれた、指輪なんだ。パパの指には小さくて、ショーンの指には大きい。合うようになるまではこうして身に付けていてほしい。そして、この、青い石はトルコ石と言う。最近は発掘されないので、ハウライトという白い石を青く染めて売っている。これはそれではなく正真正銘のトルコ石。これは、パパからショーンにだよ。大事にしてくれ」
「あ、ありがとう!!パパ!!大好き!!」
手を繋ぎ式場を出ていくと、ブーケトスである。
沙羅は、すぐに車イスで式に出席していた咲夜の元に向かい、ブーケを握らせる。
「えっ!い、いいんですか?沙羅お姉さん!?」
「えぇ。咲夜ちゃんのお陰で私は幸せよ。義理の姉妹になれて嬉しいわ!!」
そして、カランのブーケトスは、離れていた琉璃の体で跳ね返り、百合の手にすっぽりとはいる。
「琉璃!!これ、これ!!」
「手の中に入ったのは百合ちゃんだから百合ちゃんのだよ?次のお嫁さん!!」
「わぁぁ……ありがとうございます!!カランさま!!」
「うふふふ。素敵な人と結婚してね!!でも、祐司さんよりもいい人は早々いないわよ~♪遼さんくらいかしら?」
つい、ノロケる妻に、額にキスを返し、
「カランほど素敵な女性も早々いないけどな。ショーン?眠くなったのか?」
手を引いていたショーンがぐずるように、祐司の足にしがみつく。
「そうだよなぁ……あんなにはしゃいでいたし」
抱き上げ、頭を撫でる。
「すぐに下がってもいいけれど、一人で置いておくのも心配だし……」
「あ、私が見ていますよ」
亮の声に、
「ありがとう。でも大丈夫か?」
「えぇ、うちの息子も寝ちゃったので、一緒に休ませます」
「申し訳ない」
「いいんですよ。ショーンはうちのこの子のお兄ちゃんのような存在なんです。息子は少し体が丈夫じゃないんですが、ショーンは優しい子で、息子の体力を考えて遊んでくれますし、とても賢いこです。でも、大人ばかりが周囲にいて、トウリャン国の後継者のショーンのことを考える大人は多くても、子供のショーンを見る人は少ないんですよ」
亮は微笑む。
「なので、祐司さんのような父親ができて本当に嬉しいんです」
「……でも、君も、ショーンのことを心配している……ショーンは幸せだ」
「ありがとうございます」
微笑む強さに驚いた。
意識も、意思も普通の青年の持っている気迫ではない。
まだ25であるのに……いや、25にして、この強さを得るために本当に努力したらいったいどれ程かかるのだろう……。
「じゃぁ、よろしくお願いする。もし起きてぐずったら、私とカランが必ず迎えに来ると伝えてほしい」
「えぇ。必ず」
歩き出した夫に、
「どうしたの?」
「いやぁ、遼はいいとして、紫たちに見習ってほしいと思って」
「あぁ、亮さんね?あの方はすごいと思うわ。努力家だし、天才って言うのとは違う人よ。努力して努力して得た才能を開花させた秀才ね」
「俺ももっと頑張ってればなぁ……」
ぼやく。
「何よ?」
「うーん、ハウリスと、カランの取り合いをしておけばもっとよかったと思う……ハウリスは、俺が、カランやショーンの傍にいて、喜んでくれるだろうか?」
「それは喜ぶでしょう」
カランの妹、モクランと、双子を連れて歩いてきたロウディーン。
「良く言ってましたからね。『俺は、本当に良かったんだろうか?地位や立場を振りかざす人間は大嫌いなのに……俺はそんな人間になってしまった……』とね」
「あいつはそんな人間じゃない!!ハウリスは、カランを大事に愛していたし、カランもそうだった。俺が勇気がなかっただけだ……」
唇を噛む祐司に、
「祐司お兄様?愛情と言うものは、消えていくことはありません。消えるのは偽りの囁きです。残るのは、愛おしい、恋しい、大切にしたい……という、想いです。お兄様は、一度身を引いたのは、ハウリスお兄様と御姉様を大事にすればこそです。でも、不幸にもハウリスお兄様は亡くなりましたが、お兄様は、ハウリスお兄様も御姉様も、ショーンを大事に思っていて、全部を慈しみたいと思っているんじゃないですか?」
「カランとショーンと娘たちは俺の家族だ。絶対に守る!!」
「それでいいんですよ。その想いが、ショーンを家族を思えるんです」
「それで、いいんでしょうか……」
「それ以外何が必要ですか?戦いやいさかいなどは悲しみしか生み出さないでしょう?先程のショーンと貴方は本当に嬉しそうでしたよ。ショーンも貴方も本当にお互いを大事に思っているんですね」
ロウディーンの言葉に、頬を赤らめる。
「本当に、息子として育てます!!そして、仲良く幸せな家庭を築きます。ショーンへの、そしてカランへの約束です」
「ありがとう……」
瞳を潤ませるカランは夫に抱きつき、頬に唇を寄せたのだった。
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