どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

338

クータンの家を後にし、また街の中央通りをぶらぶら。
なんかさっきから無駄に歩いてる気がする……だからなのか? すっごく疲れた。
何処かに座って休憩したいな。

「ドタバタしたね」
「そうだな」

だから休みたいんだよなぁ、何処か座る所ないかなぁ? あ、あそこにベンチがある。

「疲れた?」
「……疲れた」

そんな俺に気が付いたのかアヤネが聞いて来た、だから即答した。
すると、アヤネは「じゃ座ろ」と言って偶然近くにあったベンチの方へ歩いていった。
いやぁ助かる、ってちょっと待て、普通こう言うのって男の方が気づかうべきだよな? くっ、不甲斐ないな……。

「よいしょ。……お構い無く隣座って良いよ」
「おっおぅ」

ぽんぽんっと木のベンチを叩くアヤネ、お言葉に甘えて俺もそこに歩いていって隣に座る。
ふぅ……やっと座れた、うぁぁぁっ、足パンっパンだぁ。

なんて思いつつ深く息をはく。
……なんかあれだな、座ると一気に疲れが取れた感じがするな。
まぁ、楽な体制になってるから当たり前か。

「あ」
「ん、どうした?」

突然声だして、何かあったか?

「私の上に座って貰った方が良かったかも」
「……良くない」

なに、「しまった!」と言わんばかりの顔でいってるんだ、そんな事してたまるか。

「じゃ、私が座る」

キメ顔で言った後、アヤネは立ち上がった。
いっいや……私が座るって、何処に座る気だ? 他に座る所なんて無い……って、ちょっ!

「座るって、おっ俺の上にか! やっやめっ、うぉわぁあぁぁぁっ! やっやめっ、今はやめろ! もっ股がっ、股がぁぁぁっ!」

ぺたんっ、と俺の膝の上に座るアヤネ、柔らかいのがダイレクトに当たった。
いや……今はそれよりもっ、いっ痛い! 歩き疲れて脚全体が痛いってのに座られたら……股にビシィィィッと電気が走った様な痛みが響く!

痛いっ! すっごくジンジンするっ。
ぐぁぁぁっ、何時もなら「はっ恥ずかしい事すんな!」と突っ込みながら突き飛ばしたのに、今は痛みに悶えて「ぐわぁぁぁぁっ!」っと叫ぶだけ。

うっ、ぐっ……くぁぁぁっ、もうっこれ、ほんっと痛い、涙出てきた。
それくらい痛みを感じてるのにアヤネは「おぉぉ、良い座り心地」とか言って陽気に鼻歌してる。

おっおまえ、俺の叫びが……きっ聞こえてないのか?

「あっ、アヤネ! おっおり……降りろ!」
「え、さっき座ったばっかだよ?」

俺の方に耳を傾けながら言ってきた。
さっき座ったとか関係無い! 時間の問題じゃないんだよ! こっちは痛くて痛くて仕方無いんだよ!

あとな……この格好、城の奴等に見られたら100%良からぬ方に勘違いされるから今すぐ降りろぉぉぉぉっ!!

「分かった、シルクは疲れたからマッサージして欲しいんだ」
「してほしくない! そんな事一言も言ってない! 俺は降りろって言ったんだ!」

人の話を聞け! 学校で習っただろうっ。
それ大事な事だから大人になった時も忘れるなって先生に言われただろうが! それを思いだせ!

「任せて、私が圧迫マッサージしてあげる」
「あっ圧迫? なにをす……っ! おっおまっ、上下に動くなっ! 痛い! 痛い痛いいたぁぁぁいっ、しっ痺れるぅぅぅっ!!」

ゆっさゆっさと上下に動く。
むにんっ、むにんっ、とアヤネの……その、おっお知りが、俺の股にむにぃっと強く当たったり離れたりしている。
いっいかん、これあれだ、完全に"あれ"な行為だ!

アヤネは分からないでやってるが、これ! 完全にやらしい行為だ!
それと同時に、今の俺の太股に大ダメージを受ける行動だ!

「ぅぐぁぁぁぁぁぁっ!」
「シルク、暴れちゃダメ。落ちちゃう」

むしろその為に暴れてるんだよ! ぐっぐぐぐっ、もう痛さで叫び声しかあげられない。
因みに、涙はもうとっくに流れてる。
なんだこれ、なんだこれ、なんっだこれ! もう色々わけわかんないよ!

「どう? 気持ち良い?」

明るい声で聞いてくる。
そんな問いに俺は……。

「いっ痛いって……いっ言ってる……だろぉおがぁぁっ!!」

痛さに悶えながら言ってやった。
そしたらだ、くすっ……と笑った。
え? なんで笑うんだ?

「だいじょぶ、だんだん良くなるよ。シルクはじっとしてて、私が動くから」
「は? いや……その……まっ待ってくれ……まっ!」

……この後、アヤネは動き続けた。
俺は叫び続けた、そして俺は思った……なんでアヤネを突き飛ばさなかったのかが疑問だ。
多分だが、痛さでそんな事考えもしなかったんだろう。

やはりあれだな、人間……苦痛を感じてる間は冷静な考えが出来ないんだな。
だからこそ、それの対策を常日頃から考えて置くべきだと痛感させられた……文字通りな……。

「えと、なに……やってるのかな?」

ん、なんか声が聞こえるな。
痛さに苦しむなか、前を向いてみる……するとそこには、俺とアヤネを白い目で見ているドラゴンのコスプレをしたラキュがいた。

やっやばい、一番見られて欲しくない奴に見られてしまった……。

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