異世界リベンジャー

チョーカー

VSオルド戦 完全決着

 オルドの威圧感が増していく。
 今まさに全盛期を迎えようとする最強の騎士。
 殺意や闘気が、彼から放出される魔力に乗って、実体化している。
 オルドを中心に竜巻が発生し、それが徐々に巨大化して行っている。
 まるで怪物。人間や生物を相手取るよりも自然現象と戦う方が近い。

 だが———— けれども――――

 俺はそれを迎え討たなければならない。
 既に『比類なき神々しい瞬間』は発動させている。
 魔力を眼球に送り込む。動体視力を強化させていく。
 それ以外は肉体強化へ魔力を送る。
 目的は反応速度の強化。しかし、それは焼け石に水というものだ。
 脳が反応してからは対処不能のスピード。
 必要なのは反応速度ではなく、反射速度。

 反射運動

 脳による認識を経緯する事なく、現象に対して体が動く運動。
 それを、意図的に―――全ての動きに起こす!
 脳の伝達速度。それすら、この戦いでは遅すぎるのだ。

 オルドが動く。 
 それに俺の体は、合わせて動く。


 ―――その戦いは、ひどく幻想的な戦いであった。

 剣を一合も交える事なく、一振りで決着を迎えたかもしれない。
 1000合を超える剣の乱打戦の末、決着を迎えたかもしれない。

 刹那の時間で決着を迎えたかもしれない。
 あるいは無限に思える時間の中で決着を迎えたかもしれない。

 その矛盾した現象の全てが同時に行われていたのかもしれない。
 あるいは、全てが当てはまらない戦いが真実なのかもしれない。

 それほどまでに――――

 その戦いは、ひどく幻想的な戦いであった。

 しかし――――
 全ての可能性は決着という結果に収縮されていった。


 俺は両ひざを地面につき、空を見上げていた。
 どうやら、意識を失っていたみたいだ。一体、どのくらいの時間、失神していたかはわからない。
 両手は出血が激しい。剣は―――聖剣『魔人殺し』は、俺の前に転がっている。
 腕は……動かない。回復まで時間がかかりそうだ。
 そして――――

 オルドは倒れていた。

 その肉体からは魔力を感知する事はできない。
 魂や生命力というものも感じられない。
 亡骸である。……それ以外に例える言葉はでてこない。
 もう、おそらくは、二度と立ち上がってくる事はないだろう。

 俺とオルドはどんな戦いを繰り広げていたのだろうか?
 もう思い出せない。
 ただ、オルドが浮かべている表情を見る限り――――
 彼に取っては、満足な結果だったのだろう……


 体は、ゆっくりと回復している。
 どうやら、オルドが兵を引かせていたのが幸いしたみたいだ。
 今なら、一兵卒相手にも打ち取られてもおかしくはない。

 「次は――――シェルが相手か……」

 俺は立ち上がり、空を見上げる。
 あの時と同じ飛来音が聞こえてくる。
 そして、それは落下してきた。

 破壊音

 落下の衝撃が突風を巻き起こし、砂煙を巻き起こす。
 地面には、あの時と同じようなクレーター。
 そして、クレーターから、ソイツが出てきた。
 起動音と駆動音。そして、無骨なフレーム。
 それはシェルのパワードスーツだった。

 

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