どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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なにか慌てた様子でシルクが出ていきおった、アヤネをそれを見て追い掛けていきおった。
わらわはそんな様子をじと眼で見つめ何もせんかった。

鬼騎に頼んだ、分厚いステーキを気の向くままに頬張り、むしゃむしゃ食べる。
うむ、旨いのぅ。

「肉食べてる場合じゃないんじゃないの?」
「…………」

と、そこに口煩い弟の声が聞こえた。
やかましい、今は朝食の時間じゃから食べても良いじゃろうが。

「と言うかさ、あの事言うじゃないの? あっ……もしかして、もう言えた感じ?」

やかましい事を言っておるな。
くっそ、腹立つのじゃ……まだ言えておらんよ!

「と言うかさ。さっきアヤネがシルク君にべったりくっついてたけど何にも言わなかったね、なんでなの?」

カチャッ……とわらわはフォークをテーブルに置いた。
この愚弟め、イラッとくる笑顔を見せながら好き勝手言いおるわ、ここは何か言ってやらねばならんらしい。

「しっ仕方ないじゃろうが! いっいざ、あっあの事を……いっ言おうと思うと……いっ意識してしまうんじゃよ」
「いつもなら平気でべったりくっついたり、キスする癖に?」
「うっうるさいっ、うるさいのじゃぁぁぁっ!!」

そこで何時ものわらわを持ってくるな!

「そんなに意識する必要はないんじゃありませんか?」

それがあるのじゃよヴァーム。
そのな? わらわな、ラキュに言ってしまったんじゃよな……アヤネの失恋騒動が終わったらあの事をシルクに言うと。

そりゃ、騒動が終われば言うつもりじゃった。
その為に頑張ろうと思ったし気合いも入った。
もうなんと言うか「やるぞ!」とも思えたんじゃ。

しかしじゃ……。

「ざっくりと終わり過ぎじゃろう! すっごく悩んでおったんじゃぞ? なっなのに……なっなのにぃぃ」

わらわが何かをする前に騒動が終わってしまった、完全にかやの外じゃ。

「騒動が収まるのは良いことですわっ、だからロア様……元気を出してくださいましっ!」
「らっラム……確かに、そうなんじゃが、そのっ、早く終わり過ぎて、こっ心の準備がじゃな……」
「そんな事言ってたら、ずるずる引き伸ばして言えず仕舞いになるですよ?」

うぐぁっ!? ラムの言葉に返事してたら、痛い言葉をメェに言われてしまった。
せっ正論じゃ、確かに正論じゃ! しっしかしな? あまりに事が早く終えすぎて調子が狂ったんじゃよ。

わらわ自身、もうちょっと長引くかな? と思ったら……そうはならんかった。
あ、いや……別に長引いて欲しかったとかそう言う事ではないんじゃ。
シルクも、ついでにアヤネも元気を取り戻して良かったとも思う。
だがしかし! 早すぎるんじゃよなぁ……。

「はぁぁぁ……」
「すっげぇ、でっけぇため息ついたなぁ」

鬼騎よ、そんな呆れた声を出すでない。
そなた等が思ってる以上にわらわは色々と深く悩んでおるんじゃよ。
あぁ……ダメじゃ、なんか悩み過ぎて気分が落ちてきたのじゃ。
ステーキ食べよ、あむっ…………んっ、うまい。

「ま、僕も色々とやらなきゃいけない事があるんだけどさ……。やるなら早い方が良いんじゃない?」

む。
またラキュがなんか言ってきおったな? ふんっ……もう耳を傾けんぞ? わらわは今は食事に集中する事にした。
軽い現実逃避開始じゃ!

「ほら。アヤネって……あの事を切っ掛けによりシルクに強くアピールしだしたしさ。このままだと……シルク君がアヤネの方を好きになっちゃうかもね」

…………ふぅ、まったく、この愚弟ときたら。
まぁ、確かに? あの件が済んでシルクへのボディタッチやアピールが強くなったのは分かる。

わらわずぅぅっと見てたからのぅ、まったく……何を分かりきった事を言うかとともいきや、そんな重々承知な事を言いおるから……。

かっかかっ、身体が、ふっふるえ、ふるえてきおったでは、なっなななっないか。

「そっそんな事、あるわけけ……ななっない」
「うわ、すっごい動揺してる」

どっ動揺? ちっ違う! こっこれはあれじゃ! ちょっと心がざわついただけじゃ! 動揺とは少し違う! 違うったら違う!

「ま。どうしようが勝手だけどさ……後で泣きを見るのは姉上だよ?」

ガチャンっ……ガタッーー!!
フォークが手から溢れ落ちてしまった、そうなった後、立ち上がった。
そして……。

「ごっごごっ、ごちそうさまなのじゃぁぁぁっ!!」

走った! ドアを蹴破って直ぐ様シルクの元へと走った。
うぁぁぁぁぁっ! やらせはせんっ、やらせはせんぞ! シルクと付き合うのはこのわらわじゃ!

いっ言ってやる! 正直意識しすぎてシルクを前にすると超緊張してしまうが……言ってやろうではないか!
そして、散々挑発紛いの事をしてくれたラキュに「言ってやったぞ、ざまぁみろ」と言い放ってやるのじゃ!

「うぉぁぉぉぉっ、しぃるぅくぅぅぅっ!!!!」

と、こんな感じに色々と思いを交錯させながら叫んで走った。
さて、はたしてわらわは……シルクにあの事を言えるのであろうか、それは誰も知らぬ事である……。

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