どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

381

ドンッ! ゴシュッ!ドゴンッーー

壁に大きく穴が空いても、天井にヒビが入っても、姉上は止まらない。

「くっ……まさに戦場だよ、ここは」

はぁ…はぁ…とか細く呼吸をする僕。
くっそ、本気で怒ってるなぁ…さっき姉上を止めようとしたら思いっきり腹を殴られたよ、痛くて痛くて仕方ない。
もう周りが見えてないね、あれ。

「あぁぉぁあぁぁぁっ!!!」

ブォンッーー

うぉっ危な…テーブル投げてきた。
慌てて屈んで避けたテーブルは壁にぶつかりゴシャッーーと粉々に壊れてしまう。

「まさに怒れる魔王…と言った所でしょうか」

なに無表情でさらりと言ってんのさ。
こうなったのはヴァームのせいなのに……静かに立ってないでなんとかしなよ!

「呑気な事いってないで、謝んなよ」
「嫌です」

くっ……このっ、こっちを見ないで即答した。
そっちも怒ってんの分かるけど、状況察しなよ!

「状況わかっていってんの? お前が怒らせたからこんな事になってるだよ?」
「まぁ……そう、ですね」

ひらりっーー
とロアの攻撃を交わすヴァーム。
いや、そうですねじゃなくてさ……そこは素直に謝りなよ!

「がぁぁあぁぁぁぁっ!!!」

てっ、うわっ!
攻撃を交わされた事にイラついたのか、姉上はさっきと比べ物にならない位、強力なパンチを放ってくる。

その拳圧で暴風が起きた。
その性で、ゴシャァァァァッ!! と派手な轟音をあげ、部屋の一体が消し飛んだ。
お陰で、外の様子がハッキリ見える、もう日が落ちかけているのか、仄暗ほのぐらい。
そんな光に射す半壊した部屋で未だ二人は破壊の影響で待った埃や木の粉が舞うなかで攻防を続ける。

床が崩れた影響で、ヴァームは跳んで残された足場に着地、それを見たロアはすかさず次の攻撃へと移る。
上段蹴り、正拳突き、回し蹴り、魔法弾……。

もう周りには、壮絶な破壊音しか響いてない。

「意地張ってるとヤられちゃうよ! 早く謝んなって!」

必死でそう言うも、ヴァームは攻撃を交わしたりいなしたりしながら首を横に振るって「いいえ」と言った。

あぁもぅっ、この頑固者! このままだと世界崩壊も有り得るよ! しっ仕方無い……ここは僕が間に入って止めるしかない…でも、姉上を止められる程僕に力は……いや、そんな事言ってる場合じゃない! なんとしても止める!

そう決断し、立ち上がり全身に魔力を込めた……その時。
バタァァンッーー
勢い良く扉が吹き飛んだ……あれは姉上がやった事じゃない、確実に部屋の外から蹴破った壊れ方だ、だれか来た…のか?

モクモクと埃が舞う中、大きなシルエットだけが見える。
あの大きな巨体、そして猛々しいオーラ……どうやら力便りの料理人が来てくれたみたいだ。

「ねぇ、来るの遅すぎないかな?」
「黙っとけや、来てくれただけで感謝しろ!」

ゴフッーー
パンチを放って、埃を吹き飛ばす現れた者、埃が晴れてその姿が露になる……その姿は脳筋こと鬼騎だ。

「で? どんな状況だ…これは」

鬼騎が、ふしゅぅぅぅっ……とか細く呼吸する姉上を見て言う。
それを見て、軽く冷や汗をかいてる……どうやらこいつもヤバイ状況と言うのは察したみたいだね。

「説明は後だよ。取り合えず手伝え脳筋!」
「そうかい、じゃぁ後で説明しろよ、シスコン!」

お互いそう言った後、姉上へと走っていく。
それを見た姉上はピクリと僕と鬼騎を見る、そしてゆらりと両腕を動かし僕と鬼騎を指差した。

っ!! まっまずいっ、この感じっ、かんっぜんに潰しに来てる魔力だ!
それを感じた鬼騎は表情をひきつらせる……かっ回避しないとヤられる。
そう脳内に過った時、びゅぅぅぅっ……と微かに風が吹いた。

そして、危機的状況が目の前にあると言うのに……風が吹いた方を向いてしまう。
たしか、風は上から吹いていた……一体何が? っ!!?

「はぁっはっはっはっはっはぁぁっ!!」

その瞬間絶句した。
しっ執事服着た長身の男が高笑いしながら空から落下してる、しかも確実にこっちに落ちて来ている……。
あっあと隣に灰色と白の服を着た男もいるね、執事服の奴は分かるとして……隣の奴は誰? そんな訳分かんない状況に、僕と鬼騎とヴァーム、そして怒り狂っていた姉上でさえ上を向いて固まってしまった。

「イケメン鉄の掟ぇぇぇっ! 喧嘩ぁぁぁっ、両っっ! 成っっ! 敗ぃぃっっ!」

勢い良く落下し、床に激突するかと思った騒がしく喋る久々に現れた奴は、スタッ……と軽やかに着地し、素早く姉上の方へ近付き「グットナイトチョップ!」と言って頭を、ドンッ!! とチョップした。

その瞬間……。
「ふぎゃぁっ!」

と声をあげて姉上は後ろへ倒れた……そのまま寝息をたてて寝てしまった。
次に奴はヴァームの方へ近付き「制裁ぃぃっ! デコピン!」といってヴァームのおでこにぽこんっ……とデコピンした。

……派手に登場した割りには、事の納め方が地味だ。
なんて思ったら、奴は僕等の間へと立つ、鎧を着た男も奴について行き、斜め後ろに立つ。
そして執事服の奴が脚をクロスして腕を天に掲げ、そのまま腕を広げ手の平を天に向け顔も天を向けた。

白と灰の男の方は、あごにたくわえた髭を擦りながら腕を組み厳格な顔をし僕達を見てくる。

「イケメンことヘッグ!! ここに、参ッッ上ッッ!」
「アヤネの父、フドウ……ここに推参」

えっえと、え? あぁ……んー……え? ナニコレ、ほんとナニコレ。
なんなのコレ、事態は修まったんだけどさ……なんでヘッグが現れるのさ! そっそれにフドウ? 誰だよっ! あっあと……そのフドウって奴、アヤネの父って言ってたよね?

あぁ……うぅぅぅっ、大事な事言ってたのに突っ込み所が多過ぎて何言って良いか分からない! そんな事に悩みながら、ヘッグとフドウが謎の格好良い? ポーズを呆然としながら見た。

あ、埃が光に照らされてキラキラ光ってる……綺麗だなぁ。
なんてアホな事を思いながら、暫くこの締まらない雰囲気が続いたのであった……。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品