異世界リベンジャー

チョーカー

VS火野烈弥戦 終結

 驚き……この戦い始まって、何度目か?烈弥は驚きを顕わにする。
 魔法再現。
 あらゆる魔法を再現するという『魔人』に取っても再現不可能な魔法も存在している。
 大規模な儀式を用いた魔法を再現するには、同じ儀式が必要だ。
 そして、魔剣といった特別な道具を媒体に使用する魔法。
 しかし、今ならできる。脳の計算速度が桁外れに跳ね上がっている今なら―——
 俺の体がぼやけていく。
 幾度もの影が重なって、周囲にその認識を狂わせていく。

 「その動きは―———蜃気楼だと!?」

 俺の魔法の正体に気がついた烈弥が叫ぶ。
 それは烈弥が使う魔剣はまぐりを媒体とした魔法。その効果が俺自身の体に現れている。
 実像と幻像。それを利用した攻撃は接近戦において、猛威を振るう魔法だ。

 俺は間合いを一気に縮め、右の拳を振るう。
 烈弥は両腕を上げ、防御する。
 しかし、不可視の攻撃が既に烈弥の顔面を捉え終えていた。
 頭部が後方へ反れていく、追い打ちのハイキック。
 俺の攻撃に反応して、彼はガードを上げるが…… 
 ガードと接触した瞬間に俺の脚は消え去る。
 本物の脚は軌道を変え、がら空きの腹部へねじ込んだ。
 後はもう……烈弥は俺の攻撃に反応できない。
 左拳がこめかみテンプルを強打。
 打撃の勢いのまま、横側に烈弥の体が沈んでいく。
 だが、させない。すくい上げるようにアッパーカット気味の掌底を打つ。
 そして、無防備な胴体ボディをつるべ打ちにする。
 足から崩れ落ちていく、その体―——しかし、眼は死んでいなかった。
 俺に向かって抱き付いてくる。その速度は、まるでバネ仕掛けの玩具の勢い。
 さっきの寝技グランド狙いとは違い、猛打を防ぐためのクリンチ。
 俺の攻撃に耐えきれば勝ち。その考えは正しい。
 だが———
 烈弥が抱き付いた俺の体は雲散した。
 既に俺はそこにいない。
 事前に察知した俺は、大きくバックステップ。十分な助走をつけ、飛び上がっていた。
 真空飛び膝蹴り。
 インパクトの瞬間、膝に大きな反動は伝わる渾身の一撃。
 それは正確に烈弥の顔面を貫き。彼の体を遥か後方へ吹き飛ばした。
 残心。反撃に備え、隙を残さない。 
 やがて、戦いの気配が消え失せたのを確認して、構えを解く。
 『比類なき神々しい瞬間』
 その残り時間を44秒残し、戦いは終結した。


 「本当にそれで大丈夫なのか?」 
 俺は不安の声を上げる。相手はクルスだ。
 治療を終え、意識を取り戻した彼女は、意識を失った烈弥に手錠をかけている。
 ついでに足枷もだ。しかし、それは俺が閉じ込められていた時に使用していたアレだ。
 魔力を封印する効果がある道具、魔具という……らしいが……
 俺が封印された時は、俺の魔力が、封印できるキャパシティを超えてしまい、簡単に壊れてしまったのだ。
 「大丈夫だ。問題ない。 前回の教訓を生かし、強化に強化を重ねた結果、耐久力と魔力吸収量を大幅に向上させたらしい」
 ふ~ん、なるほど。それじゃ安心しておこうか。
 「まぁ、念のためにもう一つ。二重につけておこう。
 そう言えばユズル。ユズルの世界だと、こういう場合に相応しい言葉があるそうだな」
 ん?どの言葉の事だろうか?
 「『念には念を』とか『石橋を叩いて渡る』か?」
 「いや、違うな。私が習った言葉は『今ならもう一つ、同じ物を御付けして御値段据え置き、送料手数料は当社が負担します』だ」
 「テレビショッピングじゃねぇか!?どこのどいつが伝えた!」
 思わず、叫んでしまった俺にクルスは「ムッ!」と言う。
 「何だ?何か意味が誤って伝わっているとでもいうつもりなのか?」
 全く持って、その通りでございます。
 烈弥の拘束が終わるまで、その説明をせざる得なかった。
 「しかし、こんな物まで、どうやって気づかれずに運び込んだ?」
 俺の目の前には、牢屋があった。これまた、俺の時に使われた鳥籠型の牢獄。
 しかも、移動式らしく、四輪駆動のタイヤがついている。
 「いや、いくらなんでも、こんな物をこのままの状態で持ち込めるわけないだろう」
 「ん?それじゃどうやったんだ?」
 「元々、この領土にいる協力者の元にばらした部品を送って、組み立てさせた物だ」
 なるほど。そりゃそうか。
 「さぁ、帰るぞ。凱旋だ」とクルスは移動式の牢獄を動かし始める。
 俺はクルスの声につられてナシオンの方向を見る。
 いつの間にか、この領土を覆っていた炎の壁は消え失せていた。
 烈弥の魔力が封印されると同時に炎が消えたのか?
 だとしたら、あの壁は、烈弥の魔力とリンクしていたのかもしれない。
 炎の壁は消え去った。その後に現れたのは、『魔人』たちの侵略を食い止めるために作られたという壁。その壁は、この世界の人類が、この領土を見捨てたという証でもある。
 いつの間にか、人々が集まってきている。この領土に住む者たちなのだろう。
 しかし、彼らは俺たちに近寄ろうとせず、こちらを窺っている。彼らの瞳には、歓喜の色も悲哀の色もない。ただ、無があるだけ。
 彼らにとって、支配者が倒せれた事は、自分たちにとって無関係な事なのだろう?
 わからない。この光景を見て、俺は何て考えればいいのかわからなかった。

  

 

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