どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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さて、それは翌日の事である。
今日の魔界もいつもと変わらず平和そのもの。

しかし、そんななかロアはげっそりしながら魔王城の廊下をトボトボ歩いてる。
凄く疲れてるみたいだ、昨夜はあんやにはしゃいで元気そうだったのに……。

「うぅぅ、あぁぁぁ……。まだ頭に響いてるのじゃぁ」

頭を押さえ、眼を細めて言った。
一体何があった? どうしてそこまで疲れてる?

「まさかバレるとはなぁ」

……なるほど、その言葉で大体の事は察した。
どうやらロアは、夜抜け出した事がバレて今しがた怒られたらしい。
だからげっそりしているのだ。

「くっそぅ。ちょいと行っただけなのに……あんなに怒るとは」

ぶつぶつ文句を言いながら歩いて、壁をバンッ! と強く殴る。

「っっ……」

その瞬間、その場にうずくまり手を抑える、二重の意味で自業自得だ。
しかし、ロアの辞書にそんな言葉は存在しない。
だから、時間が経ったらまた同じ事をするだろう。

「……超怖かったのじゃ。ヴァームのやつ、わらわの頭を長時間ぐりぐりしおってぇ。わらわは魔王の娘と言うのにぃ」

魔王の娘だろうが、して悪い事をすれば頭をぐりぐりされる。
むしろ、それで済んでるんだから感謝しないとダメなんだが……当然ロアはそんな事は思わない。

ただ、自分のしたい事をするだけなのだ。
とんだダメ人間……いや、ダメな魔物である。

が、しかし今回ばかりはそうはいかない。

「姉上、うずくまってないで歩きなよ」

実はさっきから、ラキュがついて来ているのだ。
ヴァームに言われて監視を頼まれたらしい……因みに、拒否権は無かったみたいだ。

「うるさい! もとはと言えばラキュ! 貴様が上手いこと誤魔化さんからバレ……ぁいたぁっ!」
「もとはと言えば、姉上がこんな事しなければよかったんだよね? 僕はそれに巻き込まれた。なのに怒るって可笑しくない? ねぇ……可笑しいよね?」
「ぅっうぐっ……ぶった上にゴッスンゴッスンと何度も叩くでない」

睨みを効かせながらロアを容赦なく叩く。
叩かれながら文句を言うが、ラキュは止めない。

「くっ……まさか魔界に帰って来たら目の前にヴァームがいるとは想わなかったのじゃ」

そう、それこそがロアにとっての大誤算。
計画では、ヴァームはまだ寝ている……と思っていたのに、目の前にいた。
それも笑顔でだ……その時に言われた「お帰りなさいませロア様。さて、少しお話よろしいでしょうか?」と言う言葉は……凄く肝が冷えたと言う。

ヴァームいわく、ロア様の行動は全て把握済みだったらしい……まさにざまぁな事実である。

「初めから……お見通しだったとはなぁ」
「どうでも良いけどさ……叩かれながら長々と思い返さないでくれる? ちゃんと反省してよ」

がっくり落ち込むロアにラキュがそう言うと叩くのを止め、強引にロアを立たせる。

「ふんっ。反省はしておるよ……ほんの少し」
「……この事、父上に言っても良いんだよ?」
「わらわ、すっごく反省するのじゃ!」

なんと言う変わり身の早さ。
それほどまでに父が怖いのか? と言うか……報告してなかったんだ。

「はぁ……。初めから素直に反省しなよ」
「……だって」
「だってじゃないよね?」
「うぐぅ……」

姉が弟に説教されている。
これじゃ、どっちがほんとの姉か分からない。
説教されて落ち込んだロアはとぼとぼと歩いていく。

「……ねぇ。反省してる振りしてまた悪巧みとかしてないよね?」

そんなロアにこう言ってみると、分かりやすく身体をビクつかせる。
図星、まだ懲りていない……しょうがない姉だ。

「ちっ……」
「堂々と舌打ちしないでくれるかな? ほんとに父上に報告するよ?」
「…………」

父の名を出されたら、また黙ってしまった。
そんなロアの姿をみてラキュは大きくため息をはいた。

この頃から、ラキュはロアに苦労されている。
まさに苦労人、頑張れラキュ……今、ロアの突発的な行動を止められるのは君だけだ。


さて……。
先程こってりとヴァームに怒られたロア。
流石にもう、悪巧みして勝手に人間界に行く……なんて事は無いだろうが、まだそうなるとは限らない。
まだまだ油断は出来ない、何故なら……自分がやりたい事は無理矢理にでもするのが、ロアと言う魔物なのだから……。

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