どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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フドウとシズハが突然現れ、騒がしい食事になっている所だが……ここで突然だが話しは変わる、その話題はアヤネの事である。

彼女は今、何をしているのか? そしてアヤネの事を一任したクータンは何をしているのか? 今回の話は、それを少しだけ見るお話である。



ここは魔王城城下街、灰暗い街のここの魔物たちは、今日も元気に暮らしてる。

「クーちゃん」
「なん……ですか?」
「なんですかじゃない、あれからずぅぅっと出口、教えて貰ってない。早く教えて」

そんな街のあたいの家、アヤネちゃんと揉めてます。
原因は、あたいが出口を教えてくれないから。

あたい、アヤネちゃんが今、帰るべきじゃないって思ったから教えないでいるんだけど。

「教えてくれないと……被り物外すよ」
「やっやめっ、止めてください!」

こうやって脅されてビクビクしてます。
だっだめ、怖がるなあたい! ラキュ君にあんな事言ったのに引き留められなかったら、あたいはダメな娘だ。

「だったら……早く教えて」

ソファに三角座りしてあたいをじとぉっと見てくるアヤネちゃん。
うぅぅっ、すっごい睨まれてる……きっと今、嫌われてるよね? でも、そうだとしても……教えてあげない。

「あっアヤネちゃん、お話しません……か?」

だから、こう言ってみました。
まずはお話だ、そうやって話しをそらしちゃおう

「やだ」

……だっダメでした、即答されました。
全く話しを聞くつもりなんて無いみたい、だっだったら。

「あっアヤネちゃん。ラキュ君から、聞きました。シルク君に、振られちゃったん……ですね」

強引に話しをしよう。
聞いて貰えなくても良いんです、ただ……あたいに話しをさせてください。

「っ」

あたいの言葉を聞いて、目を見開くアヤネちゃん。
そして、ホロリと涙を流しました。

悲しいですよね、傷付いてるよね、そうなっちゃうと想ってた人の側には居たくない……ですよね。
アヤネちゃんは今、そう言う気持ちなんだと思う。

「……ふっふられた……よ。振られたよ! そんなの今更言われなくても……わかってるっ!!」

声を荒げるアヤネちゃんは、あたいをキッと睨む。
ごめんね、苛めてる訳じゃないんです。

「うぅっ……うぅぅぅぅっ……」

ひくっ、ひくっ、肩を揺らして泣いている。
そんなアヤネちゃんに近付いて、ぽんっと肩に手を置いて、あたいはこう言った。

「どうして、家に帰りたいん……ですか?」
「……」

その問いにアヤネちゃんは答えてくれなかった。
涙目で口を閉じて、下を向いて何も喋らなかった。

「そうですか、言いたくありません……か」

ふぅ……と一息ついて、アヤネちゃんから離れる。
そして、あたいは被り物を取って足元に置いた。

今は、素顔を晒してお話ししよう。
そうじゃないと……意味がないと思うから。

「アヤネちゃん、帰りたい理由は……良く、わっ分からないですけど、そっその……あたいは、今、アヤネちゃんは……帰るべきじゃない……そう、思います」

うぅぅ、恥ずかしい、すっごく恥ずかしいですっ。
でっでも! いっ今は素顔を見せる時なんですっ、隠してちゃ……ダメなんです!

顔が熱い、長い間隠れてた、あたいの素顔。
オレンジ色のソバージュヘアを指先で弄りながら恥ずかしさに耐える。
するとアヤネちゃんは、ゆっくりと、あたいの方を見た。

「そんな勝手な事、言わない……」

アヤネちゃんの言葉が途中で途切れた。
あたいの顔を見て驚いてる、そっそりゃそうだよね、素顔を見せるのは……初めてなんですから。

「あたい、あっアヤネちゃんが……話してくれるまで、こっこのままでいますっ! すっ素顔のままっ、顔を隠さないで待ってて、あっあげますから……はっはっ、話す気になったら、話してくだひゃい!!」 

あたいの思いの丈を全部言った。
恥ずかしがりながら、顔を真っ赤にしながら、噛みながら……そんな言葉だけど、あたいの思いが詰まった言葉、この言葉……アヤネちゃんに届いてると、嬉しいな。

そう思いアヤネちゃんを見てみると、ポカーンと口を開けてあたいを見ていた。

うぅぅ、すっごく見られてるっ。
はっ恥ずかしいけど、我慢! あたいはやるっ、あたいの言いたい事を全部、アヤネちゃんに伝えるんですっ。

だから……恥ずかしさなんて吹き飛ばせ! の精神で頑張りますよっ!!

気合いをいれたあたいは、驚くアヤネちゃんをスルーして息巻いたのでした。

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