どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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さて、ラキュとヴァームの会話が終わってからと言うもの、さっきからずぅぅっと2人からじぃっと睨まれておる。
何にも言わずただじっとじゃ、ここ廊下なのに……。

なんじゃいなんじゃい、そんなに睨みおって。
言いたい事があれば、さっさと言えば言いじゃろうが。

「普段、キスとか普通にする癖に肝心な所でこれか。度胸ないね」
「まったくです。さっと言ってしまえば良いですのに」
「ぅっ……そっそうは、言うけどじゃなぁ……」

色々言い返してやりたいが、正論じゃもんなぁ。
中々言えん。
うぅぅ、困った……。
と、と言うか、わらわ言う努力はしとるんじゃぞ? ちゃんと言おうとしとるし!

「ねぇ、なんでそんなに意識しちゃうわけ? 普通に言えば良いだけじゃないの?」
「ラキュ様の言うとおりです。何も難しい事は無いそう思いますが? それとも、シルク様に騙したな! と攻められるのが怖い、とお思いですか?」
「あ、いや。違う。そっそうじゃ……ない、そうではないんじゃ」

たぶん、シルクはそんな事は言わない。
わらわはそう信じとる、なのに言えないのは……。

「ねぇ、もしかして……まだ今の自分を見たら嫌われるとか思ってるの?」
「っ!?」
「……ふぅん、図星なんだ」

目を見開いて驚くわらわに、ラキュはやれやれと手を広げる。
そう、ラキュの言った通り……わらわはその考えを捨てきれん。

もう言わねばならん。
これ以上気持ちを偽るのはダメなんじゃ、そんなの色々してくれたラキュ達に申し訳ない……。
特に、わらわの為に自分を貶める様な行動をし、わらわの為に泣いてくれたヴァームの為にも……。

「どうしても捨てきれませんか? その考えは」

まっすぐわらわを見つめるヴァーム、その問い掛けに黙ってゆっくりと頷いた。

「そう、ですか……」

うっ、そんな悲しい顔をせんでくれ。
それとラキュ……そんなに難しい顔をするでない。
全て、わらわの自信が足りないせいじゃ。
今の今まで自分が完璧な女性になるまで過去の事を明かさない、そう決めて生きてきた。

じゃが、本当は言いたかったのかもしれん。
今となってはそう思えるのじゃ、そんな事を考えてたのは……ずっと逃げてたんじゃ、過去の事を明かして、シルクから嫌われるかもしれん! と言う事に……。

「……ねぇ。なんで、姉上だけがこんなに悩まなくちゃならないんだろうね」
「え?」

らっラキュ? どうした、突然。
なっなんか……怖いぞ。

「必死に悩んで、必死に考えて、頑張ろうとしてるのに……相手の方は姉上を見ても気付かない。今までここに住んでて気付く切っ掛けは幾らでもあった筈なのに」
「らっラキュ?」

長々となにをいっておる? わらわを困惑させんでくれ。
って、あっあれ?

「らっラキュ、どこに行くんじゃ?」

スタスタと歩き始めたラキュに問い掛けた。

「……ちょっと散歩、直ぐに戻るよ」

ニコッと笑ってわらわに背を向けて歩きいていきおった。
むっむぅ……なにやら怒ってる気がする。
多分わらわが原因じゃよな……すまんなラキュ。

なるべく早く言うようにする、努力するのじゃ。

「ロア様」
「なんじゃ?」
「……ロア様は充分お綺麗ですよ」
「っ!?」

な、ななな、なに、何を言い出すんじゃこやつ!

「あらあら……顔を紅くして、可愛いですね」
「うっうるさい! なにを頬を染めていっておるっ! まっまさか……くっ口説いてあるのか? 夫がいるのに!」

わらわはシルク一筋じゃからな! それにっ、わらわは女同士で付き合う趣味は無いっ! ただし、シルクが女に性転換した場合は有りじゃ。

「ふふふ、愉快な勘違いをしてますね」
「え、勘違い? ちっ違うのかえ?」
「当たり前です。私はリヴァイ一筋ですから」

おっおぅ、照れもせずにキッパリ言い切ったのぅ。
聞いてるこっちが恥ずかしくなるのじゃ。

「私が言いたい事は……」
「いっ言いたい事は?」
「もう、何もする必要は無いかと思います。そう言う事です」
「ぅえっ!?」

なっ、何もするな……じゃと!

「そっ、そそっそれは……つまり、どっどどどど、どういう……」
「ふふ、簡単な事です。ロア様は今のままで充分綺麗ですので、これ以上自分を磨く為に努力する必要はありません……そう言う事です」

えっ笑顔でなんと言う事を言うんじゃ……こやつは。

「まぁ、そう言ってロア様が素直に従う訳ありませんね……」
「あ、当たり前じゃ……その、いっ色々やってないと、不安……なんじゃ」
「そうですか」
「そうなのじゃ」

ふふふ、と愉快に笑うヴァーム。
わらわはそうやって笑えん、目の前が不安で一杯じゃからな、だからその不安に負けず自信をもって前に進める奴等、わらわは尊敬するのじゃ。

「ではロア様、今晩も頑張るのですか?」
「うむ、勿論じゃ……はやい所、マフラーを完成させたいからの。もうすぐ本気的に寒くなるしの」
「そうですか、でしたら全力で助力させて頂きます」
「うむっ、そうしてくれると助かる。ありがとうなのじゃ、ヴァーム」

わらわがそう言うと「いえいえ」と言って頭を下げた。

ふぅぅ……やはり難しいもんじゃな、大事な事を伝えるのは。
なんと言うか……そのぉ、言おうとした瞬間、緊張するし、言ったら相手が怒ったりするんじゃないのかえ? とか考えてしまって固まってしまう。

ふぅむぅ……なんかこぅ、簡単にスパッ! と言えるやり方とか無いのかのぅ。
そう考えながら、わらわは首を傾けた。

どうやら、わらわがシルクに過去の事を話せるのは……大分と先になりそうじゃのぅ。

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