どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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いない、いないいないいないいない! 何処にもいない!
さっきから探してるんだけど……まったくいない!

「おっ可笑しい……ここまで見付からんものなのかえ?」
「そうだよね、体力ないシルク君と一緒にいるなら活動範囲はそんなに無いと思うんだけど……」

細い路地、僕と姉上は家の壁にもたれながら話す。
ここまで見付からないと焦ってくるよ、ほんと何処にいるのさ……。

「ねぇ姉上」
「なんじゃ?」
「もう脚は大丈夫?」
「……微妙な所じゃが、大丈夫じゃ」

微妙なところなんだ、でも大丈夫なんだね。
正直、どっち? って聞きたいけど今はそれ所じゃ無いから突っ込みは無し。

「だったらさ、2手に別れない? さっきも言ったけど、その方が効率良いからさ」
「ふむ、そうじゃな」

姉上は暫く「んー」って考えたけど、僕の意見に賛成してくれた。
よし、だったら即行動に移そう!

「っ!、ラキュ……ちょっと待つのじゃ」

早速動こうとしたら止められた。
なにさ、はやく動いた方が良いの分かってるでしょ?
って……なんか、少し遠くに見える曲がり角を指差してるね。

そこに何かある…………誰かの気配がする。
もしかして、シルク君と絢音? 可能性は無きにしもあらずって奴だね。

僕と姉上は無言で見つめあって頷く。
そして、そろぉりそろぉりと静かに気配を消して近付く。

距離が近くなると、なにやら声が聞こえてくるね……気になるから、この声に耳を傾けて見よう。

「やん、ひぃきゅん……おきゅまで……つゅっきょみしゅぎでしゅ」
「すっすみ……すみみっすっみませんですますっ!」

ぬちょっ……ちゅぱぁっ

「やぁんっ、やらしい音が出ちゃったですっ、もぅ……きぃ君はえっちですぅ」
「はぁぅぁっ!? え、あっ……ぅっ……あぁぅ、すっすすっすみ……ごめん……はい」

どうやらシルク君とアヤネじゃないみたいだね、この声はメェと鬼騎だ。
で、なんだかいかがわしい音が聞こえる……。
それ聞いた姉上は、顔真っ赤にして「なっ、えっ……こっこんな所……で?」なんて呟いてる。

「こっ今度は、優しく入れて……欲しいです」
「はっ……はい」

なにこの、確認しにくい雰囲気。
あの2人、こんな所でなにやってるの?

「じゃ、あっ……あぁん」
「あぁん……っ、あむっ……んんっ、はむっ……」

ぺちゃ、ぬちゃ……。

っ、また変な音が鳴り始めた。
……これ、このまま確認したらダメな感じじゃない?

「ねぇ……姉上」

小声で話し掛けてみる、しかし姉上はそこにはいない……。
既に姉上は曲がり角向かって駆け出していた。

「きっ貴様等! こんか所でナニをし…………」

脚を引き釣りながら曲がり角まで駆け寄り、メェと鬼騎がいるであろう方向に指差した。
でも……動きが止まったね、なにかあったみたいだ。

気になったので足早にそこに向かってみる。
すると、そこに見えたのは……。

マミーの仮装をした鬼騎が、鬼の仮装をしてるメェに、棒付き(ロリポップ)キャンディを食べさせていた。

あぁ……なるほど、色々と察しがついたよ。
別に如何わしい事なんてしてなかった、全部勘違いって事だね。

と言うか考えてみれば分かったかも……ヘタレ脳筋相手にそう言う事したら、ここら一帯血の臭いがする。
理由は説明しなくても分かるよね?

まぁ、なんにせよ冷静さが足りてなかったみたいだね。

「ろっロア様!? とっ突然現れたです……びっビックリしたですぅ」

ちゅぽんっ……。
キャンディを出して、呆気に取られるメェ。
鬼騎に至っては、ぽかぁんとしてる。

「ラキュ君までいるです……どうしたですか?」

ん? って感じで顔を傾けるメェ。
その様子に姉上は顔真っ赤にして口をパクパクさせてる。

あぁ……いま、自分がとんでもない勘違いしてたから、すっごく恥ずかしいから喋れないんだ。

仕方ない、ここは僕が説明しよう。
その前に色々と突っ込みたいけど……まぁ、今は見逃そう。

「ねぇ、シルク君とアヤネを見なかった?」

そんな僕の問いに、メェと鬼騎は顔を見合わせる。
しかし、お互い首を傾げる……あぁ、知らないんだ。

「知らないです」

やっぱりか、だったら協力してもらおうか。

「そう、だったら探すの協力してくれないかな? ちょっと見失っちゃてさ……どこ探しても居ないんだよね」
「え、そうなんですか?」

そうなんだよ。
どこ探してもいないんだよ……というか、城下街地下は広いから、まだ探してない所があるんだけどね。

「だからさ……一緒に探してくれないかな?」
「良いですよ、充分にきぃ君とイチャイチャしたから探すです!」
「あっありがとう」

イチャイチャね……。
イチャイチャと言うよりヌチャヌチャが正しいんじゃ……と言おうかと思ったけど口をつぐんだ。
言葉通りしてたけど、場所を選ぼうね。

「じゃ、2手に別れようか。姉上と僕は此処等辺りを探すから、メェと鬼騎は向こうを探してくれる?」
「了解ですっ、きぃ君行くですよ!」

メェは、びしっ! と敬礼した後、強引に鬼騎を引っ張って向こうの方へ走っていく。
その間鬼騎は「えっ、うぉっ……うがぁっ」って声をあげていた。

暫く黙ってて、やっと喋った言葉がそれか……。
付き合ったんだから、いい加減慣れればいいのに。

そんな鬼騎を見て、ふかぁいため息をついた後、いまだ顔を真っ赤にして口をパクパクさせてる姉上の肩をポンポン叩く。

「ほら、僕達も行くよ」
「ひゃぁぁっ! え? え? あ……え?」

全然話聞いてないじゃん。
またまた大きなため息を吐いた後、もう一度説明し、僕と姉上もシルク君とアヤネを探すのを再開した。

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