桃太郎になっちゃた?

青キング

海軍のトップ

 結局、港町に戻されてしまった俺は途方に暮れていたのだった。
 街は白昼、ごったがえしておりとても喧騒だ。
 騒ぎ倒す者や路傍で商売する者まで老若男女問わず往来している。
 助けに行きたいのは山々なのだがどうすれば?、と悶えて二時間。いっこうに案が見つからない。
 「どうかしたのかい」
 悶えうずくまっている俺の目の前に一人の背丈の高い金髪の女性が尋ねてくる。
 「・・・・・・」
 俺は何も返せなかった。
 「リストラでもされたのかい」
 「心配してくれる気持ちはありがたいですけどあんたには関係ないだろ」
 つい、厳しい口調になってしまう。
 「そうかだよな、俺は今から鬼ヶ島に出撃しなきゃならねぇんだよ」
 「鬼ヶ島?」
 唐突に声を上げる俺を驚愕したように目を見開く金髪の女性。
 「あんた鬼ヶ島に用でもあんのかい?」
 動揺しながら聞いてくる。
 俺は素直に答えた。
 「俺の仲間三人がイケメン鬼達に連れ去られて・・・・・・それで助けたくて」
 「あんあんそういうことね」
 腕を組んで頷く女性。
 「一緒に行くたいなら乗せてやるけど」
 「えっ何に?」
 「そうかだよなこの服装ではわからないよな」
 庶民と同様の少し廃れた服装だが偉大な人物なのだろうか?
 「俺こう見えて海軍トップなんだぜ」
 不敵に笑う女性。海軍のトップだと!
 目がくらみそうだ。
 「大丈夫か、顔が青ざめてるぞ?」
 「ぶはー」
 「おい! しっかりしろよ」
 体が勢いよく揺らされる。もーだめだ。

 意識が正常になり目を開ける。
 目の前には白い天井が覗いた。
 「大丈夫か?」
 天井が隠れ、代わりにあのときの金髪女性が顔を覗かせた。
 「動けるか?」
 俺は体を上半身を起こし辺りを見渡す。
 全面が白で覆われた壁に部屋の左隅には木製の机が配置してある。この人の部屋なのだろうか?
 俺の寝ていたベットの隣で椅子に腰掛けてこちらを心配そうに凝視する金髪の女性。
 「犬川は!猿吉は!キジミエルさんは!」
 「誰だそれ?」
 「鬼ヶ島にの鬼に連れ去られた俺の仲間だよ!」
 あー、と思い当たる節を見つけた女性。
 「その三人なら今この船のロビーにいるはずだよ」
 「ありがとう」
 ベットから飛び起きて部屋を後にした。
 走ってロビーに向かっているとふと、思い出した。ロビーってどこだ?
 その場であたふたして行き詰まる俺。
 「やっぱりか」
 部屋から出てきて溜め息をつきこちらに歩み寄る金髪の女性。
 「バカかあんたは」
 「すいません迷惑かけてしまって」
 「ロビーならこの廊下を真っ直ぐ進んで左に曲がれば良いだけだよ」
 ああ恥ずかしい。
 「ありがとうごさいます」
 「・・・・・・」
 女性は身を翻して部屋に戻って行った。
 俺は急いでロビーに向かう。
 角を曲がったところで誰かと接触した。
 「すいません」
 俺は頭を下げながらその場を去ろうとした。
 後ろから抱きつかれ足を止める。
 「何?」
 「・・・・・・」
 後ろを振り替える。白味がかったロングストレートの艶やかな髪。
 「どこいってのよ」
 「ごめん」
 そう犬川だ。
 犬川は涙目でこちらを覗く。
 「心配させないでよひどい目にあったんだから」
 そんな目で訴えないでくれ。
 俺から抱きついた手を放し一、二歩後退り瞳に溜まった涙を拭う犬川。
 「心配したと思う?あんたなんかを」
 「ご想像お任せします」
 身を翻してロビーに歩き出す犬川。
 俺も後を追う。
 「ついてこないで!」
 苦笑いしかできなかった。
 いつもの犬川に戻っていてよかった。
 心底そう思えた。

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