どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

60

「どらぁっ!」
「ふっ……甘いよ、そんな攻撃僕には当たらない」

あぁ……本格的にバトり始めてしまったな、さっきから連打や魔法の嵐、ドガァァンッ! ガシャァァンッーーと派手な破壊音が盛大に響いている。

「……」

俺はと言うと自分に被害が及ばない様にするのに必死……カウンターの下に隠れ頭を押さえてうずくまり早くこのバトルが終わる事を願いながら隠れている。
もう物とか散乱しまくってる、でも不思議と破壊されてるのは床とか壁とかだ、不思議な物だ……あぁ、恐怖を感じすぎて呑気にこんな事を考えてしまってる……現実逃避しなきゃこの現実には耐えられない。

「吹っ飛べシスコン!」
「千切れろ脳筋!」

二人は叫び拳を降りか出す、こっこれはクロスカウンターになりそうだ、と言うかいい加減終わってくれないかな? この喧嘩を長く見ていたら疲れてまた倒れてしまう。

「止めんか馬鹿者共!」

二人の拳がお互いの身体に当たりそうになった時だった、救世主が現れてくれた!

「がはっ!」
「へぶっ!」

強烈なチョップを二人にお見舞いし沈める。

「全く……何時も何時も会ったら喧嘩しおって」

ふぅ……とため息を吐いて髪の毛を掻き分ける、あぁ救世主が来てくれた。

「ロア!」
「ん、シルクか……そんな所に隠れておったのか……怪我は無いか?」

俺は、ひょこっと姿を表してロアに駆け寄る、そして……。

「ありがとうロアっ助かった!」
「にゃにぃぬぅねのおぉっ!」

感極まって抱き付いてしまう……ロアは妙な声をあげて身体が固まってしまう。

「お前が来なかったら俺は今頃どうなっていたか……本当に助かった! 来てくれてありがとう!」
「はわわわわ……」

小刻みに震えるロアは顔を真っ赤にして俺を見つめる、此処で俺は気付く! やってしまった……俺は何て事をしてしまったんだ。

「すっすまん!」

直ぐ様ロアから離れる俺、きゅっ急に抱き付いてしまった……はっ恥ずかしい。

「べっ……べ別に謝る事は無い」

下向き加減で話しながら俺の方へと近付いてくる、その際倒れた二人を踏みつけた。

「姉上、僕は踏まれて喜ぶ人じゃないよ、早く足を退けてよ」
「わしもだ!早く足を退けんかい!」

当然の様に文句を言う二人……ロアは冷たい視線を向けながら言い放つ。

「黙れ、場を考えず喧嘩した罰じゃ」

なんだあの冷めきった視線は……超怖い。

「ごめん……姉上」
「すまんかった……」

ラキュも鬼騎も2人して素直に謝る、その様子を見たロアは軽く鼻を鳴らして此方にやって来る。

「シルクも急に抱き付いて来る事もあるんじゃな」
「っ!?」

言うなよ恥ずかしい! にやにや悪戯に笑って見てくるロア……これはさっきのお返しと言う奴だろう。

「くふふふ……顔が真っ赤じゃ」
「煩い!あの時はその……極限状態だったんだ」
「ほぉ…まぁそう言う事にしておいてやろう」

こいつ抱き付かれた時変な声をあげた癖に面白がりやがってぇ……自分の事は棚に上げるのか!

「そう言えばシルクよ、何故此処に? いや愚問だったな……此処に来たのはただ1つ、夕食を食べに来たんじゃな?」
「そっそうだ……」

おぉ……もっとからかって来るかと思ったが話を変えてくれた。

「で、愚弟と鬼の喧嘩が急に始まったと……」
「あぁ、急に何事だと思った…」

本当にあれは驚いた、寿命が3年は縮んだ気がする……ラキュと鬼騎はまだ床に倒れて頭を押さえて痛がっている、ロアのあのチョップ! どれだけの威力だったんだよ。

「あいつらの仲の悪さはあれを見て分かったじゃろ?」
「あぁ…会って速攻喧嘩になる程の仲と言うのは一目で分かった」

そう言えばラキュが鬼騎の事を「脳筋」だとか色々言ってた気がする、成る程仲が悪いから名前で呼ばないのか……納得した。

「ラキュと鬼騎の喧嘩は今に始まった事では無い、あんまり気にせん事じゃ」
「いっいや……あれ相当気にするからな!」

と言う突っ込みをいれると、ロアは苦笑して「そうじゃよな……」と呟く、会う度に一々喧嘩してたら身が持たないと思うのだが……2人はそうでもないのか? と言うか何でそんなに仲が悪いんだ?

「さて、話しは一旦止めにするかの」

そう言ってロアはお腹をさする、そして俺の方を見て照れ笑いし舌を、ぺろっと出す。

「腹が空いたから飯にするのじゃ……」
「っ、そっそうか……」

ロアの仕草に俺は素直に可愛い……そう思ってしまった。

「では飯にするのじゃ、おいっ鬼騎何時まで寝ているのじゃ、早く起きんか!」
「ぐぐっ……相変わらず厳しいな、わし等の魔王様は」

苦しそうにそう言って立ち上がる鬼騎、あのチョップが相当足に来ているのかガクガク震えている。

「姉上……もう少し手加減してよ、軽く喧嘩してただけじゃないか」

軽快に語りながら立ち上がるラキュだが身体は正直だ、鬼騎同様足にダメージが来ている。

「ほぉ? どうやらこの愚弟は反省が足らないみたいじゃな?」
「……ごめん、もう勘弁して下さい」

やはりどの世界でも弟は姉には逆らえないか、そんな彼の心を知る由も無いロアはカウンター近くの丸椅子に座る。

「今宵も肉で頼むのじゃ!」
「またか……たまには野菜も食えや」

はぁ……深いため息をつきながら厨房に向かう鬼騎、俺も座ろう……そう思ってロアの隣に座る。

「しぃ坊は何を食う?」
「えと……そうだな…」

ふむ、鬼騎に聞かれるまでこれと言って食べたい物を決めてなかったな……そうだ、あれにするか。

「だったらチーズを使った料理を作ってくれるか?」
「ん、チーズ……あぁ、あの発酵食品か」

此処に来てから食べてないからな……久々に食べたいと思ってしまった。

「シルクはチーズが好きなのかえ?」
「あぁ大好物だ、と言うか発酵食品は全部好きだ」

此処に誘拐される前はお金が無いのにも関わらず美味しいチーズを買う位好きだ。
そう言えば家に置いておいた秘蔵のチーズは無事だろうか? いや、勝手に無くなる訳ないか……家に帰ったら美味しく調理して食べるとしよう。

「そうか、それがシルクの好物か……ふむふむ」

? 何かを呟くロア、何を言ってるんだ? そう思っているとラキュが俺の隣に座ってくる。

「脳筋……ミネストローネ作って」
「ふんっ、少し待っとけや」

無愛想ながらも調理を始める鬼騎、相変わらずラキュと鬼騎の間はピリピリしてるな。

「全く、仕様がない奴等じゃ」

やれやれと呟きロアは呆れる、どうやらこの夕食何かが起きてしまいそうだ、頼む……頼むから平穏のまま進んでくれ、俺は心から強く願うのであった。

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