どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

360

シルクを担いで移動して、ほんの少しの時間が経ち食堂入り口までやって来た。

早速わらわは、ガチャーーと扉を開ける、すると……。

「シルク様、お久し振りです。さぁ……こちらにどうぞ、ご飯の用意は出来ています」
「くふふふ、メイド服来てるねぇ、何時もみたいに抵抗しなかったの?」
「よぉ、しぃ坊……腹減ってだろ? しっかり食えよ」
「きぃ君の言う通り、しっかり食べるですよ!」
「食べた後は外を歩くと良いですわ! もちろんロア様とてを繋いで……あぁ羨ましい」
「しぃ君、久し振りですねぇ。取り合えず食べてくださぁい」

シルクを見るや否、皆口々に声を掛ける。
皆、何時も通りな感じじゃな。
これはシルクの為じゃ、何時も通りシルクを迎えて元気になって貰うのじゃ。
そんな皆の声に、シルクはうつ向いた。

くふふふ、照れとる照れとる、さぁて、そろそろ下ろしてやるかの。

そう思い、シルクを降ろす。
降りた後、シルクはぼぉっとした……じゃから背中を押してやる。

「ほれ、はよう行かんか。シルクが座らんと食事が出来んのじゃ」
「……」

ぐいぐい背中を押して、席まで歩かせる、その後は椅子を引き座らせる。
そして、わらわは隣の席に座った。

そうした後、皆も席に座り始めた。
テーブルには既に料理が置かれてある、これは先程わらわが手早く作ったものじゃ。
しかし鬼騎の作ったものもある、まぁそんな説明は後にして……。

「さぁ、食べるのじゃぁっ!! いっただっきまぁす」

そう言うや否や、わらわが作った料理、焼き肉にフォークを突き刺す。
そして、ガブリッ! うっふぅぅぅっ、たまんのぅぅ……やはり肉は最高じゃ。

「あれ? シルク君食べないの? ただ肉に調味料掛けまくって焼いただけの肉だけど美味しいよ?」
「おい、そこの弟! さらりと失礼な事を言うでない!」

あれじゃぞ? きちんと考えて調味料をぶっかけたんじゃぞ? いわゆる……適量って奴じゃな、くはははははっ!

「シルク様、ラキュ様の仰る通りですが……美味しいですよ? お作りになられたのは全て肉料理ですが」
「ヴァーム? それ、褒めとるのか? それとも悪口言っとるのか?」
「いいえ? 褒めていますよ。肉以外の料理は鬼騎さんがお作りになられました。そちらもご堪能あれ」

ぐっぐぬぬぬぬ……なぁんか府に落ちんのぅ、貶されてる気がしてならんのじゃ。

「お前ら、そう言ってやるな。魔王さんはな……最近やっと肉は焼かないと食えないと言う事を覚えたんじゃ」
「鬼騎ぃぃっ、貴様それを暴露するなとさっき言ったじゃろうがぁぁっ!!」
「ふんっ、扉を蹴飛ばした罰だ。きちんと反省しろ」

くっ、ぐぐぅ。
はっはずい、はずいのじゃぁぁ、鬼騎め……さらりとわらわの知られたく無い事を言いおってぇぇ。
と言うか、仕方ないではないか! わらわは最近まで料理はした事が無い。

よって右も左も分からぬ。
焼かれた肉が食事に出て来た時は「あぁ、肉とはこう言うものじゃ」と思った程じゃ。

そう! わらわは生肉と言う存在を知らんかったのじゃ。
それを打ち明けた時の鬼騎の表情は……あからさまに白い目で見てきおったよ。
「え? こいつこんな事も知らんのか?」と言わんとしてる目付きじゃったよ、まったく無礼な奴じゃ。

「なるほど、つまりロア様は、最近覚えた調理方を馬鹿みたいに見せ付ける為に作った料理は全て焼き肉なんですねっ。にひひぃ、おバカさんですぅ」
「うぉぉいっ、このバカ羊っ、バカって言ったな? 今ハッキリとバカって言ったなぁぁっ!」

わらわは魔王じゃぞ? そこんところ分かっておるか?

「みんなぁ、苛めちゃダメですよぉ。ロアちゃんはぁ、頑張ったんですよぉ。偉い偉いって褒めましょう」
「……しっシズハ、お主わらわの苦労を分かって」
「あっ、お魚は切り身の状態で生きていないんですよぉ? 知ってましたぁ?」
「それは知っとるよっ、わらわの感動を返せ! このゆるふわ人間!」

でぃ……でぃ……。
なっなんじゃこやつら、わらわに此処まで突っ込ませるとは、これじゃぁシルクを元気つける事ができ……ん?

「……おいし」

ぱくっ……もぐっ……。
実にゆっくりとした動きじゃが、シルクはわらわの作った焼き肉を食べていた。

しかも美味しいと言ってくれた。
おっおぉっ……その言葉が聞ければ満足じゃ!

「くふふふ。そうか、旨いか。ならばもっと食べると良いぞ!」

にこやかにそう言った後、フォークで肉を突き刺してシルクの口元へ持っていく。

「さぁ、あぁんじゃ」
「………」

ごくんっ……。
今口に入っていたであろう肉を呑み込んだシルクは、じとぉっとフォークに突き刺さった肉を見つめる。
そして、パクリっ……と食べてくれた。

その瞬間、ぞくっ……と身体が震えた。
おっおぉ……素直に食べてくれた、かっ感動じゃっ、そしてその仕草も可愛いっ。
くふふふぅ、萌えじゃのぅ……。

そんな萌え萌えな事もあり、わらわ達は楽しく食事した。

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