どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

314

「…………」
「…………」

さて、今ひっじょうに気分が悪い、それは隣にいるラキュも同様だろう。

「可愛いのぅ」
「可愛いですね」
「可愛い」

今、俺とラキュはロア (途中から萌えの波動を感じたのじゃ、と抜かして現れた)、アヤネ (なんかさらっと出てきた)、ヴァームにまじまじと見られている。

因みにシズハは、外いってきまぁすと言って出ていった、相変わらずフリーダムな人だ。

どうしてこうなった! どうしてロアとアヤネまで着て鑑賞会が始まった!
ここ食堂だぞっ! せめて場所変えてやれよ、鬼騎超困ってるぞ! 今、すっごい睨み効かしてるからな……気づいてるか?

「ねぇ、シルク君……責任もって止めてくれるんじゃ無かったの?」
「そんな事、一言も言ってない……と言うか、良くも俺を酷い所にワープさせたな!」
「それはシルク君の責任でしょ?」

お互い睨みあって口々に言い合うが……途中で同時にため息を吐いて「やめようか」と同時に言う。
今は喧嘩してる時ではないのだ……。

「シルク似合うね。良い感じ」
「……ありがと」

アヤネよ、褒めてくれるな、心にナイフが突き刺さった気分になる。
……だが、一番突き刺さてるのはラキュだけどな。

「くふふふ……良い姿じゃなぁ弟よ」
「うるさいよ、ちっ……屈辱だね。このコスプレはさ」

バッ! と胸とかを隠し紅くなるラキュ、それを見てロアはけらけら笑ってるな。

まぁ無理もない、ラキュも俺と同じくコスプレをさせられてるからな。
そのコスプレと言うのが……オーガのコスプレだ。

因みにオーガと言うのは、小さな鬼の事らしい、額に角を持って、今のラキュの服みたい動物の皮を使った服を着てるらしい、ただ長く着ているから所々が破けている。

だから、上の服も下のショートパンツも少しだけ破けてるのか。
しかも額には角が生えてる……あ、因みにその角は作り物だ。

さっきヴァームがくっつけてたのを俺は見た。
本人いわく「オーガの再現には必要です!」と言ってた。

……角はともかく、服の方は再現しないでやってくれよ、ラキュが可愛そうだろうが。

見てみろ、今すっごく恨めしそうに睨んでるんだぞ、気持ち察してやれよ。

「ラキュ様、いかがですか? 最高の着心地でしょう? その角も似合ってますし……虎柄布服も非常にナイスですよ、破け具合も最高です!」
「破いたのはあんただよね?」
「そうですよ? オーガ達はこう言う服を着てますからね。それならそう再現するのがコスプレと言う物でしょう?」
「……ヴァーム、そのこだわりは僕には理解しかねるよ」

あぁ、その意見には俺も同意する。

……今のラキュの姿。
こう思うのは悪いが、クールビューティだ。
肌の露出もそうだが、肩が紅く染まってるのがそう感じさせるのか?

それとも、普段のラキュのクールさが今の服を着る事によって際立っているのかも知れない。

……って、なにを俺は解説してるんだ。

「それとシルク様!」
「うぉ、なんだよ……」
「エロ可愛いです!」
「うるさい!! エロくないし可愛くないわ!」

突然にやけて何を言うっ!
……て言いたい所だけど、ヴァームの言うように、この服エロいんだよなぁ。

布の面積少ないし、どことなくそう言う雰囲気出てるし……あと寒いし、ほんっと最悪な服だ! サキュバスはこんな服着てるのか? 良くこれで冬を越せたな! 驚きだぞっ。

「シルク、エロいのじゃ」
「えっちぃね」
「ロア、アヤネ……お前らもうるさい」

頬を紅く染めてそう言う事を言うんじゃない。
更に心にナイフが突き刺さったぞ、これ以上言われたら本気で泣くからな!

……て、え!? 
ヴァームの眼から涙が出てる……だと。

「ふふ、これで私のあの時の思いは払拭されました。無念が晴れたのです」

目を擦りながら語るヴァーム。
斜め上を見て、感動に震えてる……のか? そんな感じがする。

「あのビーチバレーの恨みが……遂にっ晴れたんですっ! 私はその為に頑張りました、ですが……遂に私の努力が報われました! こんなに嬉しい事はありませんっ」

えっ偉く長く語ったな……。
えと、ビーチバレーの恨み? もしかしてそのビーチバレーって、コスプレ大会出場を掛けての戦いだったよな。

確か俺とラキュは勝ったんだよな、だからそのコスプレ大会には参加しなかった。

……え、まって。
もしかして、今までのヴァームの行動は全てビーチバレーで俺達にコスプレ大会出場させられなかった事に対しての事でやったって事か?

