異世界リベンジャー

チョーカー

悪鬼羅刹

 俺は高所から戦場を眺めていた。
 抵抗する『魔王』軍に対して、ナシオン軍は取り囲むような布陣を敷いている。
 戦いが始まれば、短時間で決着となるだろう。
 俺は、そんな中に向かっていく。
 世界の命運は決まり、戦いは終結を迎え、人々は幸せを手に入れる事になるだろう。
 けれども――――
 そんな事は知った事ではない。

 草木が覆い茂る中、進軍を開始した俺の耳へ声が聞こえてくる。

「やっと戦争も終わりますね」

 若い声だ。どこかで聞いた事がある気がする。

 「あぁ、やっと戦争も終わるな。これでワシも引退だ」
 「またまた。どうせ、理由をつけては城に遊びに来るつもりなんでしょ?」
 「こりゃ、こりゃ、バレちまっているか」

 暖かい笑い声。複数の兵士がいる。
 そこに俺は、姿を表せた。ごく普通にだ。

 「なっ!お前は!」

 なるほど、良い訓練を受けている。
 彼らはすぐに対応して、攻撃を仕掛けてくる。
 まず、初老の男性が大きな盾で身を隠し、突っ込んでくる。
 片手には槍?いや、似ているが槍ではない。
 先がUの字の形状をした長物。敵の捕縛を目的にした武器。
 えっと…… えっと……
 名前が出てこない。
 必死になって名前を憶えだそうとしている間に俺の体が捕縛される。
 内側についた棘が、俺の体に刺さって痛い。
 そのまま、初老の兵士は前に、前に、と力を込めて進もうとしてくる。

 「あっ、そうだ!これサスマタって名前の武器だわ。思いだしたぜ」

 相手が、どんなに力を込めても、生憎ながら、俺には動いてやる義理はない。
 ビクともしない俺に対して、初老の方は顔が真っ赤にして力を込めている。
 その後ろから、足音が聞こえる。勢いのいい足音だ。
 初老の体で、自分の姿を消して奇襲をかけるつもりなのだろう。
 いいコンビネーションだ。場の荒れた戦場なら有効的な戦法。
 だが、足音が聞こえてたら意味がない。
 ジャンプして、若い兵士が姿を現す。
 なるほど、良いツラしてやがる。精悍って言うのは、こういう色男に使う言葉なんだろう。
 ソイツはそのまま、俺の頭上へ剣を振り落した。
 しかし、剣は俺にダメージを与えるに至らなかった。
 剣は俺に触れると同時に、砕け落ちたのだ。
 いや、剣だけではない。 俺を捕縛していた初老のサスマタも砕けている。
 そして、それぞれの武器の保有者も、その場で倒れた。
 武器が振れた瞬間に強烈な振動を叩き込んでやったのだ。
 暫くは立ち上がる事はない。

 「な、なにをした!」

 おっと!どうやら、もう1人残っていたみたいだ。
 その兵士は若い。少年と言っても良い年齢。
 しかし、怯えはない。しっかりと剣を構えて、俺を見ている。
 なるほど、こういう人間の事を勇者と呼ぶのだろう。
 「うぉぉ!」と彼は雄たけびを上げて切り込んでくる。
 良い踏み込みだ。全てを一振りに賭けたような気合。
 しかし――――

 「しかし、剣技は洗礼とは程遠い」

 彼の剣を避けると同時に手刀を一閃。彼の首を斬り取った。
 そのまま、地面に倒れたままの2人の首も斬り取る。
 斬り取った後に気がつく。

 「あぁ、どこかで見た事あると思ったら、アンタたちだったのか」

 彼らは、俺がこの世界に来て間もない頃、地下牢に閉じ込められている俺を見張っていた兵士3人組だった。

 「もう祝言とやらは、終わったのかい?だったらおめでとう」

 俺はそれだけ言葉に残して、他の兵士へと向かう。
 同情なんてしない。戦場に出た以上は、彼らも同等の事を行っていたかもしれない。
 だから、同情なんてしない……
 「……フッ」と自分の口から笑いが漏れた。
 『同情なんてしない』なんて、わざわざ思うなんて、どうやら俺は同情心を捨てきれていないみたいだ。
 それが面白かったのだ。 まぁ、他人には分からない面白さなのだろう。

 俺は次の敵に向けて、再び走り出した。

 

「異世界リベンジャー」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く