どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「あぁ……シルク君。そんなに困った顔をするのは止してくれ、我も困る」
「あ、えと……すいません」

そう思うなら、もう訳が分からない事言うの止めて欲しいな。
俺はてっきり、シリアスな話しをするのかと思った、だけど実際はどうだ。

妙な話しをされた、こんなもの困った顔をしない方が可笑しい。

「これから話すのは、きちんとした話だ。安心してくれ」
「はっはい」

と言われても、信用出来ないなぁ。
だけど本当っぽいし、しっかり聞こう。
あとシズハさん、微笑んでないで暴走気味? のフドウさんを止めて下さい、俺には手に負えない。

「今話したのはな、シルク君の本心を知る為に言った事なのだ」
「本心……ですか」
「うむ」

それを確かめる為にあんな事を?

「しかと聞かせてもらった。そうか……別の人が好きか。親としては悲しいな」
「っ、すっすみません」
「謝る事は無いぞ。シルク君は別の人が好きだった、ただそれだけだ」

フドウさんは、普段の渋い顔を微笑ませる。
そうやって笑ってはいるが、本心はどう思ってるだろう。
こんな事、考えても意味ないのに考えてしまう。

「アヤネを振ったが、嫌いで振ったんじゃないのだろ?」
「もっもちろん! そうじゃない……です」

アヤネは親友、俺はそう思ってた。
嫌いだから振ったんじゃ談じてない、あんな明るい女の子、嫌いになる人なんていない。

「それなら我も納得だ。シズハも納得だろう?」
「はぁい、納得してますよぉ」

にへぇ、と笑いピースサインを作るシズハさん。
そんな自分の妻を見て、ふふっと笑った後、真剣な顔になる。

「ひとつ説教臭い事を言わせてくれ、言いたい気分だから断っても勝手に言うぞ。だから聞いてくれ」
「はっはい」

説教……。
正直こわい、身体が無意識にガタガタ震えてる、だが……聞かないといけない。

と言うか、身体がやけに熱くなってきてる、だからなのか汗をかいてきた。
だからその汗を拭った、そしたらフドウさんは話始めた。

「恋愛と言うのは、必ず誰か1人を選ばなければならない。それは分かるな」
「はい」
「うむっ、だから自分が愛してる者以外の人に告白された場合……申し訳無いと思うが、断らなければならんのだ。シルク君はそうした様にな」
「……はい」
「断った後は、告白してきた人の為にも愛する者に必ず告白しなければいけない。それが失恋した者へのケジメだ、自分が振った相手の心配をするのは可笑しい、我はそう思う」

……まさか、アヤネの親にそれを言われるとは思わなかった。
だから今、複雑な気持ちになってる。

自分が振った相手の心配をするのは可笑しい……か。
そう……だよな、アヤネを振ったのは俺。
なのに、俺はアヤネの心配をしてる……可笑しいよな。

今更だな。
可笑しな事をしてる俺が可笑しく思えて来た、バカだな……俺は。

「どうしても、傷付いたアヤネの事を想ってしまうか?」
「……っ!」

図星だ。
フドウさんに言われた事、正しいって思ったのに……そう思ってしまった。

「ならば、やり直せば良い」
「……やり……なおす?」
「そうだ」
「どっどういう事、ですか?」

いまいち言ってる意味が分からない。
だから詳しく聞いてみる、するとフドウさんは腕を組んだ。

「今、我の話しを聞いてアヤネが昔から君の事を好きだと分かっただろう?」
「はっはい、今……知りました」

昔はそんな事思いもしなかった、ただ普通にアヤネとの会話を楽しんでたよ。

「ならば、これでアヤネの気持ちを真に理解できたと言う事だ」
「はっはい」

なっなんだ? フドウさんは何を言いたい? とても真剣な顔で話してきてるが……また意味の分からない事を言ってきている。
だけど、もう少し聞けば分かるかもしれない……。

「だったら自分の気持ちをもう1度伝えろ。まっすぐ見つめて想いを伝えるのだ」
「そっそんな事……」
「出来ないか? もう一度振るのは」

あっ当たり前だ、そんな酷い事……。

「酷い事だと思ったか?」
「っ!?」
「ふむ、図星か」

やれやれ、て感じにため息をつく。
なっ、なっ、なんで……ため息をつかれる? 酷いと思うのは可笑しい事か?

「誠心誠意振ってこい。我の娘は強い、初めての失恋で落ち込んだだろうが、立ち直ったらまたしつこく告白してくる。そんな強い娘だ。なのに君は落ち込んだままか? 相手が気持ちを伝えんたのだ、君も伝え返さないのは……臆病者のする事だ、我の娘が好きになった男なんだ、そんな事はしないでくれ」

熱い、とっても熱い視線だ。
長い言葉だが、俺はしっかりその言葉を聞いた。
そして、心に響いた……アヤネは強い。
立ち直ってる……本当にそうか? そんな疑問が浮かんだが、普段のアヤネを思い出した。

そうだ、アヤネは落ち込んだら数秒で復活して笑顔で俺に寄り添ってくる。
だから……フドウさんの言う通り、今立ち直ってるかもしれない。

だとしたら……俺はどうだ? 今、ただただ落ち込んで、どうすれば良いかを考えてるだけ。

更にはロア達に色々してもらって、なんの行動も移さない。

なんだ俺、なんなんだよ俺、物凄い臆病者じゃないか。
そう感じた時、無性に腹が立ってきた。

「むっ、目付きが変わったな」

ふっ、とフドウさんが格好良く笑った後、椅子から立ち上がる。
その後にシズハさんも立ち上がった。

「話しは以上だ。しっかりやってくれ、我の娘の気持ちにしっかり答えてやってくれ。そして出来れば……いや、何でもない。でわな、今日はゆっくり休むのだ」
「ふぁいとぉですよぉ、応援してますっ、しっかり決めてくださいねぇ」

そう言い終わった後、2人は部屋から出ていった。
それを見送り、一人になった時。

「……不思議だな、妙にスッキリしてる」

そう呟いた。
その言葉通り、今までモヤがかっていた心は、すっかり晴れてしまった。
とても清々しい、今まであんなに悩んでたのがバカらしい、そんな自分が本当に格好悪く思えた。

「もう、あんな格好悪い姿は誰にも見せない」

だから、俺は……もう一度アヤネに言う。

だが言うのは明日の朝だ、どこにいるか分からないが……まだ城下町にいると信じて朝早くから探し回って絶対に見付ける。

見付かったら、自分の気持ちを伝える、だからアヤネ……心の準備をしていて欲しい。

俺はもう一度、お前の気持ちを知った上で……振らせてもらう。

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