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異世界リベンジャー

チョーカー

戦闘狂達の宴

 まるで夏の海みたいだ。緩やかな、そよ風が吹いている。
 おっと、騙されてはいけない。見た目は、そよ風のような優しさを内包して見れるかもしれない。
 でも、本当は空気を突き破るのが目的の突風だ。ほら、通過した後の風切音は荒々しいだろ?
 烈弥の拳が通過していくのを眺めながら思った。
 荒々しい。そんなに荒いなら、その通り道に俺が拳を置いたら……ほら!
 あれ?どうした?なんで、そんなに驚いているんだ?
 嗚呼、そうか……俺とお前は戦っていたんだよな。
 なんで忘れていたんだろ?


 俺の『比類なき神々しい瞬間』
 烈弥の『魔剣はまぐり』によるブースト。
 その戦力差は互角。いや、基本スペックの上昇率だけなら、俺の方が上。
 底上げされた魔力。それによって引き上げられた身体能力。
 感覚は、世界をスローモーションに見せている。まるで時間軸が違うみたいだ。
 それらを持っても烈弥は互角に立ち振る舞っている。
 対魔人戦の戦術論。烈弥が持つ、そのセオリーが、その経験則が俺を攻め倦らせる。
 サイドキックで距離を稼ぎ、強引に潜り込もうとすれば、強打を振り下ろしてくる。
 待ち戦法か。そう思って距離を取って力を抜いた瞬間。
 タイミングを狙っていたかのように烈弥が前に出てくる。いや、実際に狙われていたか。
 組技?いや、それよりも間合いが近い。0距離だ。
 サブミッション。立ち関節の攻防が始まった。
 嗚呼、やらしいな。打撃勝負じゃ、目の良い俺が有利だと判断したか?
 いいぜ、やり合おうじゃないか。お前が嫌がって、自分から逃げ出したくなるくらい付き合うぜ。

 ……いや、なんだ?
 俺は一瞬、奇妙な違和感に囚われた。

 しかし、烈弥は待ってくれない。俺の体に巻き付いてくる。
 烈弥の動きは、まるで蛇のよう……いや、違う。違うな。蛇みたいな良いものじゃない。
 どちらかと言うとウナギだ。ヌルヌルと動き、こちらを掴まさない。
 ほら、俺の片腕に体重を預けたと思ったら、飛んできた。

 飛びつき式腕十字。

 空中で腕十字固めを極めてしまう瞬間芸。
 俺はもう一本の腕で自身の腕を庇い、腕十字を防ぐ。
 これが、真っ直ぐ伸びちまうと肘関節の可動域を超えて、腕が壊されてしまう。
 烈弥は俺の腕にぶら下がっている状態。そのまま、重力に任せて、俺は烈弥を地面にぶつけようとする。
 しかし、腕から体重の重みが消える。烈弥は、自ら両手を放し、頭から地面に落下していく。
 その途中、烈弥の腕が、俺の脚へ絡みついてくる。
 今度は足関節。ヒールホールドだ。
 両足で俺の太ももを固定。わきで足のつま先をロック。
 俺の足首を捻じり切ろうとしてくる。
 そうはさせまいと、がら空きになっている顔面に魔法を撃ち込む。
 それは具現化させた拳サイズの岩。それをその顔面に打ち込んでやる。
 隕石を彷彿させる勢いの岩。だが烈弥にぶつかる直前に弾かれる。
 体の周囲に不可視の防御壁を作っているのか。
 しかし、岩の着弾を弾けても、衝撃を完全に殺し切れていない。その様子が烈弥の表情から読み取れた。
 そのまま、連続して岩を打ち込み続ける。

 1発2発3発……まだ外さない。

 4発5発6発……烈弥の腕が緩む。

 7発8発9発……烈弥の技は解けた。

 烈弥は逃げるように距離を取る。そうはさせないと距離を詰める。
 前に出る俺に合わせて、今度は烈弥も前に出る。
 カウンタータックル。両足を刈り取られ、宙に浮く。
 そのまま、背中が地面に叩き付けられる。
 烈弥は馬乗りマウントポジションを取りに来る。……いや、違う。
 予想外の衝撃に息を吐き出す。水下みぞおちに膝を落とされたのだ。
 そのまま、体重をかけられ、ニーオンザベリー。膝で相手の動きを固定化するポジショニングだ。
 今度は、俺の顔面に烈弥が狙いを定めている。烈弥の火球が降り注いでくる。

