異世界リベンジャー

チョーカー

荻原みどりの心情

  (……うまくいった)

 彼女は表情に出さず、内心微笑んだ。
 荻原みどりは確信した。伊藤禅は自分の作戦に引っかかり、ありもしない毒を注入されたと思い込んだ事を。 
 もちろん、彼女の腰に下げた小瓶もブラフ。中身は、ただの水に着色料を混ぜただけ物。
 全ては彼―――伊藤禅を騙すための小道具。 
 目を引くほどにわかり易い衣装。荒らしい口調。鈍器のように巨大な木刀。
 この舞台を引き立てるために用意した物に過ぎない。

 ――――――そう。彼女は信じていたのだ。
 彼が、自分の言葉を疑ってかかり、決して自分の言葉を信じないということを。
 彼女の言葉。その全ては真実。

 偶発的ではなく、必然的に加速損傷を起こす投げ技。
 何年にも及び、修羅の如く鍛錬によってのみ作り上げた神技。
 投げ技を成功するのではなく、防がれる事で本来の効果が発揮される技。
 技として見れば欠陥品としか言いようがない。 最初から防がれない投げ技を取得すればいいのだ。
 しかし、そんな、常識から大きく離れた技ではないと彼は……
 信じる?信じない?

 全てはこの日、この瞬間のためだけ。あの人のためならば――――
 私の命すら、厭わない。
 あなたは、きっと……私の正体に気がつかない。
 酷い人。 一度は命を救っておいて、私に死ねと言う。

 私は、大げさなモーションで木刀を振るう。
 何度も繰り返した一定のモーション。それは伊藤禅に攻撃を予告する予備動作。
 彼は、ふらつく体を酷使しながらも余裕をもって回避する。
 私がこの武器を選択したのは、予備動作の不自然さを消すため。
 形だけは木刀。そのサイズは自分の身の丈に合わない大きさ。
 大げさに力強く振り回しても、違和感はないだろう。
 まさか、殺しに来ている相手が、わざと避けれる攻撃を行っているとは――――――

 そして、その瞬間がきた。

 私の攻撃と弾こうと、彼は剣を振るう。その白刃に向かって私は、無防備な体を奉げる。
 冷たい金属の板が体に入り込んでくる。そして、その金属は、瞬時に熱を帯びた。
 まるで体が溶けていく感覚。 体内から液体が外に向けて排出されていく。
 あんなにも熱かったはずなのに、もう体が冷たくなっていく。
 ……あぁ、これも切腹って言うのかしら?


 

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