どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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今日も今日とて賑やかな食事。
いつもと変わらないなぁ、そう思う裏で俺はドキドキしていた。

「…………」

どうしよ、昨夜の事があってまともにロアが見れない。
あの話し、本当なのか? ほんとだとしたら、俺は……。

「シルク?」
「っ!?」

ビックリした、急に俺を覗き込んで来るロア。
不思議そうに俺を見ている、まっ不味い……俺の態度が変だったから不審に思ったか?

「どうした? 食べもせんとぼけぇっとしおって……風邪でも引いたかえ?」
「あ、いや。大丈夫だ、なんともないぞ」

そう言って強引に笑ってパクリと食べる。
ロアは不思議がってたが「そうか」と言って、また食事を続けた。
あぁ、ダメだ……無駄に警戒してる、落ち着かないと本当にバレるぞ。

と言うか、話し掛けて来たロアも顔色が変だった。
なんか、全体的に紅かった気がする。

……うん、えと、あれだ。
食べよう、何事も無かったかのように。
俺の気のせいって事もあるだろうしな。

「んー……きょうもおいしいなぁ」

そして、何気なく料理の感想を言ってやる。
因みに今日の食事はカレー、朝からカレーかよ……なんて思ってるが、美味しく頂いている。

「……今の棒読み」
「っ!」

っ、俺のもう片方の隣に座ってるアヤネが激しく突っ込んできた! いっいや……棒読みじゃないから。
心の奥底から出た感想だから!

「なんじゃ、さっきから様子が変じゃのぅ」
「へっ、変な事あるか。俺は平常運転だぞ」

はははは、と笑いながら答えたら……やばい、疑いの眼で見てきた。
やばいなぁ……凄く緊張して汗かいてきた。

「ふぅむ、そうは言うがのぅ……汗ダラダラじゃぞ?」
「うん。汗だく」
「え!? あっ……こっこれはぁ……かっカレーが辛いからからなぁ……あははは」

そっそう、カレーが辛いから汗をかいたんだ。
見事な言い訳だ、いやぁ……焦ってはいるが上手い事言い訳出来るんだなぁ。

「ん? でもしぃ坊……お前のカレー、甘口だぞ? 辛いなんてありえるのか?」
「……え」

……っ、こんのぅ鬼騎めぇぇ! 余計な事を言ったなぁ!
とは思うが、今気付いた。
俺のカレー、甘口だわ。
今更気付くとか、俺はアホか!

「あ、えぇ……あのぅ……」

なんて、思いつつ必死に言う言葉を考える。
えぇと……あぁ……んー……よっよし! これで行くか!

「ほっ、ほんと辛いんだよ! これ甘口じゃないぞ」
「ほっほんとか! いやぁ……すまんなぁ、うっかりしとったみたいだな」

カッカッカッと豪快に笑う鬼騎。
よぅし、手応えありだ! 誤魔化しに成功したぞ、あ……でも鬼騎には悪い事したな、本当は美味しい甘口カレーなのに。

でっでも仕方ないんだ、ほんとごめんな鬼騎!

と言った感じに心の中で謝罪してると、「ふぅん」と唸るロアと「へぇ……」と唸るアヤネ。
ふっ二人も誤魔化せた……かな? 確信が持てないでいると、不意にロアが俺のカレー目掛けてスプーンを近づけて来た。

「どれ、汗かく程辛いカレー……わらわも食べて見たいのじゃ。シルクよ、一口貰うぞ」

先程の顔が赤くなったままの表情でそんな事を言い出した。
その後でアヤネも「私もぉ」と言い出した。

やっヤバイ! 流石に食べられたら嘘がバレる、こっこうなったら……っ!
俺は、ガッ! と皿を掴んで持ち上げ手に持っていたスプーンで一気にカレーを食べる。
行儀悪いが気にしてられない! 嘘がばれたら気まずくなる……それを避けるための最善策だ!

そう思いながら、カレーをかきこむ。
多分皆ぽかーんとしながら俺を見てるだろう……だが、構うことなく食べ続けた。
くぅぅ……こんなに美味しいカレー、出来ればゆっくり食べたかった!

「しっシルク! それ、辛いんじゃないのかえ!」

いいや、辛くない。
野菜の甘味が効いた美味しいカレーだ、とろみも抜群だぞ。

「すごい……どんどん食べてる」

そりゃそうだ、食べやすいんだもの。
……と、あと少しで食べ終わるな。

「……っ。ごちそうさま!」

トンっ! とカレー皿とスプーンを置いて俺は立ち上がった、皆の視線が一気に突き刺さる。
そんな視線に気圧される事なく。

「仕事いってくる!」

そう言って出ていった。
あぁぁ……嘘は張れずにすんだが、こんなの怪しさ抜群じゃないか! もっと上手く出来なかったのか。

そう、うなだれながら俺は廊下をトボトボ歩いた……。

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