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異世界リベンジャー

チョーカー

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 『魔王』の総魔力量。
 その膨大な魔力を衝撃に転換させて、自身の体を爆弾へ変えるつもりか?
 だが……

 「なぜだ!もうナシオン軍は撤退している。いくら魔力を破壊に使っても無意味じゃないのか?」

 既に、周囲には人がいない。
 この場にいる人間は俺と『魔王』の2人になっている。
 ……だとすれば、俺を殺すためだけに自爆するつもりなのか?
 いや、それこそ……なんのために?

 思考が停止する。
 腹に衝撃。
 いつの間にか、間合いを詰めた魔王の拳が、俺の腹部にへめり込む。
 いや、正確には拳ではない。
 オープンブロー。
 拳を握らず、開いた状態でのパンチ。あるいは掌底や掌打。
 従来、ボクシングなどではインパクトの瞬間に力を入れるのが正しいパンチの打ち方。
 しかし、インパクトの瞬間に力を抜き、緩やかな速度での打撃は、腹部に対して衝撃が通る。
 耐えきれず、前のめりに体が傾いた。
 下から跳ね上がってくる物体が見える。それは『魔王』の膝だ。
 片手を顎下に潜り込ませ、ガードを固める。
 しかし、衝撃。視点は空へ。
 俺は……ダウンしたのか?
 空に影がさす。『魔王』の踵が視点を覆う。
 あぁ、靴は履いてるんだ。革で高そうな靴……

 ―――ダン―――

 直後、顔面に衝撃が走る。
 1撃 2撃 3撃 止まらない。
 4撃目、足首を掴んで止める。
 強引に引き剥がされる。そのまま、サッカーボールキックが続く。
 ガードした腕が破壊されるような衝撃。しかし、蹴撃は終わらない。

 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 俺は雄たけびを上げながら魔力を放出。周囲に衝撃波を発生させ、追撃を防ぐ。
 立ち上がると同時に剣を振るう。 『魔王』は衝撃波を受け、よろめいていた。
 しかし、当たらない。さっきまでの動きのぎこちなさが嘘みたいに消え去っている。
 攻守一転し、俺の連撃を避ける。 避ける。避ける。避ける。
 ――――ぎこちなさが消えた?
 魔力の膨張が止まっている。限界値を迎えたのか?

 「なぜだ?お前が自爆しても、殺せるのは俺だけだぞ?そのために死ぬつもりか?」

 返事は帰ってこないだろう。それは分かっている。けれども――――聞かずには言われなかった。
 しかし――――

 「いや、自爆するつもりなんてないが?」

 返事は帰ってきた。 しかも、予想外の返事。

 「……自爆するつもりがない?それじゃ、何をするつもりだ!何を企んでいる!」

 俺は跳躍すると同時に剣を走らせた。
 跳躍の勢いのまま、突きを放つ。
 金属音が鳴り、俺の突きは弾かれた。
 下から上に、突きに対して横薙ぎで弾く攻守一体の技。
 俺は知っている。その剣技の使い手を――――
 その技は、俺が自身が使う技と同等の物だった。
 同等?いや違う。俺だからわかる。それが使えるのは、この世界で――――異世界で1人だけだからだ。

 「流石に見事な剣技だな。……ユズルよ」
 「なっ―――――」
 「この魔力は、自爆するためのものではない。ただ儀式にために必要なだけよ」
 「……」

 俺は動けなくなっていた。俺の予想が正しければ……『魔王』の正体は……

 「ユズル。よくぞ……よくぞ、ここまで強くなった。過去、最強を名乗れる出来だ」
 「……」
 「うむ、私の――――いや、俺の正体に気づいたようだな」
 「……」
 「私たちは――――俺たちは、意志を受け継いでいる。全ての終焉を可能とするためにだ」
 「……全ての終焉?」
 「次は、君の番だ。7代目を世襲するがいい」
 「7代目?いや、7人目という事か?」

