桃太郎になっちゃた?

青キング

鬼との共存

 今、俺達は街中を散策中。
 キジミエルさんがこの街の出身だそうで詳しいため道案内を頼んでいる。
 「ここがこの街、最大の病院です」
 覆面を剥いだキジミエルさんはとても美人で一瞬心を打たれた。
 首まで垂らしたしなやかなブルーの髪、透き通った水色の瞳は俺の感性を奮い立たせた。
 「そしてここが街の中心です」
 大体の街案内が終了したらしい。
 「ねぇ志乃あそこの宮殿観光しましょうよ」
 犬川が俺の腕をつかんでねだる。
 「キジミエルさんはどうします?」
 俺はキジミエルさんに尋ねたがキジミエルさんは沈黙を貫いている。
 「あんなの放っといて行きましょうよー」
 猿吉も俺の腕を引っ張る。
「引っ張るな痛いよ」 ままぁキジミエルさんは地元だから大丈夫だろうと思い犬川と猿吉と一緒に丘の上にある宮殿に向かう。
          
 「ここが宮殿かー」
 犬川が目を見開いて驚いている。
 「実家よりも広いかもしれぬ」
 猿吉はその広大さを実家と比較している。猿吉の実家ってどんなとこなんだろう?
 「人が入っていくよ私たちも行こうよ」
 はしゃぐ犬川の隣で広大さを間近に呆気にとられている猿吉。
 「受付まで競争!」
 そう言い捨てて駆け出す犬川と唐突に競争と言われて困り果てる猿吉を俺は見守る。
「志乃も早くしないと置いてっちゃうわよ」
 「今行く」
 俺も受付まで駆け出した。
 そして受付に到着。
 「見学ですか?」
 受付のお姉さんが俺たちに声をかける。
 「Yes I do」
 英語の使いどこが可笑しいと思います。でしたよね」
 「それではここに名前を記してから中にお入りくださいませ」
 「私が記しとくー」
 犬川に任せると何をしでかすか、気が気だ。
「ここれでいい?」
 犬川から用紙を受け取り注視する係員。
 「オーケーです、そちらのゲートからお入りできますがくれぐれも物を破損しないように注意してくださいね」
 犬川がゲートのノブをつかみ自分の方に引く。ゲートの先には壮観なロビーが広がっていた。
 ものすごい数の椅子と円テーブルに奥には巨大なステージが設置してあった。
 「説明がありますよ」
 入り口のすぐ横の壁に貼られている説明書を猿吉が発見したらしい。どれどれ。
 「ええと『古来から鬼族に支配されてきたこの街は百年前全世界の人類が集結して立ち上げた人類軍によって鬼族を追い払うことに成功したが、近年鬼族の再来により人類軍が当時本拠地として使用したこの宮殿は史跡として保存、展示している』だそうだ」
 「長い説明ね。もっと短縮できないのかしら」
 呆れた表情の犬川に対し、猿吉は腕を組んで何か思考していた。
 「鬼族の再来ですかー。私たちは確か鬼を退治することが目的でしたよね?」
 しまった完全に忘れてた。
 「ははーそういえば志乃が言ってたね」
 面白がって言う犬川が非常に憎たらしい。
 「この宮殿を散策すれば鬼族の情報が掴めるかもしれないぞ」
 「忘れてた人が何を言っても開き直りにしか聞こえないね」
 犬川の言葉が刺さるが堪えよう。
 「そして俺達は宮殿散策を始めて一通りしたところでロビーに戻ってきた。
 「要するに鬼ヶ島に鬼族はいるからそこに乗り込めば全滅できるわけだ」
 これが俺の編み出した最終的な筋道だ。
 「でも鬼ってそんなに悪いことはしてないよね、一部の鬼が独裁政治をしたばっかりに悪にされ
るんだから理不尽よね」
 ほんとにその通りだ。人類も鬼との共存は諮れなかったのだろうか?
 「このロビーで鬼退治の誓いが詠まれたそうだが私たちは共存を目指して誓おう!」
 他の人の視線がこちらに集まってくるのが気恥ずかしいがグッと堪える。
 俺達は新たな目的地と野望を手に入れ宮殿を後にして街に戻った。

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