異世界リベンジャー
『魔王』からの勧誘
そこには門がある。
室内にも関わらず、立派な門がそびえ立ち、左右に2人の門番がいる。
門番は不動だ。そばまで来ている俺に反応する事さえない。
人が近づいてきても無反応なのは、果たして門番として正しいのか?それは、よくわからない。
しかし、近づきすぎると―――
左右の門番が同時に動く。その手の持った長い槍を互いに重ね合わせ×を作り通せんぼをする。
その速度がとんでもなく速い。その動作を行うためだけに行われた鍛錬を感じる。
いつもの間にか虚空を見ていたはずの視線が俺を捉えていた。
その視線から意志が伝わる。例え、魔人の俺が相手でも通さない……と。
「えっと、中にクルスが入りませんでしたか?」
俺は普通に話しかける。しかし―――
「「・・・・・・」」
両者は無言。視線を俺から逸らし、槍を定位置に戻す。
「……えっと」
「「・・・・・・」」
彼らは無言だ。
何が悪いのか?前に来た時を思い出す。
「確か…あの時は…」
立ち位置は門の真ん中。背を伸ばし、踵を揃えて、手先を伸ばして……途端に門番が声を張り上げる
「「魔人 ユズル様 到着!! 」」
その直後
「「入出は許された!!」」
内側から重なった声が聞こえ、扉が開いていく。
なぜだろうか?視線を逸らし、無表情なはずの門番たちが笑って見えるのは……
いやいや、と頭を切り替え、室内に視線を移す。
内部は神聖な王室。
モナルのプライベート空間をは異なり、厳格で空気の重さを感じられる。
室内には、いつもの面々。
大魔導士ダージュ 探究者シェル 騎士団長オルドの3人。
奥にいるクルスは「何を道草をしてたんだ?」と言わんばかりの視線を送ってくる。
そして、部屋の中心にはそんな彼らを束ねるカリスマ性を醸し出す少女が1人。
王女モードのモナルだ。
彼女は俺を視界に捕えると、無言で頷く。
「皆、揃ったようですね。それでは、こちらをご覧ください」
モナルが促した先には、テレビが置いてあった。
テレビはキャスター付きの台の上にある。それを探究者シェルが、中央まで押して運んでくる。
いやいや……この世界にもテレビがあるのか? あまりにもなミスマッチな光景だ。
ファンタジーの世界に紛れ込んだ異物としか思えない。
すると、探究者シェルの説明がはじまった。
「これはテレビジョンという機械仕掛けのカラクリです。こちらのビデオデッキにVHSと呼ばれる記憶媒体を入れます。すると・・・・・・・」
急に画面に光が燈る。しかし、その画面から砂嵐の映像が流れる。
いや、実際の砂嵐ではない。テレビが映像の受信を行えない時に起きるスノーノイズと言われる現象だ。
「これはなんですか?」とクルスが不思議そうな表情を見せる。
どうやら、この世界でテレビは一般的な物ではないようだ。
クルスの質問に対して、探究者シェルの答えは―――
「これは『魔王』から送られてきた物です」
周囲の空気が変わり、強度の緊張感が生まれる。
そして沈黙。誰も言葉を発せない。音と言うものはテレビから流れ出る雑音だけだ。
沈黙から生まれる、重農な空気に耐えきれず、俺は立場を忘れて声をだした。
「そ、その『魔王』から送られてきた物って、大丈夫なんですか?」
道化を演じるため、慌てて余裕の無さを演出して見せる。
効果は不明だが―――
探究者シェルは俺の質問に答えた。
「もちろん、私と大魔導士ダージュ殿とで、入念に検査を行っています。その結果、危険性はないと判断されてます。もっとも、念には念を入れて、様々な状況を想定した対策を行ったうえで、運んで来たわけですが……」
探究者シェルの言葉は途中で途切れた。
テレビの画面が安定し、映像が流れ始めたのだ。
『ふっふっふっ。火野烈弥を破るとは……まずは褒めておこう』
画面の中心に現れた『魔王』
彼は、暗い室内。豪華な椅子に腰かけている。
そして、その周囲には複数の人間がいる。いや、人間ではないかもしれない。
おそらく、彼らの正体は『魔王』につく魔人たち。
『だが、火野烈弥は四天王の中でも最弱の存在。貴様らに負けるとは、我ら四天王の面汚しよ』
「・・・・・・」
いや、火柱、氷柱、樹木をそれぞれ支配している魔人が3人じゃなかったけ?
『魔王』本人も四天王入りしてるの?
