どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

417

あれから俺はロアの部屋へ戻った。
ロアは既にベットで寝ていた、普段なら一緒に寝るのを渋るが……今回は何も言わずに寝る事にした。

早く寝よう、明日は早く起きるんだ。
その為に今はゆっくり眠ろう、そう思いパジャマに着替え眠りについた。



そして目が覚め、着替えて外に出る。
その時に、気合いを入れる為にバンダナを強くしばった。

肌寒さを感じる夜明け。
空を見上げれば太陽はまだ昇っていない、そんな城下町を独り歩いている。

「アヤネ、どこにいるんだ?」

もしかしたら、もうここにはいない。
そうかもしれないのに、俺は仄暗い城下町を歩き続けた。

まだ魔物は寝ているのか姿はみえない。
だから見付けやすい、だが見付かる気配はまるで無い。
城下町は広い、これは探すのは骨が折れるな。
もしかしたら1日、いや……もっとかかるかもしれないな。

だが諦められるか、ロア……いや、ロアだけじゃない、皆のお陰で決心できたんだ、必ず見つけ出してやる。

そう思い、気合いを入れて歩く。
よしっ、あの曲がり角を曲がって路地裏に入ろう。

もしかしたら目立たない場所にいるかも知れないからな。
そう思い曲がり角を曲がった。

そしたら、後ろから誰かに、ぽんっと肩を叩かれた。
驚いて振り返ってみると、そこには笑顔のラキュがいた。

「やぁおはよ。随分朝早い散歩だね」
「らっラキュ!」
「驚いたよ、まさかシルク君も外にいるなんてね。どうかしたの?」

何気無く話してくるラキュ。
その言葉、そっくりそのまま返してやりたい。
なっなんでラキュが外に出ているんだ? 何か用でもあるのか?

「くふふふ。どうして僕が此処にいるのかきになってる顔だね。僕も聞きたいよ、どうしてシルク君が此処にいるのかをね」
「え、あ。そっそれは……」
「……あ、なるほど。いまの表情で大体察したよ」
「ひょっ表情でか!?」
「うん」

くふふ、と笑ったラキュは俺の前に出る。

「アヤネの所に行くんでしょ?」
「っ、なっなんでそれを……」

知ってるんだ! と言う前にラキュは「くふふ。当たりだね」と呟く。
すっすごい、表情を見ただけで……そんな事が分かるなんて。

戸惑ってる俺を他所にラキュは微笑み、路地裏の奥を指差す。

「着いてきなよ。僕もアヤネに用があるんだ」
「そっそうなのか?」
「うん。そんなんだよ」

ラキュもアヤネに用がある。
一体なんの用なんだ? 全く検討もつかない、いやそれよりもだ。

「アヤネが何処にいるか、分かるのか?」
「分かるよ。最近会ったばっかりだからね」
「分かるのか! そっそれに最近会ったぁ!?」

驚く俺を軽く笑った後「驚くのは後、取り合えず早くいこうよ」と言い。
先へと進んでいく、だから俺は慌ててそれに着いていった。

「なっなぁ、全く話が掴めないんだが……どういう事なんだ?」

ラキュに追い付いた後、聞いてみる、そしたら……。

「あぁ、んー……その事は後で話すよ」

こんな事を言われた。
あっ後で話すって……今、聞きたいんだが?

「シルク君」

だから詳しく聞き出そうとしたんだが……先に話し掛けられてしまった。

「なんだ?」
「……どうするか決めたみたいだね」

ラキュの言葉に俺は黙って頷いた。
そしたら、そう……と軽く返した後……。

「僕はね。ヘタレだった脳筋鬼に言われて自分の思いに気付いたんだ」

脳筋って呼ばずに鬼騎って、ちゃんと呼んでやれ。
って、え? 自分の気持ちに気付いた?

「気付いたって、何にだ?」
「それはまだ秘密」
「おっおぅ」
「そんな顔しなくても、これから知る事になるよ」

そっそうか。
なにを知るのかは知らないが……なんだかドキドキするな、ラキュもここに来たって事は……アヤネに何かを伝える為に来たんだよな?

なにを言うつもりなんだ? すっごく気になる。
気になって、歩きながら腕を組んでると……。

「シルク君、アヤネに会ったら……まずは僕から話して良いかな? 先に伝えた方が良い事があるんだ、良いかな?」

ラキュは前を向いたまま、そう言ってきた。
なんの事か分からないが、ラキュの真剣な顔を見て……咄嗟に俺は。

「あっあぁ……」

と答えた。
今まで見たラキュの中で一番の真剣さを感じる。
……だから、詮索的な言葉は掛けられなかった。

そんな俺の返事を聞いて、口角を上に上げて「ありがとう」と小声で伝えてきた。

ふむ……なんだろう、なにか妙な雰囲気を感じるな。

……あ、そうだ。
呑気にラキュの事を気にしてないで自分の事を気にするべきだ。
俺もアヤネに大事な事を伝えるんだ。
どこに向かってるのかは知らないが、心の準備をするべきだ。

だから集中しよう。
アヤネの元へ辿り着くまでに……必ず、アヤネに言うんだ。
気合いを入れる為、眼をキリッとさせ……ラキュの案内のもとアヤネのいる方へと歩いていった。

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