どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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さて、あれから暫く経った頃、遅れて残りのメンバーが入ってくる。
礼儀正しくおはようございますって言ったり、全速力で厨房に行って鬼騎に抱き付きに行ったり、あとは……身体をくねくねぷるぷる動かして、おはようございますわって言った奴もいた。

そんな感じに色んな挨拶が見れた。
挨拶なのかは怪しいのもあったが、まぁ……そいつにとっては挨拶なんだろう。

「……うまい」

そんな事を考えつつ、パクパク食べている。
アヤネももぐもぐ食べる、あ……ピーマンを端に寄せたな、そうか嫌いな食べ物か。
ダメだぞ、残さず食べないと……と言いたい所だが、俺も嫌いな食べ物があるからな……言えないな、ここはスルーしようか。

なんて事がありつつ、食事を楽しむ。
流石に、食べるときは寄り添ってこなかったから楽しめた。

が、しかし……この場に一人、来てない人がいる。
いつもならとっくに来て、俺にべったりくっついているんだが……。
それが起きていない、いや……起きない方が精神的に助かるから良いんだが、なんか変な感じがする。

可笑しい、朝が弱くても必ず朝食には顔を出してる筈なのに……遅いな、ロア。
何してるんだ?

「……おそい」
「ん?」
「あ、いや……なんでもない」

つい呟いてしまった。
気になったのか、アヤネが見てきたから何となく誤魔化す。
……なんか、あれだな、心配だな。
それとなく話題に出してみるか。

「なぁ……」
「んぅ?」

アヤネが反応した。
皆に言ったんだけどな……まぁ良いけど。

「ロア、遅いよな……いつもなら来るのに」

構わず話した。
そしたらだ、皆の……いや、アヤネを除く皆の動きが一瞬だけピタリと止まった。
え、どした? 俺、なんか不味い事言ったか?
なんか知らないが気まずい雰囲気になった。

「シルク、いない人の事を良いの」
「いや、良くないだろ」
「今は食べるのに集中」
「っ、こらっ! つっつくな!」

ムスッとした顔で横腹ツンツンつつくんじゃない、そこは弱いんだよ!

「むぅ……」

すっごい不満顔だ。
そんな顔したってダメな物はダメだ。
……と、アヤネに構ってないで、誰かに聞くか。
なんか知ってそうな雰囲気だしな。

「なぁ、ヴァーム」
「っ! なんでしょう」

構わず話し掛けてみる。
今日も変わらずメイド服、ビクッ! と身体を震わせた、だけど表情は何一つ変わっていない。

……なんか、怪しいな。

「なにか知ってるか?」

ヴァームはロアの従者だからなのか、朝は必ず起こしに来ていた。
毎回毎回それを見てるから間違いない、だからヴァームに聞いてみたんだが……なんで私に? って言いたげな顔をしてるんだろう。

「……さぁ? 分かりません」 「そっそうか。今日はロアを起こしに行かなかったのか?」

言ってみて気付いたが、今日はヴァームはロアの部屋にこなかった。
何時もならまとめて起こされるのに……今日はそれがなかった。
まぁ、そんな時もあるかと気にしてなかったが……今になって気になってきた。

「今日は行ってないのです」

おぉ。
そうなのか、今日は言ってないのか……珍しいなぁ。

「起こしにいかなくても良いのか?」
「うふふ。今日は良いんです」

え、良いのか? 従者の仕事じゃないのか? 大丈夫……なのか?

「そっそうか」
「はい、そうなんです」

にこっと微笑むヴァームはそのままお茶を飲む。
むぅ……なんか知ってそうだが、話してみると何も知らなさそうだ、知ってると思ったんだけどな……。

じゃぁ、今度は別の奴に聞いてみるか。

「じゃぁ……」

そう思って、別の奴の方を向いた。
その時だ、一瞬にして同時に俺から眼を反らした。

え、なにその反応。
ぜっったい何か知ってるだろう。
うん、絶対そうだ、確信した。
じゃぁ、多少強引にでも話を聞いてみるか。

そう思い、誰かに話し掛けようとしたその時だ……。

ガチャ……。
扉が開いた、あっ……もしかして、ロアか? そう思って俺は扉の方を見た。

ギギギギィ……とゆっくり開いて姿を表したのは、予想通りロアだ。
しかし、なんだか顔が紅いし、やたら息使いが荒い。
よっ様子が可笑しい、情緒じょうちょが不安定だ。

とっ取り合えず、あっ挨拶しよう。

「おはようロア、遅い到着だな」

いつもの様にいつもの挨拶をした。
それを聞いたロアは、勢い良く俺の方を向いて……。

「ぉっはぁよぉ」

そんな反応をとった、すっごく声が上ずってる。
しかもなんて言ったか分からん、多分だが……おはようって言った……のか?
えと……これって確実になにかあったよな? 絶対そうだよな、だって汗ダラダラ掻いてるんだ、何でも無いなら、あんなに汗は掻かない!

なっなんだろう、また波乱が起きる……のか? そんな気がしてしまった。

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