おっおい、それって……。

「かんっぜんに私怨じゃないか! 俺とラキュは関係ないぞ!」
「そうだよ、シルク君の言う通りだ!」

口々に文句を言ってやったが、ヴァームの耳には届いてない。
今は天井を仰いで、祈るように手を合わせてるよ……。

ちくしょう、あの時の私怨で俺達はこんな目にあってるのか……ふざけんなって心の底から言ってやりたいぞ!

そんな感じでイライラしてると、俺を見ていたアヤネが急に手を上げた。

その突然の行動に皆の視線はアヤネに集中する、そのタイミングで……。

「ね、私もそう言う衣装着たい」

そんな事を言い出した。
いっ衣装を……着たい? こう言う服を? 本気で言ってんのか?

「なんじゃと……お主も着たいのかえ?」
「うん」

どうやら本気みたいだ、鼻をふんふんならして、胸を張ってる。
もしかして、俺とラキュの衣装を見て興味が出たのか?

「ふぅむ。正直ハロウィンの仮装はシルクとラキュだけの予定だったのじゃが……そうか、アヤネも着たいのか。かくゆうわらわも着たいと思ったのじゃ、いつもシルクとラキュだけがコスプレしてるしの」

なに、ロアもか……物好きだなぁ、こんなの恥ずかしいだけだぞ?

て、ちょっと待て……最後に言った言葉訂正しろ。
"コスプレしてる"じゃなくて"させてる"だからな!

と言うことを心の中で突っ込んだタイミングで、ロアがパンっと手を叩く。

「ならば、ハロウィンは色んな魔物に全員が仮装すると言うのはどうじゃ?」

ロアがそんな提案をした時だった。

「その提案頂ですっ! 実は余分に作ってる衣装があって、それを着せてないから不完全燃焼だったんですっ」

祈っていたヴァームが話に乗ってきた。
俺とラキュにこんな衣装作っといて、まだ燃焼しきってないのか……それを聞いたら、アヤネが自分も着たいと言ってくれたのは助かったかもしれない。

……だってあのままだと、またこんな恥ずかしい衣装を着る羽目になってたからな、助かったぞアヤネ、ナイスだ。

「では早速衣装を合わせましょう、行きますよアヤネさんっ」
「はぁい」

そう言って2人は部屋を出ていった。
まさか、今から皆の衣装を作る気か?

「くふふふ。面白くなってきおったのぅ」
「姉上、ぜんっぜん面白くないよ」
「なんじゃ、気分が乗らんのかえ? ノリが悪いのぅ」
「姉上はノリが良すぎるんだよ」

うん、それは俺も思った。

「ノリが良いのは良いことじゃ!」

びしっ! と親指を突き立てて言い切った。
……もう何も言うまい。

「でじゃ、ハロウィンは明日行うのじゃっ、皆のもの楽しみにするがよいぞ!」

高らかにロアは宣言した。
さらっと物凄い事を口走ったが……誰も突っ込まないな。

だから代わりに俺が突っ込もう。

「唐突過ぎるわ!」
「くふふふ、サプライズと言う奴じゃよ」

なにがサプライズだ、格好つけてウインクしながら言うな!

「という訳で、そろそろ飯にするかの。鬼騎ぃご飯をくれぃ、いつも通りステーキで頼むのじゃ」

どういう訳か知らないが、ロアは食事の注文をした。
呆気に取られてる俺とラキュを放置してだ……。

あぁ……もぅこれ突っ込むのがバカらしいな。
よし、ここは……。

「鬼騎、俺もいつもので頼む」
「僕はトマトジュースだけでいいよ」

ロアと同じく注文した。
そしたら、暫く鬼騎は黙ったあと……。

「あいよ、ちと待ってくれや」

と言って準備に取り掛かった。

さて、すっかり状況が落ち着いて朝食に入るわけだが……俺とラキュはまだ恥ずかしい衣装のまま。
取り合えずあれだな、食事し終わったら……さっさと着替えるか。

そう思った俺は朝食の一時を楽しんだのであった……。

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