どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

404

鬼騎、お前まで何を言うのさ、僕に何をさせたいの?

キッと鬼騎を睨むと、何故か笑った。
今の笑うところ無かったよね? そう言おうとしたら。

「なんにも言わないんだな。認めんのか?」
「は? 認めるって……別に僕はアヤネの事なんて」

割り込まれた。
だけど、鬼騎の言葉に対してなら何か反論出来る、ビシッ! と言ってやる。

そう思って言ったんだけど、途中で何も言えなくなった。
続きの言葉、どうも思ってない、その言葉が言えなかった、言葉が詰まった? え、どっどうして?
その事に戸惑ってると、鬼騎が呆れた顔をしてくる。

「ほら、そこで言葉が出ないってこたぁ、お前はアヤネの事が好きなんだ」
「……は?」

え、いや……なんでそうなるの? 確かに言葉は出なかったけど、それとこれとは話が別だよね? なんの関係もないじゃん。

「それとな、アヤネを見てるお前は……恋しとる眼だったぞ」
「何言ってるの? そんな眼してないし」

僕はただ、アヤネを見てただけ。
恋なんてしてない、しちゃいけないって思ってるから、してないんだ。

「ふんっ、意地でも認めんって奴か。じゃぁ……お前はアヤネの事、どう思ってるんだ?」
「友達だと思ってる」

この事はクーにも話した、そしたら、むっとした顔をしたよ。
鬼騎も同じ顔をしてる、そして呆れた様にため息をついて、こめかみを指で押さえる。

「聞き方を間違えた。あの時、アヤネを見つめてた時、どう思ってた?」
「え、あの時?」

あの時か、どう思ってたか、か。
あの時は、ただアヤネを見つめて、クーに言われた事が頭の中で巡って、それに対して色々考えてたね。

そんな事を考えながら、アヤネの容姿とか性格とか色々考えてたりもしたかも知れない。

「まぁ、頑張ってる姿は綺麗だなぁって思ってたよ。で、それがどうしたの?」

別に、こう思うのは普通だよね。
鬼騎もそう思ったのか、頷いてくれる。

「いや、どうもせん。で? 他に何も思わなかったのか?」

おっおぉ、ぐいぐい聞いてくるね。
まぁ……答えるけどさ、答えないと妙な勘違いされそうだからね。

「えっとそうだね、普段静かで可愛い……とか、たまに見せる笑顔が可愛いとか……あぁ、あと綺麗な手をしてるなぁ……とか?」

クーに言われた事を思い出してたら、自然と考えて来ちゃったんだよね。
好きな相手でも無いのに不思議だ、あっでも……見てる時になんか頭がモヤモヤしたし、心が締め付けられる感じがした。

そう言うの、今も感じてるんだよね、未だに良く分からないよ。
なんなんだろうね、これ。

って、あれ? 鬼騎がすっごい渋い顔してる。
あっ、ため息ついた、今日一番深いため息だね。

「……」
「え、なに? なんで黙ったまま見てるの?」

男にじっと見られると気持ちが悪いから止めてくれる? と言うか、そろそろ手を退けてくれる?
そう思ったので、怪訝な顔をして鬼騎の手を払う。

「黙りたくもなるだろうが……こうも自分の想いに鈍感な奴を見るとな」

なにそれ、鈍感って……そんな事ないじゃん。
自分の気持ちは一番自分が良く知ってるよ。

「心外だね、僕が鈍感に見えたんだ」
「見える」

聞き返すと、即答された。
意味わかんない、鬼騎が今話してる事全てが訳が分からない。
これ以上訳の分からない事言うんだったら帰ろう。
そう決めた時、鬼騎はダンッ! とテーブルに手を叩き付ける。
それに対し、身体をビクッ! と反応させると……。

「普段の事を見て、頑張る姿が可愛い、笑顔が可愛いと抜かし、挙げ句の果てに手が綺麗と思う? そんなもん、そいつの事が好きに決まってんだろうが! と言うか、それ以外にねぇだろボケッ! 気持ちに素直になれや!」

凄まじい気迫を発しながら早口で捲し立てる様に言ってきた。
全身に鳥肌がたってしまった、それほどまでに鬼騎の今の言葉には勢いがあった。
だからなのか、唖然としてポカーンと口を開いてしまった。

その瞬間、鬼騎の言葉が強く心にぶつかった、それが何度も何度も繰り返す様に響いてゆく。

好き以外に……ない。
僕が、普段感じてる気持ちが……好き?
鬼騎の言葉に動揺を隠せない、明らかに今の言葉が正しいと感じ、軽いパニック状態に陥ってる。
まさに衝撃、信じられない言葉だが……信じるしかなかった。
だって……心の底からそう思ってしまったんだ。

でも、そんな事ってある? 好きって思わない様にしてたのに、僕はただアヤネを見てただけだとってたのに……好きって思ってたんだ。
その僕にとって衝撃の事実の性で、僕の目の前が真っ暗になった。

僕は……いつのまに、アヤネの事が好きになってたんだろう。
気が付けば僕はそんな事を思っていた。

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