桃太郎になっちゃた?

青キング

パーティー開始と寂しげな犬川

 街は夕暮れ時。
 街のあちこちで街灯がつき始める。
 「そろそろ宿泊先を決めなくては」
 さすがに野宿という訳にはいかないので宿泊先を探し回っていた。
 「その必要はございません志乃さん」
 自信に溢れた表情でそう宣言するキジミエルさん。
 「そういえばあんたって、この街の出身でしょ?」
 「私の実家なら無料です!」
 街の人にも聞こえてしまう声を街中で発する。
 「声が大きいよキジミエルさん」
 「確かに共感」
 同調する犬川。
 「では行きましょう!」
 「話聞いてたの?」
 マイペースすぎるキジミエルさんに呆れた表情を浮かべる犬川。
 そして俺たちはキジミエルさんの誘導で、キジミエルさんの実家に向かった。
 「どれくらいかかるの?」
 「十分くらいかなぁ」
 少し陽気に説明するキジミエルさん。腕を振りながら歩いている。
 「ここが私の実家です」
 あっという間に到着。
 海を間近に佇んでいる家は、狭くも広くもなくいたって平凡な造りで俺達が泊まれるほどのスペースは無いように思われる。
 「狭いように見えて実は二階建てなんですよ!」
 なんですと? 
 「お邪魔しまーす」
 猿吉が無遠慮にドアを開けて立ち入る。
 「入って入って」
 キジミエルさんが猿吉を上がらせているとき、犬川が真顔でこちらを凝視してくる。
 「どうした犬川?」
 俺が突然、視線を向けたせいかそっぽを向いた。
 そして俺に顔を見せぬまま立ち入っていった。
 俺もキジミエルさんの実家に立ち入る。
 「遅いです志乃さん」
 唇を尖らせてそう言うキジミエルさんが可愛い。
 上がった直後キジミエルさんに腕を引っ張られる。
 「ななな何よ突然!」
 犬川も同様に引っ張られ強引に歩かされる。
 「遅いぞ二人とも」
 俺たちは部屋に連れられる。そこには白いソファーに整然としたキッチン。ここはリビングなのだろう。
 ソファーに腰掛けくつろぐ猿吉。お前は遠慮という言葉を知らんのか。
 犬川が一歩前進。リビングの床を見つめる。
 「ねぇ見て」
 「どうした?」
 一瞬、こちらを伺って口を開く。
 「このフローリング触っていい?」
 出た。フローリング博士犬川。
 「構いませんよ」
 犬川は足元のフローリングに手を置き軽く擦る。
 「温かさを感じる」
 その一言だけですか? 博士。
 置いていた手を離した。
 「あらら、あなたたちがキジミエルが話してた三人でしょ。あなたなんて随分男前じゃない」
 大人びた口調で俺に視線を向けるこの女性はおそらくキジミエルさんの母だろう。
 「今日はパーティーね!」
 「お母さんはすぐにパーティーだね」
 「やりましょうパーティー。初めてなんですよ私」
 俄然ノリノリの猿吉と対照に寂しそうな表情を浮かべた犬川。どうしたのだろうか?
 そして一行とキジミエルさんの母を含めたパーティーが開始した。

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