どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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……あれから数ヶ月後、短い期間だが、色んな事が起きたけど、俺は元気だ。

今は真冬の晴れの日、人間にとっては寒くて過ごしにくい気候。
だから暖かい格好をしてるんだが、それでも寒い!

「らっららっらっ君! おっおはっおはよう……です!」

さて、そんな中……数年間で変わった事を言って置こうと思う。
まずひとつめ、クータンを地上で見掛ける様になった。
しかも、カボチャの被り物をしていない状態でだ。
本当はオレンジ色のふわふわヘアーだったんだな。

「あ、うん。おはよ……と言うか今、昼だよ?」
「うぐぅっ……」

くははは、と笑ってラキュはポンポンとクータンの頭を優しく叩く。
さて、続いて二つ目の変わった事だが……。

「あ、らっ君とくーちゃん」

アヤネだ。

「やぁアヤネ」
「あっあやっアヤネ……さん、こっここっこんにち……わ」
「ん」

いつも通り、軽快な挨拶をするアヤネ……そのアヤネの髪型が変わった。
長い黒髪をバッサリ切ってショートヘアーにしている。

似合ってはいるが……心境の変化だろうか? 詳しくは聞いていないが、本人曰く「切りたかった気分」だそうだ。
まっまぁ……いつも通りのアヤネだ。
詳しくは聞かないでおこう、そんなアヤネは俺に普通に話し掛けてくる。

時おり、「浮気だめだよ」とか「シルク可愛いから男の魔物に寝とられるかも」とか有らぬ心配を掛けられる。
そんな事は無いから安心しろと言ってるんだが……聞きやしない。
まったく……相変わらず話を聞かない奴だよ、あいつは。

あ、アヤネと言えば……頼まれた伝言の事がある。
確か"この泥棒魔王"だったか? それをロアに伝えたら、苦笑いして「変な事を言うのぅ」といってた。
あっあはははは……まぁ、うん……あまり言って上げないでくれ。

まっまぁ、他の奴等も相変わらずで……無理矢理服を着させに来たり、ドM発言したり、「イケメン参上!」とか言って格好良く現れる奴もいる。

変わらない事は良い事だが、その大概が迷惑な事なんだよな。
はぁ……ほんと、疲れる毎日だよ。

「おぉぉい、シぃルクぅ」
「ん、ロア?」

と、そんな時だ。
ロアの声が聞こえた……今、俺がいるのは店。
現在進行形で仕事中、そんな時にロアがやってきたのだ。

「くふふふぅ……店内と言うのに、それ……きちんと着けてくれるのじゃな」
「……あっ当たり前だろ。大事な物なんだから」

悪戯に笑うロア。
真冬の城下街を歩いた来たせいか、顔が赤い。
そんなロアに……俺は、首に巻いていたマフラーを巻いてやる。

「おっおぅ。これはわらわがあげたマフラーじゃぞ? シルクが着けてないとダメじゃ」
「寒そうにしてるから巻いとけ、あっ後で返して貰うから」
「っ。くふふふふ……相変わらず割りに合わずキザな事をするのぅ。ヘッグと良い勝負じゃ」
「あっあいつと一緒にするな!」

あんなのと一緒? 冗談じゃない、俺はあそこまで格好着けてないぞ! と言うか、格好着けてるつもりも無いからな!

「まぁまぁ、落ち着くのじゃ」
「……」

慌ただしくしてる奴とは思えない台詞だな。

「シルク……」
「ん? なんだ」

そんなロアが突然、眼を細めてモジモジしだした。

「大好きじゃ!」

そうしながらの発言、もちろん周りにいた魔物達はヒートアップ。
ラキュはニヤニヤして、アヤネは「おぉ」と呟いて、クータンは両手で眼を覆ってる。

皆の目の前でこんな事言うなよ……。
で、ロアよ、なんだその顔は「次はシルクの番じゃぞ?」的な顔をするのは止めろ!

とは、思うものの……ここで言わないと後が怖い。
この数年間、ロアと付き合いこう言う場面があって、俺が無反応を決め込んだ次の瞬間、大泣きされた……その後、それはそれは酷い目にあった。

主にヴァームの手によって色々されたんだ。
後は説明しなくても分かるな? そんな事があったから俺は言うことにした。

いや、勿論……ちゃんと返すつもりではいた。
だっだけだ、ここには皆がいるし……はっ恥ずかしいから、言い辛いだけだ。
だっだけど、我慢しないと……嘘泣きかも知れないが、おっ大泣きされると、胸が苦しくなるんだ。

「おっ俺も……好きだ。何度も言わせんな……アホ」

だから言った。
顔を真っ赤にしながらな……その瞬間、更にヒートアップして、ロアが「ふおぉぉぉっ!!!!」と叫んで濃厚なキスをされた。

……と、こんな感じでロアに振り回される毎日を送っている。
これじゃ、付き合う前と変わらないと思うだろうが……変わった事が1つある。


俺とロアはあの時と違って、もう好き同士でいる。
だから、なんだかんだで毎日が楽しいよ、まぁ……振り回され過ぎて辛いって思う事が殆どだが……。

でも、そんな生活に馴染んで来てる俺がいる、ははは……なんだかんだで楽しいって事だな。

「シルク」
「なっなんだよ……」
「そっちの親に挨拶せんといかんな。勿論、わらわの親の方にもな」
「そっ……そう、だな」

くふふふふ、と笑った後、ロアはまた何処かに行った、それを見送り俺も仕事を再開した……。



と、こんな感じに告白して付き合ってからのロアとの生活。
これから色々な事があると思うが……まっまぁ、それは今後考えるとして、今は……。

落ち着いて仕事しよう、そんでもって……挨拶の事、ちゃんと考えよう。
挨拶しにいくのは大分先、だっだから落ち着け? 落ち着いて考えておくんだ。

頑張れよ、俺……。
と、異常な緊張感を感じながら仕事をした。
ほんと……親の挨拶、がんばろ。

だって何としても、結婚したいんだ、ロアと……幸せな結婚を!!

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