どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「やぁ、無事起きたね……おはよ」

目をパチクリさせてるクーにそう言うと、僕に向かってぼぉっとしながらこう言って来た。

「おは……よう」

ぽへぇとしてるね。
素顔のままなのに、恥ずかしがってない。
まだ石喜がハッキリしてないんだ。
まぁ……その方が良いよね。
また、恥ずかしがって倒れたら困るし。

「体調とか大丈夫?」
「……ん」

目を細めながらクーは頷いて答えた。
そう、なら良かった。
そう思ったらメェが、すすすぅっとクーの側へ行く。

「一応検査するですよ。はい、あぁんするです」
「あぁ……んっ」

言われるがまま口を開けるクー、メェはじぃっと見て「なんともないです」と呟いた。
良かった、なんとも無いんだ。

「……ん、なん……で、ここに? あたい……自分の家に、いた……はず」
「あぁ、それはですねぇ、ラキュ様がここまで連れてきたからです!」

うん、その通り。
言おうと思ったこと言ってくれたね。

「ほぇぇ、運んでくれたんですか……」

ぽへぇとしながら僕を見るクー、まだ気を取り戻さないんだ。
多分……そろそろ、正気に戻って顔真っ赤にする頃だと思うのは、僕だけかな?

「ラキュ様に感謝しなきゃダメですよ? 戸惑いきった顔でメェのとこに来たんですっ! もう必死さを感じまくったですよ」
「ちょっ! そんな事言わなくて良いから!」

突然、何言い出すのさ! そんな顔してないし……必死だったのは間違ってないけど。

「へぇ……そう、なんだ。必死に……運んで……っ!?」

あ、顔が一気に赤くなった。
はじまるね、あれが。
一応、耳塞いどこう。

「ひっ、あっ……うぅっ、あぅ……ひゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」

っ、すごい声……やっと、自分が素顔のままなのに気がついたみたいだ。
と言うか、気付くのずいぶんと掛かったね。

「え、あっ……え! えぇぇっ!」

バタバタ暴れだすクー。
それを「落ち着くですよ!」と後ろから抑える、でも……。

「ぎゃめぇぇぇっ!!」

クーの力が凄すぎて右に左に振り回されてる。
うわっ、すっごい力……って、感心してる場合じゃなかった。

「クー! 落ち着きなよ!」

そう言って近付いてみる。
おっと、危ない……振り回してるメェにぶつかる所だった。
それを、ひょいっひょいっと交わして、目を手で覆って見る。

「ね? 落ち着きなって」
「っ……うぅぅっ」

肩をぶるっと震わせるクー、その後ろでメェがひぃひぃ言ってる。
そして、力なくクーの肩から手を離して、べちゃっと床に倒れた。

……心配だけど、今はおいとこう。

「どう? 落ち着いた?」

優しく話し掛けると、クーはゆっくりと頷いた。

「そう、良かったよ」

ほっとして微笑むと、クーが震え始めた。

「ラキュ……君、色々……めっめい、わく……掛けちゃいました。ごっ……ごめん、なさい」
「あぁ気にしなくて良いよ。気にしてないからさ」

それより、落ち着いて良かったって事の方が大きいね。

「そう……ですか」
「うん。だからこれ以上謝らないでよ?」
「う……うん」

くははは、えらくか細い声で返事したね。
僕の手で目隠ししてても、恥ずかしいのは恥ずかしいのかな?

じゃ、取り敢えず被り物をどうにかしよっか。

「クー。取り敢えず、いつもの被り物しない?」
「っ! しっ……しません!!」

うぉっ、ビックリした……。
急に大声だしたね、しかも「しません」と来たか。

「でも、しないとまともに話せないでしょ?」
「うっ」

図星だね、身体が固まったよ。

「でっでも……あたい、もう被り物……被れません、から」
「え、被れない?」
「そっ、それに! あたいっ、被り物は卒業するって……きっ、きめ……決めました、から!」
「え、ちょ……質問に答えてよ」

なに、ビシッと決めてんのさ。
全く意味が分からないよ、被り物卒業ってどういう事? 被れない? どうして被れないのさ。

「あっあたい! 負けない為にっ、ががっがん……頑張ります! ネガティブなあたいとは……おさっおささ、おさらば……です!」

おっおぅ。
なんか凄い気迫で格好いい事言ってきたね。
負けないって、誰に対して言ってるのさ。
まぁ、ネガティブおさらば宣言は素直に凄いって思ったけどね。

と言うか、僕とクー……なんて格好で話してんのさ。
相手の目を覆って話し合うって、スッゴく変だね。

と、そんな事は頭の片隅に追いやり、僕は苦笑いしながら思う。
もう、これは聞くしかないね……なんで、そこまで被り物をしたくないのかを。

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