 1発 2発 3発 4発 5発 6発 7発 8発 9発

 俺も烈弥がやったように防御壁で防ぐ。けれども熱風までは防げない。
 一撃毎に襲い掛かってくる熱量に意識が刈り取られかける。
 その一瞬、判断力が低下したを狙われた。気がつくと烈弥の右腕が俺の胸に当てたらている。
 ……0距離魔法!?防御壁をすり抜けた位置から魔法を発射させる気か!
 俺は左右に回転して逃げようとする。させまいとする烈弥。
 俺の腹部にのしかかっている膝、動きを止めるそれを腕で払う。それと同時に横回転で回りスピン。烈弥の拘束から逃れ……

 ―――悪寒が走った。

 仰向けの状態になり、そのまま距離を取ろうとする俺。
 その背後に、ウナギが襲い掛かってくる。
 黒光りしていて、長くて、太い、極上のウナギのような腕が俺の首に絡みついてくる。
 その刹那、烈弥の作戦を悟る。
 最初に感じた違和感の正体。
 それは―——

 『なぜ関節技の勝負なのか?』

 という事だった。
 いや、打撃勝負よりも勝算があるからと言ってしまえばそれまでかもしれない。
 だが、俺たち『魔人』は自身の肉体を変化できる。
 関節の可動域も思いのまま、つまり関節技は無効な体なのだ。
 それでも、どうして関節技を狙ってきたのか?
 それは、前提が違うのだ。烈弥が狙っていたのは関節技の攻防ではなく、寝技グランドの攻防。
 そして、真の狙いは絞め技か!?
 いくら、ダメージを受けても超回復と治癒魔法で決定打にならない。
 ならば絞め技で意識を刈り取ろういう作戦か。
 俺の首に滑り込んで、頸動脈を絞めようとする烈弥の腕。
 俺はアゴを引いて首の深部まで腕が入り込むのを防いだ。
 烈弥の右腕は、俺の首へ……左腕は……
 額部分を烈弥の左腕が巻き付いた。そのまま、俺の頭を後方へ反らし、広がった首に腕を入れ込むつもりだ。

 耐える。耐える。耐える。
 まるで万力で頭を絞められているみたいだ。ギリギリと頭が軋むような幻聴が聞こえてくる。
 首を狙ってくる腕を、俺は両手で掴み剥ぎ取ろうとする。
 動かない。ここ一番の怪力を絞り出されているみたいだ。
 ならばと、頭部の真後ろにあるであろう烈弥の顔面を攻撃する。
 目つぶし。俺の親指が烈弥の目を狙うも、まぶたで塞がれる。
 構う事はない。まぶたの上から圧力をかけてやる。
 烈弥の嫌がる動作。その僅かな隙をついて、烈弥の腕を剥ぎ取り、寝技グランドの攻防から脱出する。
 「……また振り出しか」
 烈弥はクックックと笑う。しかし―——
 「いや、そろそろ終わりだ」と俺は否定する。
 「なに?」と烈弥は訝し気な表情を見せた。
 「俺の『比類なき神々しい瞬間』には制限時間があるみたいなんだ。今も脳が煮えたぎった湯豆腐みたいに煮崩れしそうだ」
 俺の強化された脳の回転速度は、残り時間を正確にはじき出す。
 死の直前という究極的な状態でのみ許された魔力と知能の上昇。
 時間と供に効果が減少していくのは、当たり前の理屈だが、それ以上に限界を超えて使用し続けている脳へダメージが刻まれ続けている。
 「残り時間51秒。これを超えれば、俺の体は完全に停止する」
 なぜ、それをわざわざ宣言したのか?そう烈弥は問いかけてきた。
 さぁ?なぜだろうか?たぶん―——
 「明確な勝ち負け……勝敗の決め方を共有したかったんじゃないかなぁ」
 「勝敗の決め方?」
 「あぁ……今から俺は、残りの時間を攻撃に費やす。防ぎきればお前の勝ちだ」
 「ふん?それを聞いた俺が、やすやすとお前に攻撃をさせると思うか?」
 「思うよ」俺はあっさり言う。駆け引きでも、ハッタリでもない。
 「今から俺が仕掛ける技は、再現できれば回避不能。だから―——

 防いでみろ!」

 最後を声を荒げて、俺は前に出る。
 最後の魔法を発動させながら……

 
 

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