異世界リベンジャー

チョーカー

パワードスーツの過剰性能

 
 音がない。 気配がない。

 気がつけば撃たれていた。

 撃たれたのは額。衝撃で顎が跳ね上がり視線が空を向く。
 足から力が抜けていき倒れそうになるが、何とか堪える。
 対魔法用の結界は効かない。それは予想していた。
 ならばと、耐衝撃用の結界を展開していたはずなのだが……
 その結果、このダメージだ。
 すぐに背後を向け、次弾を背中で受ける。
 このまま、正面を向いたままだと、抱きかかえているモナルに被弾する可能性があるからだ。
 背中に受けたのは2発。
 凄まじい衝撃を受けた。思わず、口から空気の塊を吐き出す。それほどまでの衝撃。
 追撃は来ない。
 不可視の砲台は、3連発が限度か。
 シェルのパワードスーツ。その背面から機械音が大きくなっている。
 たぶん、次の準備。

 どうする?そう思考する間もなく、シェルのパワードスーツが前に動く。
 交戦は……難しい。
 どうにかモナルを守るために行動しなければ……
 交戦中にモナルが目を覚まさないように魔力を流す。
 リラクゼーション効果があるように精神系の魔法。

 そして……
 足から地面に魔力を流す。 二足歩行なら、急激な地面の変化に対応できまい。
 波のように地面のうねりがパワードスーツを襲う。
 しかし、パワードスーツは、止まらない。

 「チッ オートバランサーでも詰んでんのか?」

 俺は地面を蹴って、迫りくるパワードスーツと距離を取る。
 森の中、様々な障害物を掻い潜る。
 しかし、パワードスーツは、覆い茂る森林を破壊するかのように直進してくる。
 瞬発力。俺は小回りを利かせて、少しでも距離を取る。

 「……逃げきれないか」

 足を止め、魔力を形成する。
 作るのは炎の弾丸。火球だ。
 その大きさは拳大。数は5つ。
 魔力は、まだ十全とはいかない。けれども、戦うだけなら……
 パワードスーツとの距離、障害物はなし。
 狙いは末端。
 装甲が薄いであろう手足。さらには、関節部分。
 それらを――――一気に打ち抜く。
 しかし、パワードスーツは動きを止めない。そして、無傷。
 距離を詰められた!
 3本腕が俺とモナルの捕捉に向かって来る。
 わらわらと音がしそうな感じだ。
 余裕があるのは接近戦だからだ。直線的な動きなら、そっちが上だろうが、接近戦における旋回速度は――――

 こっちが上だ!


 パワードスーツの腕をすり抜け、背後に回り込む。
 そこは不可視の弾丸を生み出す所。蹴りを入れると同時に、衝撃の魔法を足から流し込む。

 「……効かないか」

 たぶん、今の俺は、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
 対魔人用兵器ならば、対魔法はもちろん、対衝撃性能も高いのだろう。

 さて、シェル式で言うならコスパの問題だ。
 魔人とタイマンして負けない戦闘能力を最低ラインの強さとして作られている。
 それは大量生産で作られた量産型の基本性能の話。
 だが、俺が相手している試作品。

 量産型と試作品。

 性能が上なのは、当然ながら試作品だ。
 大量生産するために費用が削られている量産型。
 実験用に、必要以上に向上させている試作品。
 コストパフォーマンスが低く作られている試作品の方が、圧倒的に強いのが当たり前だ。

 ……?
 思考に余裕が戻っている。
 ならば!

 魔力を水に変化させる。
 イメージは鉄を切断するウォータージェットの機械。
 水の刃物でパワードスーツを切りつける。
 しかし無傷。対魔力の結界性能は、魔人のそれを遥かに凌駕しいているようだ。

 「えぇい、ユズルくん。少々、鬱陶しいですよ。どうせ、ジリ貧に終わりますので早く投降してくださいな」

 シェルの声。
 どうやら、思い通りにならず、少しイラついている。
 俺はニヤリと笑い……

 雷撃!

 十分に水に濡れた表面は魔力の雷撃を内部まで流れる……はず。

 機械には過剰な水分と過剰な電気。
 そして、その効果はいかに?

 効果はなかった。

 

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