どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

355

魔王城でシルクが落ち込んでいるとき、1人傷心してる人がいた。



 タッタッタッタッターー

気がつけば外を走ってた。
自分がいつ、お城から出たのか分かんない。

でも、そんなのどうだって良い。
今は、今はとにかく走ってないとどうにかなっちゃいそう、そんな気分なの。

「うっ……うぅ……くっ……」

走りながら、すすり泣いた。
だって、悲しいんだもん。
私だって悲かったら涙ぐらい流す。

「シルクの……ばか」

好きなのに、頑張ったのに……フラれた。
あの時のシルクの言葉がショックでなんにも言えなかった。
あの時、自分の気持ちハッキリ言えば……状況は変わってたのかな?

でも……言わなかった。
うぅん、言えなかった、あの時のシルクを見たら……黙ってた。
どうしてそうなったのかな?

私は走りながら、あの時の事を思い出していく……。



「ごめんなさい……だ」

ピシッーー
私の中で何かが崩れた。
え……ごめん……なさい? きっ聞き間違い?
信じられない言葉を聞いて、固まっちゃった。

シルクは、はっ! として私を見た。
なっなんでシルクが驚くの? 驚くのは私の方。

「え……うそ」

ふと出たその言葉。
口に出した瞬間、一気に気持ちが暗くなった。

なんで? なんでごめんなさいなの?
意味わかんない……私、ほんとうに頑張ったんだよ? シルクに好かれる為に……いっぱい、いぃっぱい頑張ったんだよ?

それなのに……ごめんなさい、なの? もしかして、私が頑張ってもダメだった? 結果は変わらなかった?

シルク、好きな人がいるもんね……直接聞いた。
それが誰なのか、らっ君からも聞いた、あとむぅちゃんからもその話を聞いた。
昔から会ってたって事も全部聞いた。
だから私よりも……ロアが好きなの?

「シルクは言った、好きな人がいるって」
「え……」

シルクは驚いた。
自分の言った事、覚えてる? あの時、すっごく傷ついたんだよ? 今でもそう……すっごく傷付いてる。

なのに、聞こうとしてる。
ごめんなさい、の言葉が嘘だと信じたいから、解りきってる事を聞きこうとしてる。

傷付く事が分かってるのに、でも……それでも! 私は聞きたい、そう言う気分なの。

「今でも、その気持ちは変わらない?」

驚くシルクをスルーして言っちゃった。
ハッキリとシルクが反応を見せたのが分かる……身体、びくっとしたね。

「ハッキリ言って……いいよ。シルクの本音が聞きたい」

辛い、言うのが辛い。
だけど、絞り出す様に話した、でもシルクは何も喋らない。
じっと私を見てるだけ……。

「……なにも言わないの? それとも、喋りたくない?」

だから追求した。
それでも喋らない、遂には下を向いちゃった。
答えてくれない、もしかして……答えたくないの?
黙って見てないで、早く答えて……「好きな人はいない」って答えて……お願い。

そう願った。
だけど、願いは叶ってぐれなかった……。
その時、私の中の何かがプツンっーーと切れた。

シルク、もしかして……私を気遣ってるの? 私を傷付けたく無いから黙ってるの?
そう……だよね、絶対そう。

シルクはイイ人だもん。
だから今は、私を傷付け無い様な言葉を必死に考えてる。

私の期待してる言葉は……きっと考えてない。

「そう……」

息を吐くタイミングで呟き、シルクから離れる。
そして……。

「頑張ったのに……シルクは私を見てくれないんだね」

静かに言った、そして、笑顔を見せて。

「ばいばい……」

そう言った後、私は部屋を出ていった。
その後は……走った。
全力で、1秒でも早く遠くに行くように素早く走っていった。

その時、一筋の涙が頬っぺたを伝った。
熱い涙……それが口に入る、しょっぱい。
ついでに悲しい心がどうになかなっちゃいそう……。



これが、あの時の出来事……私の失恋の話し。

それを思い出してる最中でも、私は走った。
前は向いてない、俯いて全速力で走ってた。

タッタッタッタッターー
まだ走る私、周りは少し茜色に染まってる。
もうすぐ夜になる、なのに私は人気の無い路地裏にいる。

……暫く走った後、走るスピードを緩める。
タッタッタッ……タッ……タッ……タッ……

徐々に緩めて歩いて、ピタリと止まった。
走った性か心臓がドキドキしてる。

それでも構わず、私はその場に座り込んだ。

「わたし、最低だ……。私の頑張り不足なのに……シルクに八つ当たり……した」

そして嘆いた。
走ってる時に気付いたんだ、私の言ってる事は最低な事だって……。

ぽろぽろと涙を溢し、鳴き声を押さえて頭を押さえる。
最低でバカな私……きっとシルクは傷付いてる。
シルクは正直に言っただけなのに……私がもっと頑張れば良いだけなのに。

気持ちがたかぶって……あんな事、言っちゃった。
シルクに会わす顔が無い……だから、走ってる最中に決めたんだ。

「この街から……出ていく」

うつ伏せのまま、そう答えた。
本気で言ってるよ、嘘じゃない。
私が出ていけば、シルクはきっと立ち直る。

そうに決まってる。
だったらもう休憩は終わり、早く出ていこ……。
そう思った私は立ち上がり再び走り出した。
1秒でも早く、この街から出ていく為に……。

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