どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

470

「わらわもシルクを調べるのじゃ!」

ロアのまさかの発言に驚く2人、やる気に満ちた顔、そして……なにかやらかしそうな雰囲気が大いに感じる。
だから、ラキュとヴァームの表情はひきつった。

「さっきヴァームに頼んだのに、今度は自分が調べるんだ」
「うむ! なんかいてもたってもいられなくなったのじゃ」
「そっそう……」

やる気があるのは良い……だけど、嫌な予感がした。
ラキュの経験上、ロアのふとした言葉で大変な事に巻き込まれるのが多々あるのだ。

苦笑いしながら頬をコリコリ掻いて、ちらりとヴァームの方を見る。
そしたら、ラキュの方を見てくすりと笑った。
目で何かを語り合っている……なにかは知らないが。

「ロア様? 調べると言っても、どの様に調べるおつもりですか?」

と、そんな時だ。
ヴァームが切り出した。
調べるにしてもやり方がある、ましてやロアが調べようとしてるのは別世界にいる者。

調べ方は難しい、一体どうするつもりなのか? そんなヴァームの問い掛けに、ロアは、んー……と唸った後、何かピンっ! と来たのか、人差し指を立てて言った。

「それはあれじゃよ。ヴァームと同じやり方で調べるつもりじゃ」

わらわながら良い案じゃろ? と言いたげなドヤ顔。
まぁ、調べ方はそうなるだろう……だって、ヴァームは一度シルクを調べてきた。
つまり調べるのに成功しているのだ、だからその方法を真似るのは正しい考えだ。

だがしかし! ヴァームの表情が曇った。
眉をピクリと動かし固まってしまう。

「え、私と同じやり方、ですか……」

ロアから目線を反らすヴァーム、そんな仕草に疑問を感じて小首を傾げた。
そんなヴァームは続けて話した。

「私がどう調べたのか分かってるのですか?」
「いや、知らぬ」

質問を投げ掛けて見たら即答された。
そりゃそうだ、知るわけも無い。
ヴァームが調べてる間、ロアはずっと鏡を使ってシルクを見ていたのだから。

……と、ここでロアは疑問を感じた。
どうやって調べてきたんだろう? ラキュもそれが気になったのか、じぃ……と熱い視線を向けてきた。

だからヴァームは、こほんっと咳払いした後、どう調べたのかを言った。

「人間界に行ったのです。ここからでは調べようがありませんからね……」

ふふふ、と笑うヴァームはまさかの発言をした。
「え? 行ったの?」と小声で言いながら驚くラキュ……そして、口をあんぐり開けて驚くロア。

「なっなに! 行くの禁止されておったのに人間界に行ったのかえ?」
「いえ、私は行くのは禁止されていませんよ? だから行ってこっそり調べてきました」
「なん……じゃと」

まさかの事実、自分の知らない所で、まさかそんな事をしていたなんてまったく知らなかった。

「ずっズルい! なんでヴァームだけが良いのじゃ!」
「さぁ?」
「さぁ、ではない! くっそぅぅ……腹立つぅ」

あのくそ親父、ひいきしおってぇと思いながらギリギリと歯を喰い縛る。
自分だって、人間界に行きたいのに……ずるい、ほんとずるい!

「まぁ、それは置いておいて……ロア様は人間界への外出禁止が出てる以上、私と同じ方法は無理です、別の方法を考えて下さい」
「そんなもん考えられる訳もないじゃろうが! 難しい事を簡単に言うでない!」

ヴァームと同じやり方、と言うのは良い案だと思ったのに。
父の禁止事項のせいでいけない。
ぶっちゃけて言えば守らずに行けば良い、しかし……それをすると色々と面倒なのだ。

「ぐぬぬぅ……。側で見たいと言うのにぃ、歯痒いのじゃぁ」

禁止事項さえなければ直ぐにでも行った。
なのに行けない、ロアは脚を震わせてイライラする。

「姉上、もう諦めるしかないんじゃない? 父上の言う事守らないと、ほんと面倒な事になるし」
「うっうむぅ。確かにそうなのじゃがぁ……」

やはり行きたい、その想いは揺るがない。
だから考えた、何か良い案が無いものかと……。

「…………」

んー……と小さく唸るロア。
そんな主を見て、ヴァームは言った。

「ロア様、調査は続けます。必ずほしい情報は手に入れます。なので諦めてください」
「くっ。あっ諦めるしか、ない……のか」

ガクリッーー
ロアは床に膝をつけ落ち込んだ。
もう諦めがついたのか? そんな様子を見て。

「では、早速こっそりと見てきます。新たな情報期待してお待ち下さい」

ヴァームはそう言って部屋から出ていった。
去り際に一礼をして丁寧に出ていった。
これからストーカー紛いな事をする、と宣言した事については誰も突っ込まなかった。

「じゃ。僕も行くよ、姉上……くれぐれも変な気は起こさないでよ?」

そう言ってラキュも出ていった、最後に釘をさしたが……どうなるか怪しいものだ。
さて、残されたのはロアただ1人。

広い部屋に、1人残されたロアは、まだ落ち込んでる体制を保っている。
いつまでこのままでいるのか? そんなに落ち込む事なのか……。

「……くふっ」

そう思った時だった。
ロアの口元が微かに上がる、なにやら不吉な笑い声を漏らす。
これ、もしかしなくても……ロアは良からぬ事を考えている!

ガバッーー
と突然立ち上がり手を腰に当て不適に笑う。

「どうやら悟られずに済んだ様じゃのぅ」

くふふふふ……。
不適に笑うロアは妖しい目付きで鏡を見る。

うっとりしながら。
可愛い、本当に可愛い……とか色々思ってまだ不適に笑ってる。
端から見れば、完全に変質者である。

「くふふふふ……わらわの演技は完璧。面倒な人間界への外出禁止の話題が出たその瞬間、良い案は出ておる。天才的な計画がのぅ」

人間界に行く事を禁止されてるのに、それに構わず人間界に行くのは天才的計画と言うのか?
そんな疑問が浮かぶが、残念ながら、ここにソレを突っ込む者はいない。

それを良いことに不適に笑い続ける。
近々、何かが起こるのが確定してしまった……さぁ、ロアは一体何をするんだろうか?

「どうやら魔王は俺と結婚したいらしい」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く