桃太郎になっちゃた?

青キング

その後

俺と犬川が異世界から現実世界に戻されて一ヶ月が経過していた。
 ちょくちょく犬川とも連絡などを取り合っており出掛けたりすることもある。
 俺のスマホが枕元でなり始める。
 急いでスマホを手に取り画面を確認する。
 犬川から着信だ。
 すぐに電話に応対する。
 『どう元気?』
 『最初に聞くことがそれかよ。相変わらず健全』
 『そんなことよりこれから会わない?』
 『どこで?』
 『いつものとこー』
 『ハイハイ仕度するから切るぞー』
 『早くない?』
 なりふり構わず電話を遮断し、外出の仕度を進める。
 スニーカーを履き、玄関を開放。
 いつもの場所へと直行で向かった。
 
 私の大好きな街は面影こそなくなったものの立て直しの為、住人が目一杯働いている。
 「キジミエル。これ運ぶの手伝ってくれ」
 猿吉さんが大木を指して手振り私を呼ぶ。
 「今行きます!」
 みんなの笑顔が私の宝石。
 
 いつもの場所。それは異世界から戻って来たときの海岸だ。
 堤防の上の道路から海岸が見えてくる。
 海を目前に潮風を浴びている女性がいる。
 女性もこちらに気付き、見据える。
 俺が堤防を降りると女性も近づいてくる。
 「遅いわよいつもいつも待たせてばかりで!」
 急すぎるんだよ、と言いかけた寸前で止める。
 また回し蹴りを喰らいたくないからな。
 「げふっ」
 なぜか溝落ちにアッパーを喰らう。なぜ?
 苦しみ唸り,腹を抱えうずくまる俺の前で堂々と仁王立ちして顔立ちからは考えられないほどの睨みで見つめてくる。
 「情けないわねあんたって」
犬川を上目遣いで見てみるとミニスカの中のいかがわしい衣類が顔を覗かせて・・・・・・
 「何覗いてるのよこの変態!」
 そう言い放つと華奢な脚で顔面を回し蹴りされ砂浜に倒れこんでしまった俺。
 意識が朦朧とする。あー死にそう。
 「ごめんなさい強くやり過ぎた。もうやらないから起きて!」
 犬川のその声が最後だった。
 
 街の復興を手助けしてくれている猿吉さんと、その他住人が一丸となっている。
 「世界から悪は消えた! 俺たちは自由だー!」
 「おー!」
 毎日、その言葉を語り、未来を明るくしようと懸命になる。
 でも犬川さんと志乃さんがいなくなったのは寂しいんです。
 暗い顔をしていられないから、今は目の前のことに精を注ぐだけだ。
 
「大丈夫? 志乃」
 俺が目を覚ますと目の前に犬川の整った顔が。
 「ごめんね強く蹴りすぎた」
 俺を蹴ったときとは大違いの優しい声でばつが悪そうにちぢこまり、謝罪してくる。
 体を起き上がらせるとその場に正座して沈黙してしまった。
 「今日はどこに行きたいんだ?」
 「えっ?」
 口を尖らせながら顔赤くしてを伏せる。
 「どうした?」
 ついつい尋ねてしまう。
 そのまま、なんでもないと、言いきり会話が消える。
 「ねぇ志乃?」
 おもむろに口を開き聞いてくる。
 「あの時の・・・・・・問題覚えてる?」
 「ああ」
 あの時とは夜の湖のほとりで犬川が俺に出題した問題のことだ。
 「答え教えてあげる」
 上目遣いで俺を真っ直ぐに見据えて。
 「その少女はあなたのことが好きだから優しく接すればいいの。そしてお前のことが好きだと言えば必ずOKしてくれるの」
 俺は首をかしげる。意味が理解できない。
 なぜならその少女が好きかなんて分かるわけがないのだから。
 「あんたってほんとにニブチンなのね」
 「反射神経ならかなり鋭いぞ」
 一つため息をつき、すくっと立ち上がり俺の腕を掴み引っ張る。
 「早く行きましょう」
 「どこへ?」
 「内緒」
 笑顔でそう言う犬川は超絶に可愛い。
 地球そのものが笑顔になると人類も笑顔になりすべての生き物が笑顔になる。
 異世界も今頃は笑顔が大量発生しているに違いない。
 これが笑顔の連鎖。またの名を幸せの循環。

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