桃太郎になっちゃた?

青キング

宣戦布告

 スイーツ大会の決勝進出をいまいち喜べない自分がもう一人いる。
 この程度のことで嬉しいのか? 腐ったなお前も、とか言っている。
 確かにこの程度で満足いかないもっと強者と、そして頂点に立つ!
 脱衣室で着替えながら勝利に飢える。
 「おー志乃ではないか」
 脱衣室を出ると丁度猿吉も脱衣室から出てきた。
 妙に新鮮な気がする。あ!
 「髪を縛ってない!」
 一瞬目を大きく見開いた猿吉。そして目を細くし俺の顔を凝視し始める。
 「あか抜けしたか?」
 「湯船にも浸かったし全身洗ったからな」
 猿吉は俺から目を離して脱衣室の方を伺う。
 「遅いぞ未知!」
 少し声量を上げ犬川に聞こえるように言い放つ。
 「少し待ってくださいよー」
 猿吉は呆れたように大きく溜め息。
 そして、また俺の様子を伺う。
 「どうしたんだ志乃?」
 「えっ・・・・・・いや別に」
 「何かやましいことでも考えてるのか」
 訝しいのか目を細くして凝視してくる。その刀で俺を木端微塵にするのか?
 「ごめん遅くて、あれ? 二人ともどうしたのフェイス見合って」
 なぜ英語?
 「揃ったことだし戻りますか」
 犬川に促されて俺たちもあとを続く。
 猿吉が隣を歩く。ストレートの髪型も似合ってて可愛いな。
 「なんだ志乃?」
 「いや別に」
 俺は素早く視線を逸らす。煩悩よ鎮まれ。
 反対側から堂々としていて品のある三人組の女性が向かって来ている。
 向こうの一人が俺たちに気付く。そして俺達に風格を漂わせて歩み寄ってくる。白いドレスに身を包み長い金髪をたなびかせ、お嬢様だろうか?
 「こんにちは」
 「あんたたち誰?」
 三人組の先頭に立っていた女性が犬川に対し深々と頭を下げる。
 それに対し犬川は初対面から強気で接待する。品の差が明らかに違う。
 「決勝進出致しましたマキエリと申します。わたくしの右にいらっしゃるのがキジミエル。左がワレイと申します。あなたがたは」
 「私の名前は犬川 未知。私の右にいるのは」
 「私は猿吉 萌だ」
 犬川の奴、相手の言葉を先読みしてやがる。それに加え突然、猿吉に自己紹介を促せるんだから手がつけられない。
 「わたくしは猿吉さんの隣にいらっしゃるお方に興味があるのです」
 え? 俺?
「私達には興味がないと?」
 犬川が少し怒りっぽく女性に尋ねる。
 「そうです。あなたたちが決勝に進出出来たのもすべてあの方のおかげでしょう」
 右手の拳を握りしめ怒りを抑える犬川。まぁでも言う通りなんだけどね。
 でもお前たちが居なかったら俺は今、こんなに恵まれた境遇を過ごせなかっただろう。
 だからありがとう。
 「なら私たちが勝ったら認めなさい私の実力を」
 お嬢様らしき人はニヤリ、と嘲笑う。
 「いいでしょうその代わり、わたくし達が勝ちましたら・・・・・・あなたお名前はなんですの」
 お嬢様らしき人は俺に顔を向け自己紹介を促す。
 「俺の名前は鷲川 志乃」
 「志乃様をいただきますわ」
 はい? 何を言ってるんだこの人は。
 「これは宣戦布告ですので逃げるのは許しません」
 怖い目付きで犬川を睨んで、バスルームの方に向かっていく三人組。宣戦布告か。
 「未知どうするんですか」
 「ごめんね・・・・・・私のせいで巻き込んじゃってほんとにバカだよね」
 犬川は申し訳なさそうに視線を伏せる。お前は悪くないと思うけど。
 「大丈夫だ俺がいる限りスイーツに関しては負けるわけがないそれに・・・・・・」
 「もういい分かった」
 すべて言い終える前に会話を遮断される。なんだっていうんだよ。
 そしてついに始まる決勝戦。一人一人が違った希望のために頂点を狙う。
 俺はそんな簡単に終われない戦いがもう始まっていることを知っていた。

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