どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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あれから真剣に考える俺、考えるのに夢中になって転ばない様に気を付けよう。

変な事してないかな……大丈夫だよなぁ? 確かあのあと、数件ほどまわったんだよ。
そこでは何もなかったんだ……それは確かだ、問題はその先だ。

んー……なんだっかな? くぅぅ、思い出せない。
歯痒いなぁ、思い出したいのに思い出せないって……。

「シルク、シルクってば」
「っ、ひゃぅわぁ!?」

うぉぅ、話し掛けられてた……全く気が付かなかった。

「どしたの? さっきから難しい顔してたり、んーんー唸ってたよ? トイレ?」
「いや、そうじゃない……ちょっと考え事してたんだ」
「ふぅん」

変なの、とか思われてるだろうな。
と言うか知らない間に唸ってたんだな……それも気付かなかった。

「なに考えてたの?」
「ん? あぁ……昔のハロウィンの事だよ」

と言っても、一部分思い出せてないけどな。
……って、わわっ、なんか睨まれてる、なっなんで?

「考え事しちゃダメ、今は楽しむの」
「あ、わっ悪い……」

すっごい責められてしまった。
だがアヤネの言う通りかもしれない、今は一緒に歩いてるんだし、純粋に楽しんだ方が良いよな、反省しよう。

「もう考え事しないよ」
「ん、そうして」

笑ってくれた、機嫌が治ったみたいだ、じゃぁこのまま楽しく歩こうか。
という訳でてくてく歩く、時折「あ、お化けとんでる」て感じで辺りを見ながら色々言ったりした。

そんな感じで暫く歩いたらてたら……クータンの家に戻ってきた、お菓子があるのはここだからな。
ロアが走り出さなければ、こんな二度手間しなくて良かったのに……。

「ふふ、お菓子……沢山食べよ」
「あんまり沢山食べるなよ? 皆の分もあるからな」
「ん、任せて。きちんと気持ち程度残すよ」
「……気持ち沢山残しといてやれよ」
「努力する」

これは俺が止めないと無限に食べそうだな、適度な所で止めよう。

と、決めたところで一緒に入る。
うん、家の中はさっきと一緒……相変わらず良い匂いをさせてるな。

「これ食べよ」

ぱっ、と手を離したアヤネは、とたたぁっとお菓子の所へ小走りして一口大のチョコレートを手に持った。

そそっかしいなぁ、と思いつつ俺も側による。
さて、俺は何を食べようか? うぅん……これだけあると悩むな。

よし、決めた。
一番最初に目に入ったクッキー、コレに決めた。
という訳で手に取る。

「おぉ、シルクはクッキー食べるの?」
「あぁ」
「美味し?」
「いや、まだ食べてないから分からない……いや、これは食べなくても分かる。美味しいな」

だって見て見て分かるんだ。
こんな美味しそうな匂いをさせてる物が美味しくない訳がない。
絶対に美味しい、間違いなく美味しいに決まってる。

「そだね、このチョコもきっと美味しい」
「そうだな」
「じゃ、食べよ」
「え、ここでか?」
「うん」

美味しそうだから直ぐ食べたい気持ちは分かるが、外に出てから食べないか?

「あ、もしかして家に帰ってから食べろって言うの?」

う、ここでその話を持って来るのか。
くっ、ニヤニヤしながら言ってる、分かってて言ったなぁ?

「言わないよ、だからそんな顔するな」
「ふふ、シルク顔真っ赤」
「うっうるさい!」

あぁもぅ、過去に言った事をわぁわぁ言いやがって。
あの時の俺は堅かったのは自覚してるからあんまり言うなよな。

「じゃ、食べよ」
「あっあぁ」

にっこり笑うアヤネに対して、ため息をはいて頷いた。
こんな会話して「外でて食べよう」とは言えない。
ここで食べよう、食べかすこぼさないようにしないとな。

そう思って食べる。
サクッ……、口当たりが良い、そして甘い香りが鼻一杯に広がる。
旨い、やっぱり旨かった。

「ふまぁい」
「……、飲み込んでから喋れ」

こくんっ、とクッキーを飲み込んでから言った。
そしたら、同じくこくんっ、と飲み込んで「えへへ」と言ってきた。
いや、えへへじゃない、笑って誤魔化すな。

「あ、動かないで」
「ちょ、うぉっ! なっなんだ!」

きっ急に抱き付くな! って、うぉぅっ! かっ顔、顔が近い!
アヤネは背伸びしている、結果、顔と顔との距離が近くなってる。
もう少し近付けば、キスしてしまいそうな位だ。

って、冷静になってる場合じゃない、一刻も速く離れてもらわないと。

「なっなぁ、近くないか?」
「大丈夫」
「いや、こっちは大丈夫じゃ……」

ないぞ、と言おうとした。
がしかし、それはアヤネの突然の行動によって遮られた。

ぺろっ……。
「ひゃぁっ!?」

舐められた、唇のななめした辺りをぺろんっと……。
え? あ? え……えっ……えぇ!?

「ちょっ、なっ! ななっ! 何を!」
「ふふ、あの時の再現……どきっとした?」

そう言ってアヤネは離れていく。
その表情は「してやったり」と言わんばかりの顔だ。
俺は舐められた所を手で押さえ、口を開けてポカーンとしていた。
たぶん、いや確実に顔は真っ赤になってるだろう。

その瞬間、思い出した。
俺が8歳のハロウィンの時、アヤネにされた事を。
そっそうだ、あっあの時も……あの時もこんな風な事が起きたんだった。

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