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異世界リベンジャー

チョーカー

死闘の終結

 クルスの周囲に魔力が満ち溢れている。

 俺は思い出す。

 火野烈弥との戦い。
 クルスは、10人の魔法使いから身体強化の魔力を受け、城の破壊を成し遂げた。
 ここでは10人分の魔力とはいかないのだろうが、それでも単独で十分な魔力を身体強化に回している。


 俺は思い出す。

 ここに来て間もない頃に行われたクルスとの戦い。
 彼女の放った突き技を弾き、一撃を与えた事を。

 ……できるのか?あの時を同じ事を
 白刃に白刃をぶつけて軌道を変える。そんな神業を再び…… 

 いや、できなければ終わる。
 俺は、この戦いが始まってから初めて鞘から剣を抜く。
 音が消え、自身の呼吸音だけが残る。
 やがて呼吸音も消え、無音が訪れた。
 そして……来る。
 彼女の最高最速最強の一撃。
 必殺技かならずころすという概念に引き上げられた突き技。
 
 例えば野球。
 バッターは、飛んでくるボールを見てから振っているのではない。
 むしろ、投げるピッチャーのモーションにタイミングを合わせて振るうのだ。
 そして、バットを微調整してボールを捉える。
 だから、俺もクルスの突きに合わせて、既に剣を振るってなければならない。

 そして決着。

 俺の振るった剣は、クルスの剣に掠るかする事もなかった。
 それなのになぜ?
 俺の剣はクルスの胴体にめり込んでいて、クルスの剣は俺に触れてなかった。

 「空振り?いや、そんな……」

 外した?いや、クルスが外したのだ。……いや、そんな事よりも!
 後ろに倒れていくクルスの体を慌てて抱きしめた。

 「なんで、お前……こんな事を?」

 俺はクルスの体に魔力を流して治療、治癒魔法を行う。
 しかし、弾かれる。 クルスが着込んでいる防具が魔法を弾いているのだ。
 普段の俺なら、強制的に大量の魔力を垂れ流し、回復させられるのに……

 「そうだ!クルス。解毒剤はないのか?俺の魔力が戻れば……」
 「いや、いらない」
 「……いらないって、お前!」

 クルスは力なく首を横に振るう。

 「わかんねぇよ。お前が何をしたかったのか?どうしてこんな結末になっちまっているのか?……わかんねぇよ」
 「……これしかなかった。私の実力不足で返り討ちにあったとすれば、許されると思ったんだ」
 「許されるってなんだよ!許すとか、許されないとか、誰が言ってんだよ!」

 自分の感情がコントロールできない。瞳から大量の涙が流れ出てくる。
 それでも、効果が薄くても……俺は治癒魔法を行い続ける。

 「必死なところで、申し訳ないんだが……」とクルス。
 「なんだよ」と俺は答える。

 「最後の頼みだ。所謂、遺言ってのを貴殿に託したい」
 「何言ってやがる。死なせねぞ。絶対に!」
 「いいから聞け」
 「……」

 気迫がこもった声に押され、俺は声を止めてしまった。

 「私は、こうするしかなかった。でも、せめてモナル様だけは……」
 「モナルにも何かあるのか?」

 まさか、モナルも何か、追い詰められ、仕込まれているかの? 

 「いいや、そうじゃない」とクルスは力なく笑う。
 そして――――

 「頼む。モナル様を城から連れて出して……2人で逃げてくれ」
 「バカ、行くならお前も一緒だろが!」
 「……あぁ、それはいいな。みんな一緒で……だったらユズルの世界にも行ってみたいな」
 「いけるさ。みんなで行こう一緒に!」
 「そうか。それは……楽しみだな」

 それを最後にクルスは――――
 瞳を閉じて、二度と立ち上がる事はなかった。
 

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