どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「さぁシルク、食べると良いのじゃ」

おぉ……すっごく良い笑顔だ。
余程自信があるらしい、俺は出された物をまじまじと見る。
うん……違うな、おにぎりじゃないな。
鬼騎がボソッて言ってたお萩で間違いないみたいだ。

「あぁ……おっおいしそうだな」

取り敢えず、俺は笑ってそう言った。
ロアはそれを聞いた瞬間、頬を染めて「あっ当たり前じゃ」と照れながら言った。

「シルク。ロアばかり見ちゃダメ」

服の裾をクイクイ引っ張られた、だからその方を見ると……アヤネがドヤ顔でこっちを見てた。
そして、テーブルの方をこれ見よがしに指差しアピールしている。

なるほど、はやく見ろと……言われなくても見るよ。
……と言っても、これもおにぎりじゃないなぁ。
全体的にパラパラしたご飯物の料理がそこにはある。

これか、鬼騎が言ってた炒飯って言うのは。
ちょっと茶色くて、パラパラしてて……良い匂いをさせている。

「一番の出来、褒めて良いよ」
「よっよくやったな。偉いぞ」
「えへへ……うれし」

照れくさかったのかアヤネも頬を染めて照れ笑い。
なんて微笑ましい光景だ、これ……もう勝敗なんてつけなくて良いんじゃないか?

「さぁ、シルクよ! 早く食べるのじゃ。そして結果を言うといい!」
「食べて、はやくはやく」

とは思ったが……そうはいかないらしい。
ロアとアヤネがはやたててくる。
困ったな、ちゃんと決めろねぇ……難しい話だなぁ。

いや、考えるより先ずは食べるか。
折角作ってくれたんだし早く食べよう。

と言うわけで、まずはアヤネの方から頂く。
ラムの方もアヤネの方から食べるみたいだ。
湯気たってるしな、こう言うものは早めに食べたい。
と言うわけで、いただきまぁす。

……ほぉ、これはなかなかイケる。
うまい、米はパラパラ卵は甘い、ベーコンの旨味も良い感じだ。
……ごめんな、食レポが下手で。

「ほぉ。なるほど……美味しいですわ。なんか口に入れた瞬間、味がふわぁぁって広がる……そんな感じがしますの」

ラムの方がすっごい下手だった。
それじゃぁ味は伝わらない……。
って、あれ? ヴァーム達静かじゃないか? さっきまで喋ってたのに……あ、あっちも食べてる。

なんか、ロアとアヤネがが「お主達も食べると良い」「どうぞ、沢山あるから食べて」とか言ってあげてる。

だから静かだったのか。
皆も美味しそうに食べてる、大人気じゃないか。

じゃぁ、次はロアの方の料理だ。
これはあれだな、スプーンとかはいらなさそうだ。
普通に手で掴んで食べよう。

「……」

と言う事で食べた。
うん、ほぉ……これは……。

「甘い、な」

ビックリした、アンコって甘いのか。
黒くて良くわからない物だったから少し怖かったんだよな。

うん、だけどその怖さは吹き飛んだ。
甘くて美味しい、あとご飯がモチモチしてて食間も面白い。

「あっ甘いですわ!」
「メェ、これ好きですっ」
「私、ちゃぁはんと言うもの……個人的に好みです」
「よく出来とる。たいしたもんだ……ほんとは、もち米で作るんだがコレはコレでイケる」
「くふふふ……。どっちも美味しいよ」

皆、大絶賛だな。
俺も絶賛だ、今回の料理勝負は酷い目に会わなかった。

それは、ロアとアヤネの料理の腕があがったからだろう。
特にアヤネの成長は驚きだ、よくあのカレーを模した兵器から成長したなぁ……それを思うとホロリと涙が出てくるぞ。

「あら。どうしましたの? 涙が出るほど美味しかったですの?」
「あぁ……ほんと。すっごく美味しいよ」

涙を拭いながら言うと、ラムは「まぁ」と声を漏らす。
そして、俺の言葉を聞いたロアとアヤネは。

「うぉぉぉぉっ、やったのじゃ! シルクを泣かしてやったぞ!」
「ふふふ。私の勝ちは決まった……」

歓喜の声をあげた。
なんか、勘違いしてるが……俺は何も言わないでおいた。

そのまま、食事を楽しんだ。

「では、シルク様。そろそろ結果を発表して下さい」

……暫く時間が経つとヴァームがそう言った。
結果を出すのは俺らしい。

「え、ラムは言わなくて良いのか? 審査員なんだよな?」
「いえ、ラムは毒味係です。料理がアレでしたら、先に食べて貰うつもりでした。ですが……今回はその必要はありませんでしたね」

おぅ、何気に酷い役割を与えたな。
それを引き受けたラムもラムだな。
そう思い、呆れた顔を見せるとラムは「ふふふ」とお上品に微笑んだ。

だが、ラムに不満が無いなら良い、そう言う事にしておこう。

「では、発表してください」
「おっおぉ。分かった」

まぁ、そんな事はおいといて結果を言わないとな。

「くふふふ、聞くまでも無くわらわの勝ちじゃろうな」
「違う。勝つのは私」

ロアとアヤネは自信ありげに俺を、じとぉぉっと見る。

おっおぅ、なんて気迫だ……ちょっと気圧されてしまった。
だっだが言わないとな、実は結果は食べる前から決まってたんだ。

だから言うぞ、この勝負、決着は……!

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