 「その通り、見よ」と『魔王』は空を指差す。
 何もないはずの空間。……何もないはずだった。
 空間が淀み、捻じれ、裂けていく。

 「なんだ?あれは?」
 そう言いながらも可能性にはたどり着く。
 『魔王』が固有する魔法。パラレルワールドを移動するという魔法。
 しかし、それは……

 「うむ、世界に1つしか存在しない物体が、重なりあった矛盾。世界の修正力が働き、やり直しを要求しているのだ」

 そう言うと――――『魔王』は剣を捨てた。
 一体、何人の人を殺めれば、そのように変化したのだろうか?
 かつて、白い輝きを見せていた剣は、血で塗られ黒く変色していた。
 言ってみれば、色が変わっただけ。それだけで、俺はその剣がわからなくなっていた。
 それは――――その剣は、彼の言う通り――――

 「聖剣 魔人殺し」

 俺は、既にすべてを理解している。
 しかし、それは、あまりにも、漠然としていて、現実感の欠片もなく、酷く残酷で―――――

 「こい!ユズル!俺たちの屍を越えて、力を受け継ぎ――――今度こそ、全てを解放しろ!」

 雄たけびに近い『魔王』の声。
 雄たけびに近い俺の叫び声。

 今度こそ――――俺の剣は『魔王』を貫いた。


 受け継がれていく魂と精神。
 志半ばで命を散らした男の記憶が、俺に流れ込んでくる。

 見知らぬ土地。気がつけば地下牢へ閉じ込められていた。
 あまりにも拙い脱出劇。
 そこで彼女と出会った。その時、初めて守ろうと思った。
 何を?彼女を?
 たぶん……それだけではなかった。
 この世界を守りたかったんだ。


 ――――暗転


 「おっ、目が覚めたかい」

 目が覚めると同時に、いきなり声をかけられた。
 驚きのあまり、体を跳ね起こすと――――

 「いっ痛っ!」

 全身に痛みが走る。

 「おいおい、無茶をすんな。あんた魔人だろ?普通の人間なら3回は死んでる傷だぞ」

 再び、横たわった俺は、周囲を見渡す。
 男が1人、椅子に腰かけている。白衣を身に纏っている。
 医者?どうやら、ここは病院らしい。

 「心配するな。ここは魔人の保護も行っている。一緒にいた子供も無事だ」
 「こ、子供?」

 全く、心当たりがない。

 「なんじゃ?おまえさんが庇ったとか言ってたがな?記憶にないのか?確か……そうじゃった。子供の名前は……」
 「わたしのおなまえはみどりだよ!」

 !?いきなり、甲高い声が部屋に響く。
 それと同時に勢いよく子供が入ってきた。

 「……みどり?みどり……おぎわら?みどり?」
 「うん、わたしはおぎわらみどりだよ?あれれ?おにいちゃんになまえをおしえたかな?」

 その名前は―――
 かつて戦い、この手で殺した女性の名前。
 そして、たぶん、同一人物。

 「なんじゃい。やっぱり知っているじゃないか?おまえさんの子供かい?」
 「……いや、違うけど」
 「冗談だよ。つまらん奴だな」

 そう言って医師は席を立つ。どうやら、病室を後にするみたいだ。
 ドアを開き、退室する途中――――彼は思い出しかのように振り返った。

 「そうじゃ、わしの名前はダージュと言う。ヨロシクな」

 そう言って遠ざかって行った医師。

 「コイツは悪夢か?」

 俺は頭を押さえ、ため息をつく。
 体内の魔力を確認する。そして、その量に驚いた。 
 自爆を連想させた『魔王』の魔力。どうやら、過去6人分の魔力を、俺は受け継いでいたみたいだ。  
 コイツが夢じゃなく、現実なら――――あの出来事は、まだ行われていない未来の出来事なら――――
 全てが無ならば、俺は元の世界に帰って、やり直しても――――

 「ねぇ、ねぇ、おにいちゃんのなまえはなんていうの?」

 ――――まだいたのか。このヤングみどり、あるいはロリみどりは?

 「……名前か。俺の名前は……いや、私の名前は『魔王』って言うんだよ」
 「そう、へんななまえだね」

 少女は屈託ない笑みを浮かべた。

 やがて、病室で1人になる。
 窓からは、太陽が沈んでいく様子が見える。大きな夕日だった。

 「さて……それじゃ、このクソッタレな世界に革命でも起こしてやるか!」

 俺は立ち上がっていた。
 ベットの横には、俺の衣服が畳まれていた。
 ボロボロで血で赤く染まっている。

 「むっ……コイツは流石に着れないや」

 そう言って、手にしたのは、立て掛けられていた剣だった。

   

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