「な…なんだと……あの火野烈弥ですら、最弱だというのか!?」
俺の横でクルスが大声を上げている。
回りを確認すると、皆、真剣に『魔王』の話を聞いている。
それぞれに驚き、焦燥感、怒りと言った感情が見て取れる。
だが、『魔王』の言葉が俺たちの世界ではネットスラングと使われていたものだと知っている俺の内心は複雑だ。
(コイツ、この状態でもふざけているのか・・・)
『さて、ここの力量の問題は兎も角、我々に取っての問題点は領土だ。我らが支配地域コワンが貴様らの手に落ちたと言うのは、死活問題。これから起きるであろう、貴様らとの全面戦争では大きな痛手になる。
―――そ・こ・で
火野烈弥を倒したという少年も、この映像をみているかな?確か…えっと……伊藤禅くんだったかな?』
不意に名前を言われて、心音が跳ね上がる。
『魔王』の映像は、記憶媒体によるもの。つまり、カメラのようなもので、こちらの映像を見ているわけではない。一方的に録画した映像をこちら側に送ったのだ。
しかし、『魔王』は、俺と会話をするように話かけてくる。
『君、我々の仲間に入らないかい?』
室内にも関わらず、立派な門がそびえ立ち、左右に2人の門番がいる。
門番は不動だ。そばまで来ている俺に反応する事さえない。
人が近づいてきても無反応なのは、果たして門番として正しいのか?それは、よくわからない。
しかし、近づきすぎると―――
左右の門番が同時に動く。その手の持った長い槍を互いに重ね合わせ×を作り通せんぼをする。
その速度がとんでもなく速い。その動作を行うためだけに行われた鍛錬を感じる。
いつもの間にか虚空を見ていたはずの視線が俺を捉えていた。
その視線から意志が伝わる。例え、魔人の俺が相手でも通さない……と。
「えっと、中にクルスが入りませんでしたか?」
俺は普通に話しかける。しかし―――
「「・・・・・・」」
両者は無言。視線を俺から逸らし、槍を定位置に戻す。
「……えっと」
「「・・・・・・」」
彼らは無言だ。
何が悪いのか?前に来た時を思い出す。
「確か…あの時は…」
立ち位置は門の真ん中。背を伸ばし、踵を揃えて、手先を伸ばして……途端に門番が声を張り上げる
「「魔人 ユズル様 到着!! 」」
その直後
「「入出は許された!!」」
内側から重なった声が聞こえ、扉が開いていく。
なぜだろうか?視線を逸らし、無表情なはずの門番たちが笑って見えるのは……
いやいや、と頭を切り替え、室内に視線を移す。
内部は神聖な王室。
モナルのプライベート空間をは異なり、厳格で空気の重さを感じられる。
室内には、いつもの面々。
大魔導士ダージュ 探究者シェル 騎士団長オルドの3人。
奥にいるクルスは「何を道草をしてたんだ?」と言わんばかりの視線を送ってくる。
そして、部屋の中心にはそんな彼らを束ねるカリスマ性を醸し出す少女が1人。
王女モードのモナルだ。
彼女は俺を視界に捕えると、無言で頷く。
「皆、揃ったようですね。それでは、こちらをご覧ください」
モナルが促した先には、テレビが置いてあった。
テレビはキャスター付きの台の上にある。それを探究者シェルが、中央まで押して運んでくる。
いやいや……この世界にもテレビがあるのか? あまりにもなミスマッチな光景だ。
ファンタジーの世界に紛れ込んだ異物としか思えない。
すると、探究者シェルの説明がはじまった。
「これはテレビジョンという機械仕掛けのカラクリです。こちらのビデオデッキにVHSと呼ばれる記憶媒体を入れます。すると・・・・・・・」
急に画面に光が燈る。しかし、その画面から砂嵐の映像が流れる。
いや、実際の砂嵐ではない。テレビが映像の受信を行えない時に起きるスノーノイズと言われる現象だ。
「これはなんですか?」とクルスが不思議そうな表情を見せる。
どうやら、この世界でテレビは一般的な物ではないようだ。
クルスの質問に対して、探究者シェルの答えは―――
「これは『魔王』から送られてきた物です」
周囲の空気が変わり、強度の緊張感が生まれる。
そして沈黙。誰も言葉を発せない。音と言うものはテレビから流れ出る雑音だけだ。
沈黙から生まれる、重農な空気に耐えきれず、俺は立場を忘れて声をだした。
「そ、その『魔王』から送られてきた物って、大丈夫なんですか?」
道化を演じるため、慌てて余裕の無さを演出して見せる。
効果は不明だが―――
探究者シェルは俺の質問に答えた。
「もちろん、私と大魔導士ダージュ殿とで、入念に検査を行っています。その結果、危険性はないと判断されてます。もっとも、念には念を入れて、様々な状況を想定した対策を行ったうえで、運んで来たわけですが……」
探究者シェルの言葉は途中で途切れた。
テレビの画面が安定し、映像が流れ始めたのだ。
『ふっふっふっ。火野烈弥を破るとは……まずは褒めておこう』
画面の中心に現れた『魔王』
彼は、暗い室内。豪華な椅子に腰かけている。
そして、その周囲には複数の人間がいる。いや、人間ではないかもしれない。
おそらく、彼らの正体は『魔王』につく魔人たち。
『だが、火野烈弥は四天王の中でも最弱の存在。貴様らに負けるとは、我ら四天王の面汚しよ』
「・・・・・・」
いや、火柱、氷柱、樹木をそれぞれ支配している魔人が3人じゃなかったけ?
『魔王』本人も四天王入りしてるの?
「な…なんだと……あの火野烈弥ですら、最弱だというのか!?」
俺の横でクルスが大声を上げている。
回りを確認すると、皆、真剣に『魔王』の話を聞いている。
それぞれに驚き、焦燥感、怒りと言った感情が見て取れる。
だが、『魔王』の言葉が俺たちの世界ではネットスラングと使われていたものだと知っている俺の内心は複雑だ。
(コイツ、この状態でもふざけているのか・・・)
『さて、ここの力量の問題は兎も角、我々に取っての問題点は領土だ。我らが支配地域コワンが貴様らの手に落ちたと言うのは、死活問題。これから起きるであろう、貴様らとの全面戦争では大きな痛手になる。
―――そ・こ・で
火野烈弥を倒したという少年も、この映像をみているかな?確か…えっと……伊藤禅くんだったかな?』
不意に名前を言われて、心音が跳ね上がる。
『魔王』の映像は、記憶媒体によるもの。つまり、カメラのようなもので、こちらの映像を見ているわけではない。一方的に録画した映像をこちら側に送ったのだ。
しかし、『魔王』は、俺と会話をするように話かけてくる。
『君、我々の仲間に入らないかい?』
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