異世界リベンジャー

チョーカー

動かぬ体

 地面との衝突。
 俺の体はゴムボールのように、跳ね上がる。
 そこ最高到達点は地上から2メートル……いや3メートルは跳ねたか?
 そのまま空中で回転、足から綺麗に着地を決める。
 着地の瞬間に荻原みどりと目が合う。 
 彼女の表情は忌々しい物を見るように不快感を顕わにしていた。
 ノーダメージだ。俺の体には、バックドロップの影響が皆無。
 一方、荻原みどりは、腹部から流血が見られる。

 バックドロップ。
 地面に叩き付けられる直前、俺は荻原みどりの腹部に手刀を突き刺した。
 結果、俺の体を固定していた荻原みどりの腕力は緩む。
 その瞬間、強引に荻原みどりの腕を引きはがし―――
 それと同時に対衝撃用の魔力を発動する。頭部に受けるはずの衝撃を無になるように相殺する。
 こうして、荻原みどりの攻撃を無効化したのだ。
 再び向かい合う両者。
 俺は、追撃を加えようと、前に出る。
 ―――しかし
 「……あれ?」
 俺の足から力みが消滅した。
 踏ん張りが効かなくなった俺は、バランスを大きく崩し倒れる。
 何があった?何をされた?
 体が動かない。
 いや、動きはする。動きはするが力が入らなくなっているのだ。
 麻痺?痺れ?
 だが、それは一体、いつ?どのような手段で行われた?
 毒?植物の毒か? 
 思考の回転を速める。次から次に可能性を推測し、排除していく。
 しかし、答えに行きつく時間まで荻原みどりは待ってくれなかった。
 うつ伏せ気味に倒れた俺の頭部を狙って来る。
 武器は木刀。 そのフォームは、まるでゴルフのスイング。
 頭部の直撃を両手で防ぐも―――
 衝撃、直後に生じる痛み。
 「うがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいたいたいいた……
 『痛い』という言葉が脳内を埋める。その言葉しか出てこない。
 俺の意識ではなく、痛みの根元から逃げろという本能が、荻原みどりからの逃走を俺の体に命じる。
 だが、ガードした両手は折れていた。そして、平衡感覚を失って体を起こす事ができない。
 まるで芋虫のように這いつくばって逃げようとする俺に、荻原みどりは木刀を振り落した。
 呼吸が止まる。口から何かが飛び出していくような錯覚。
 一瞬の思考停止。
 しかし、荻原みどりは待ってくれない。
 再び振るわれた木刀の痛みに、意識を無理やり鮮明にされる。
 連撃……いや、そんなにカッコの良いものではない。
 ボッコボコの滅多打ち。
 既に痛みを遮断し、体の修復に魔力を回している。
 けれども、荻原みどりの猛攻に回復が追いつかない。

 永遠に続くと思われた荻原みどりの猛攻に終わりが訪れた。
 それは、俺の死
 ……ではなく、単純に疲労によるものだった。

 現在の彼女は、木刀を肩に担ぎ、片手でお茶を飲んでいる。

 「何をした?」

 俺は捕縛されていない。そのままの状態で放置されている。
 その間、体のダメージを修復させている。
 本来なら、動ける程度には回復していた。
 しかし、動けない。体がいう事をきかない。

 「うん?『何をした?』って言われてもなぁ……何も特別な事は何もしてないさ」
 「何?何もしていない……だと?」

 馬鹿な。現に、俺の体は動かない。
 正直に答えてくれるとは思っていなかったが、それでも『何もしていないさ』はないだろう。
 そんな俺の困惑を感じ取ったのか、彼女は愉快ように笑う。

 「あんたが動けないのは、単純さ。脳にダメージを受けて脳震盪状態になっている。それを連撃で回復させないようにしているだけ……な?単純は話だろ?」

 「いや、違う」
 俺は断言した。
 「俺の体が動かなく直前、俺はあんたから物理的な攻撃を受けていない。それで、どうやって脳震盪なんて起こせる?」
 俺の体に異変が起きたのは、荻原みどりが狙ってきたバックドロップの直後。
 あの時に何かを仕掛けられたのだ。
 もしも、荻原みどりが、なんらかの魔法を使ったなら、俺の魔法感知に引っかからないはずがない。
 だから、俺は物理攻撃や魔法による現象ではなく、毒といった方法によるものだと考えたのだ。
 しかし、彼女は笑う

 「あんた、加速損傷って知ってるか?」  
 

「異世界リベンジャー」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く